7月10日 潤滑油の日・オイルの日 【SS】オーバーヒート
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 潤滑油の日・オイルの日
全国石油工業協同組合が制定。
日付は潤滑油の通称「OIL」(オイル)を反転させると「710」に見えることから。潤滑油についての知識の普及・浸透が目的。記念日は「潤滑油の日」の名称で一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
潤滑油は工場から家庭まで広く使われていて、適切な使用により省エネ、省資源効果も期待できる。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】オーバーヒート
夜の帷が降りて呑み屋街も灯を落とした午前三時ごろ、けたたましい排気音を響かせながら数十台の改造車が集まってくる。純粋にスピードと走りのスリルを楽しむ複数のチームが週末になると集まっている。もちろん改造代を稼ぐための賭けレースが中心に繰り広げられているのだ。ガードレールに激突したり、車同士の接触による転倒事故は日常茶飯事だ。レースを開催する方も警察の裏を書かなければならない。定期的に変更するアカウントを利用して連絡しあっている。今では、ストリートレースの開催はSNSで管理されていると言ってもいいだろう。
しかしながらチームの経済事情はそれぞれだ。資産家などの家に育ち経済的に不自由なく育った金持ちたちのチームと、自分の生活費は自分でなんとかしなければならないバイト中心の生活をしている貧乏チームはその経済力に大きく差があり、車を見ても一目瞭然だった。裕福なチームは、外車中心の車で構成される。フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニなどが顔を並べる。一方、余裕のない方のチームの車は、ほぼ全てが中古車の改造車だ。それでもスカイラインやインプレッサ、RX-7などが混じっている。バイト代のほとんどを車につぎ込んでいるのだろう。唯一助かっているのは、チームの仲間に整備工場で働いているメンバーがいることだ。工場が休みの日に自分たちの手で改造することができている。
経済力の差は歴然で、レースでは金持ちのチームが常に勝利している。かたや貧乏なチームはそれが面白くないのでなんとか一矢報いたいと改造に集中し、みんなから寄付を集め足回りのパーツ購入などを実現し、RX-7のロータリーパワーを最大限引き出せるように調整していた。こんな時には団結力が高まるものだ。本来なら、自分で稼いだお金は少なくとも自分の車に注ぎ込みたくなるものだ。それをチーム内で一番早い車にみんなで集中した資金を使おうとしている。なんとしても金持ちチームに勝ちたいという一心だ。
遂に決戦の時が来た。今日の場所は西新宿の高層ビルの間の片側三車線道路。この辺りはパトロールも厳しい場所だ。静かに集合して、一気にレースをやってしまう計画だ。直線約七百メートルを爆走し交差点を経由して隣の道路を回ってスタート地点に戻る。千五百メートルの周回コースを三周して結果を競うのがこの日のルール。どうしても直線がメインになるので排気量のパワーで勝負する外車にとっては有利である。この日の金持ちチームはターボを搭載したポルシェ。一方貧乏チームが準備したRX-7は、コーナーでの横滑りを抑えるために、足回りの強化とタイヤの交換も実施して準備していた。可能な限り減速せずにコーナーに突っ込み最小限のドリフトで立ち上がり一気に直線を駆け抜ける作戦だ。もともとドライビングテクニックは貧乏チームに軍配が上がる。金持ちチームはそれを発揮させないために、極力直線のレースばかりを要求していた。もちろん、お金の力で有利なレース展開をさせていたのだ。
いよいよ、違法ではあるがメンツをかけたレースが始まる。スタートの合図のフラッグが振り下ろされた。爆音と共に二台の車は、ブレーキで踏みとどまっていたパワーを解放され、一瞬で解放されたエネルギーが後輪に伝わり、沈み込んでいた前輪がふわっと一瞬浮いたようになりながらも、次の瞬間には地面をしっかりとグリップし、キュルキュルという音とともに加速していった。車重の軽いRX-7がスタートでは一瞬前にでるが、ターボが効いたポルシェはあっという間に加速し交差点に突入する前にはRX-7を横目に抜き去った。RX-7は、それでもギリギリまでブレーキを我慢しレーンの右に少し車体を寄せ交差点にハンドルを左に切って滑り込む。後輪が少し流れるのを感じながらギリギリのスピードにカウンターを当ててコーナーをクリアする。コーナーを抜ける時点でアクセルはベタ踏みだ。一方ポルシェはエンジン回転を落とし豪快なドリフトと共にコーナーを回っていた。ギアは二速、交差点のコーナーの出口を確認しながらアクセルを踏む。横には追いついたRX-7に気が付いたがあっという間にコーナーを抜け立ち上がっていくRX-7の後ろにつかざるを得なかった。
直線で追いつかれ交差点のコーナーで追い越すという攻防が繰り返され、いよいよ最後のゴールを目指した直線勝負。最初に見えたのはRX-7。そのまま行けば初勝利が確実だった。残り二百メートルで突然白煙が噴き出した。エンジンオイルが漏れて引火したようだ。エンジンの回転数は限界を越え続けていたから、オイル・パッキンも耐えられなかったのだろう。それでも走り続けてはいたがスピードはみるみる落ちている。そして、ゴール手前二十メートルのところでRX-7は完全に停止した。エンジンが焼き付いてしまったようだ。その横をポルシェが悠然と通り過ぎてゴールした。
結局、金持ちのチームには勝つことができなかった。悔しさでいっぱいの貧乏チームだったが、思いもよらない言葉を金持ちチームがかけてきた。
「素晴らしい運転だったぞ。俺たちは車の性能に乗っかっていただけなのに、お前たちはスゴイな。提案なんだけどさ、俺たちが車を提供するから、お前たちがドライバーになることでこれからのレースを制していかないか。そうすりゃ、賭け金はみんな俺たちのものになるぜ」
「ありがたい提案だけどな。俺たちは俺たちの手でいじった車に乗って勝利をかちとりたのいのさ。お前らみたいに金に頼る勝利なんてお断りさ。今日も負けたけど、次はわからないぜ」
その時道路の両側からものすごい数のパトカーが現れ、挟み撃ちされてしまった。どうやらレース終了を隠れて待っていたようだった。双方とも危険運転と違法改造で逮捕されてしまった。果たしてこの後、チームは存続していけるのだろうか?
了
以前、オーバーヒートにまつわる私自身のエピソードも紹介しています😊
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。