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9月28日 パソコン記念日 【SS】愛しすぎた人(5.片付け魔)

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- パソコン記念日

1979年(昭和54年)のこの日、日本電気(NEC)がパーソナルコンピュータPC-8001(PC-8000シリーズ)を発売した。

キーボードと本体が一体化したデザインで、サイズは430(W)×260(D)×80(H)mm、重量は4kg、定価は168,000円だった。これがパソコンブームの火付け役となり、PC-8000シリーズは3年間ほどで約25万台を売り上げた。同社を代表するシリーズの一つで、数多くのソフトウェアや周辺機器が販売された。また、販売は日本だけでなく外国でも行われた。その後、PC-8800、PC-9800シリーズが発売された。


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【SS】愛しすぎた人(5.片付け魔)

 証刑事と縁梨刑事は、片付家を訪問していた。まず玄関に驚かされた。一軒家で引き戸の玄関なのだが、来客用と家人用で左右の引き戸を使い分けているのだ。ご丁寧にインターフォンまでもが両方についている。向かって左が家人用、右側が来客用となっている。表札には、片付左右・棚美と記されている。証刑事は名前を見て引き戸を開ける時、ちょっとだけクスッと笑い、来客用のインターフォンのボタンを押した。

「はい、どちら様ですか?」男性の声で応答があった。

「神奈川県警です。お尋ねしたいことがあり、お伺いしました。中に入れてもらえますか」

「どうぞ、お入りください。鍵は今開けました」

 引き戸なのにリモートで開錠できるらしい。カチャッと言う音が聞こえた。返事の声のトーンが明らかに落ちている。証刑事は感じ取っていた。引き戸を開けて玄関に入ると、真ん中がアクリル板で仕切られていた。飾り気が全くないシンプルな玄関だ。それに一足の靴も出ていない。家人用と来客用の上り口も分けられている。奥から、身なりをきれいに整えた男性が出てきた。おそらく先ほどのインターフォンに出た男性だろう。

「こちらのスリッパをお使いください。どうぞ、こちらへ」

 使い捨てのスリッパを出されて二人はリビングに案内された。そこは、まるで引っ越し前のように何もないリビングだった。各家庭では一番目立つテレビもその姿が壁の中に隠されている。よく見渡すとリモコンすら見えるところには置いていない。徹底して見えない収納を実施しているようだ。証刑事は関心するように見渡しながら話し始めた。

「素晴らしく整理整頓されているお宅ですね。ここまで徹底されている家は初めて拝見しました。どこに何を収納しているという情報を覚えるのは大変な様ですが、何か工夫されているのでしょうか」

「ああ、そうですね。全ての情報をパソコンとスマホで管理できる様になっています。企業では当たり前に実施しているような在庫管理アプリを組み込んでいて、消耗品などの買うタイミングも教えてくれますよ。もちろんしまった場所は検索機能で探せますし、棚ごとに番号がついていますので、それを読み取ればそこに保管されている品物の一覧が表示される様になっています。パソコンが日本で発売されるようなった頃から作って利用していますよ。もっとも最初はバーコードはありませんでしたけど」

「それは凄いですね。これだけすっきりとしていると生活感もなくて清潔に感じますね」

「ええ、分かりますか。日々の生活をする場所なので逆に生活感を排除したかったんです。それにいろんな物があればそれだけ細菌を増やすことにもなるし、できれば半導体工場のクリーンルームの様にしたいくらいです。ははは」

「もしよければ、グラスとかどんな風にしまわれているか拝見させていただいてもいいですか? 一応、私も女性として気になるものですか」

「ああ、いいですよ。こちらです。グラス類はここにしまってあります。ワイングラスはよく使うのでここですね。あっ、今はちょっと持ち出しているので少ないですが。こっちは日本酒セット、湯呑み、一口用のビールなどをしまってあります」

「本当に綺麗に収納されていますね。参考にさせていただきます。「もしかして、旅行とかされた場合なども、写真などを場所ごとに整理されているのですか」

「ええ、もちろん。GPS情報をベースにして管理しています。車の移動場所も同様に管理していて燃費計算とかタイヤ交換の時期なども計算して表示される様にしていますよ」

「いやー、すごすぎますね。個人でそこまで実施しているとは。ところでご所有されている車は一台ですか」

「あぁ、車はもっぱら妻が利用するだけなので表に止めてある赤い車だけですよ。まぁ、車内の清掃と給油はもっぱら僕の役割ですけど」
「そういえば、玄関前の車はきれいに清掃されていました。タイヤもピカピカでした」

「ありがとうございます」

「今日は、奥様はご在宅ですか」

「多分、自分の部屋で仕事していると思います。呼びますか」

 そういうと片付左右は妻の棚美をスマートスピーカーを使って呼び出した。程なく、階段を下る足音がして、棚美がリビングに降りてきた。

「奥様でいらっしゃいますか。私は神奈川県警の証と申します」

「私は、県警の縁梨です」

「妻の棚美です。どんなご用件でしょうか」

「常夏さんのことでちょっとお伺いしたいことがありましてお邪魔しています」

 夫の片付左右が話に割り込んできた。

「常夏さんってお前のお得意様じゃないか。実は、妻はインテリアコーディネーターの仕事をしているんですよ。最近は、別荘地の別所さんと常夏さんの部屋の模様替えなどのお手伝いをしていたんです。なぁ、棚美」

「えっ、ええ。それで、常夏さんがどうかされたのですか」

 落ち着きがなくなっている棚美の仕草を証刑事は見逃さなかった。指先が小刻みに震えていたのだ。縁梨が横から説明した。

「亡くなられたのですよ。数日前に。ちょっとその亡くなられ方が変だったもので、何かご存知ないものかと聞き込みをしている最中なんです」

「そうですか。亡くなられたのですか。残念です。これから模様替えをしようとしていた矢先でした」

「そうでしたか。それで、表の車で時々別荘地に出かけていらっしゃったのですね」

「ええ、打ち合わせや色合わせのためにお伺いしていました」

「なるほど。別所さんのところにも行かれていたのですね。別所さんは特に何もおっしゃっていませんでしたけど」

「えっ、別所さんのところも行かれたのですか?」

「はい。常夏さんが住んでいた別荘は別所さんの所有物だったもので」

「ああ、そうでしたね。古い絵画や書が保管してありましたものね。常夏さんの別荘の物置にも」

 再度、夫の片付左右が話に割り込んで来た。

「申し訳ありませんが、これから二人で出かけなければならない時間になりました。何のもてなしもできませんでしたが、お引き取り抱いて構わないでしょうか?」

「ああ、そうですか。分かりました。ではまた何か思い出した様なことがあれば連絡をお願いします。それでは今日のところは失礼します」

「はい。ご苦労様でした。もしよろしければスリッパはお持ちになっていただいて構いませんよ。あとは、廃棄するだけですから」

「じゃあ、持ち帰らせていただきます」

 すかさず縁梨がポケットからクシャクシャになったスーパーのレジ袋を取り出して二人分のスリッパを入れた。

「変わった夫婦でしたね」

「そうね。何だかご主人は奥様が余計なことを話さないかと心配している様にも見えたわね。それに、あれだけデータ管理を徹底しているというのは奥様の行動も逐一監視されているのだと思うわ。汚れることがたまらなく嫌いな性質の様ね」

 証刑事は、片付夫妻、別所、古絵、そして常夏との間に何らかの繋がりがある様な気がしていた。

続く


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