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10月14日 鉄道の日 【SS】謝罪

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 鉄道の日

日本国有鉄道が1922年(大正11年)に「鉄道記念日」として制定。

1872年(明治5年)10月14日(旧暦9月12日)、新橋駅(後の汐留貨物駅、現:廃止)~横浜駅(現:根岸線桜木町駅)を結んだ日本初の鉄道が開業した。また、1921年(大正10年)10月14日に鉄道開業50周年を記念して東京駅の丸の内北口に鉄道博物館(初代)が開館したことを記念したものである。JR発足後の1994年(平成6年)からは運輸省(現:国土交通省)の提案で「鉄道の日」と改称され、JRグループ以外の民間鉄道の記念日にもなった。


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【SS】謝罪

「申し訳ありません。最初に謝罪いたします。きっと私のせいで吉永さんは自殺されたのだと思います。実は、私は弁護士さんから連絡をいただいた後、吉永さんをこっそりと訪ねたんです。それまでに積もり積もった不満というか恨みというか、誰にも当たることができなかった心の痛みを吉永さんにぶつけてしまったんです。弁護士の手出須さんはご存知なのだと思います。私の父は母と結婚することができませんでした。でも私にとってはいい父親だったんです。あいにく私が小学生の時に事故で他界してしまいましたが、いい父親でした。ただ母との結婚を強く反対していた親戚がいたため、夫婦になれなかったのだそうです。その強く反対していた親戚というのが、実は吉永金蔵さんだったのです。私のおじいさんは吉永金蔵さんと兄弟でしたが、事業で成功した吉永金蔵さんから、金銭面でかなり援助してもらっていたようでした。結婚させるのなら支援を打ち切ると言われ、私の父親に籍を入れることを禁じたということでした。私にとっては、一番憎い相手だったのです。それで、文句をいうために訪ねていき、積もっていた怒りをぶつけてしまいました。吉永金蔵さんは泣いて謝られました。そして最後の別れ際に『死んで詫びます』と言われたんです。私は遺産なんか欲しいとも思いませんでしたから、勢いに任せて『そうしてください』と言い残して帰ってしまいました。それでも、遺言を書き換えて残しておいてくれたなんて、私がひどいことを言わなければ亡くなっていなかったと思うと、今更ですが申し訳なく思います」

 弁護士の手出須は、静かに宮前の言葉を聞きながら、この人は根は良い人だと確信しながら、受け取った手紙に書かれていた内容と食い違いがないことを確認し、ゆっくりと口を開いた。

「確かに、宮前さんのおっしゃった通りのことが吉永氏の最後の手紙にも書かれています。だいぶ悔やまれていた様です。吉永氏は自分が独り身で頑張っていたにも関わらず、自分が支援している兄の家族が幸せになっていくことを妬んでいたのだそうです。それで、結婚させるなら一切支援しないと言い続けられたそうです。晩年になってからは、かなり悔やまれていた様ですね。宮前さん、あなたが怒るのは無理もないですし、罪はないと思います。快く遺産をお受け取りください。そして、それらを貴方なりに上手に使っていただければ、故人も喜んでくれるでしょう」

 思わぬ話が飛び出してしまい、他の三人も顔を見合わせながらどうしようかと迷っていた。

 宮前の発言を受けた証刑事は何かを待っている様だった。他の三人は宮前の訪問を知らされていて口裏を合わせているのか、もしくは合わせられるように仕組まれているのではないかと推測していた。そのため、三人が話し始めるのを待っていたのだ。

 宮前は内緒にしていたことを口にしたことで安心したのか泣き崩れている。それを横から大洞が慰めていた。大洞にも打ち明けていない内容だったらしい。そんな光景を見た他の三人は顔を見合わせながら、お互いに合図を送っている様だった。そして、意を決したかのように赤水が口を開いた。

「私もお話ししていないことがありました。申し訳ありません。実は、宮前さんの存在は吉永さんからEメールで知らせが来ていました。吉永さんは大抵は電話での連絡なんですが、その時はメールでした。多分、話しづらかったのかもしれません。その内容は『唯一血のつながった親類が見つかり、その女性が今日、私に会いにきてくれた。しかし、私の若かりし頃のエゴによりその人の両親の結婚を邪魔した。結果父親は籍を入れることなく亡くなってしまった。女性は私のことをすごく恨んでいたよ。そろそろ人生を終わらせる時期かもしれない』というような内容だったんです。でも、仕事中だったので返信もできず、夜になって帰宅した時、急いで訪ねて行きました。電気が消えていたので、もしかしたらと思い、裏口から入ったんです。そしたら洗面所に倒れている吉永さんを見て、床に落ちていた歯ブラシと入れ歯のケースを思わず拾ってゴミとして処分してしまったんです。もしかしたら、訪ねてきた女性が容器の中に何か入れたのかもしれないと思ってしまったんです。もしそうだとしたら、その女性が捕まってしまうのは不憫だとつい思ってしまいました。自殺だとは思わなかったので。今思えば取り越し苦労でした。申し訳ありません」

「もし、捨てたものに毒物が付着していたら、大変なことになっていたと思いますが、幸いなことにそうではなく、事前に服毒をして慌てて入れ歯を入れたのかもしれませんね。口の中の入れ歯は洗浄剤が綺麗に洗い落とされていませんでしたから。おそらく、入れ歯に手を伸ばした時、中毒症状が吉永さんを襲ったのかもしれません。しかし、その時に警察に連絡はすべきでしたね」

「はい、申し訳ありません」

 鉄道貨物を使う予定になっている赤水は、引っ越しのことが気になり始めていることもあり早く終わらせたいという気持ちから話し始めた。

「あのう。実は私もメールで連絡を受けていました。翌日に配達予定の私宛のハガキがあるはずだから、朝一番に配達して、その時、裏に回って洗面所を覗いてくれと書いてありました。なので、裏にまで回って確認したんです。それで発見して警察に通報したというわけです。申し訳ありません。特に重要なことでもないと思ったのでお話ししてませんでした」

「なるほど、日々さんにも事前連絡がいっていたわけですね。瀬羽さんはどうでしたか、連絡は来ていませんでしたか」

「今更ですが、実は来ていました。翌日頼みたいことがあるから家に来て欲しいと連絡が入っていました。私にもメールで連絡が来ました。普段は電話なのですが。それで、翌日吉永さんを訪ねて行ったというわけです。特に話す必要はないだろうと思っていました」

「そうですか、何も知らずに来てしまった。全ては吉永さんが筋書きを作っていたような流れですね。しかし、事実はどうやら違っていた様です。皆さんの中には、まだ、この後に及んでも嘘の話を続けている人がいらっしゃる様です」

 証刑事がそういうと、集まっているみんなはギョッとした様な顔になった。人は直接名指しされる前に全員に問いかけられると、思わず自分のことのように感じてしまうものだ。集まった人は証刑事の次の言葉を待つことしかできない状態になっていた。証刑事は最初に自殺の可能性もあると告げたことで、そのことを助ける様な発言が出てくると予想していた。つまり安心材料を提供し、反応を待っていたのだ。


明日に続く


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