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【SS】 コスモスの花言葉 #シロクマ文芸部

 秋桜の花が咲き誇る中で君が微笑んでいる。毎年秋の恒例行事となっている。秋桜が大好きな君は「コスモス」という言葉の方を先に覚えてしまっていたね。幼い頃からコスモスの季節になると、君は毎日のように風に揺れるコスモスの海にやってくるようになっていたんだ。

 幼馴染みだった幼い頃の君は、黄色いコスモスが大好きだった。他の色には目もくれずに黄色のコスモスがたくさん咲いている場所に一目散に向かい、何時間も見ていたね。幼い君の短い髪がコスモスと一緒に風に煽られ、とても可愛かったのを覚えている。僕は、そんな君を見つめているのが好きだった。幼いながら、君の自然な美しさに恋心を感じ始めていたのかもしれないな。

 同じ小学校に上がり、そのまま同じ中学に進んだ時、君の好きなコスモスは黄色からピンクに変わった。「だって、ピンクの方がかわいいでしょ」と言った君の頬もピンク色に輝いていた。中学生の三年間、秋になると僕たちは、やっぱりコスモスを一緒に見に行っていた。違うのは、ピンクのコスモスがたくさん咲いている場所に迷わずに行っていたこと。僕は相変わらず、少し君から離れてコスモスではなく君を見つめていたんだ。汚れのない美しさを持った君の横顔が好きだった。

 そして高校生になると僕たちは違う高校へと進んでしまった。でも、家は近所だったから、秋になると一緒にコスモス畑には行ったね。高校生になると君は何故か白いコスモスが良いと言い始め、コスモス畑にいくと白いコスモスが比較的多く咲いている場所を探して白い花びらを見つめていたんだ。その時、僕は成長した君を感じた。どことなく少女から大人の女性へと変わりつつある美しさを感じてしまったかな。屈託なく笑っていた少女の君はいなくなり、優雅にゆっくりとふるまう美しい君になっていると感じたんだ。僕は少し距離を感じる様にもなってしまっていたかもしれない。

 大学生になると、お互い遠くの大学に進んでしまい、会う機会はほとんど無くなった。恒例だった秋のコスモス畑に行くことも一緒には行けなくなった。僕は一人でコスモスを見に行った。そんな時、ラインで写真を送ってきたね。隣にはすらっと背が高い二枚目の男性が写っている。しっかりと腕も組んでいる。そうか、彼氏ができたんだね。二人の後ろには、真っ赤なコスモスがたくさん写っている。どうやら、大学生になってからは、赤いコスモスが好きになったようだね。赤いコスモスが好きになったのは、隣に写っている彼に愛情を注いでいたからなのだろうか。大学を卒業するまでの四年間、君は秋になると赤いコスモスの前で彼氏と一緒に写っている写真を送り続けてきた。僕の心のどこかで、寂しさを感じてはいたけど、君が幸せなら良いと自分に言い聞かせていたんだ。送られてきた写真は君と赤いコスモスの部分だけを切り取って僕のスマホに保存しているけどね。

 大学を卒業して、僕たちは無事に就職した。君は就職したというラインをくれたっきり、連絡をくれなくなった。僕がラインを入れても既読にもならない。何かあったんだと心配になった。恒例の秋のコスモスの時も連絡はなかった。コスモスで繋がっていた僕たちの縁が切れたかの様に感じて悲しくなったな。スマホに保存されている君の写真を探してみる。今は何色のコスモスが好きなんだろうかと思いを巡らせても分かるはずもない。

 二十五歳になった秋、突然、君からラインが入った。そこには一人微笑みながら一本のコスモスを持っている君の写真があった。黒いコスモスだった。懸命にチョコレートコスモスを探し回ったというメッセージが入っている。好きな色ではないけど、自分の心に気づいたのだという。そして、行を開けて綴ってあったのは。

「本当に恋をしていた相手は、あなただったということに気づいたの。大学生の四年間はきっと不愉快な気持ちにさせていたんだろうなって反省したわ。彼は新しい彼女を作って私から離れていった。そして、やっと気づいたの。優しいあなたの気持ちに」

 それから二年後の今、僕の隣には暖かい日差しを浴びている君と可愛い赤ちゃんがいる。今年の秋は三人でコスモスを見に行くつもりだ。さて、君は何色のコスモスの前で立ち止まるのだろうか。これからは、死ぬまで赤いコスモスなら良いなと僕は心の中で思っている。



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