【SS】 始まりは文化祭だった #シロクマ文芸部
文化祭の日に事件は起こった。秋晴れで気持ちいい日だったが、生徒会長の伊達貢が何者かによって殺害されたのだ。場所は、放送室だった。校内に向けて文化祭の開催のアナウンスをする直前だったようだ。時刻になってもアナウンスが流れないことを気にした生徒会の仲間が放送室に様子を見に行き、ナイフが刺さったままで仰向けに倒れている伊達を発見した。校内で殺人事件が起きたということで、文化祭は大騒ぎとなり、騒然とした空気になっていた。
「おい、生徒会長が刺されたんだってよ。放送室で」
「ああ、そうみたいだな。結構、好き勝手にやってたから、恨まれてたのかな」
「まぁ、伊達から先生への報告で謹慎処分になった男子生徒も何人かいたもんな」
「そうなんだよな。バイク免許を隠れて取ったり、万引きを見つけられた奴もいたよな。でも、そんなことで刺してしまうのかな」
「うーん、カッとなって殺ってしまったのかもな」
連絡を受けてやってきた刑事は、二人だった。山田刑事と山本刑事と名乗っていた。学校内で発生した事件なので、犯人も内部にいると想定して捜査が始まった。生徒への聞き取り、先生への聞き取りを中心に実施した。重要な目撃証言と、被害者の交友関係が明らかになった。被害者は、家庭科の先生、保健の先生と付き合った挙句、同級生の中山未来という女子生徒と付き合っているようだった。どうも、女性関係の嫉妬が絡んでいるように感じられた。そして、肝心の目撃証言は、放送室の前を駆け足で逃げていく白衣の女性を見たという生徒が数人現れたのである。
山田刑事と山本刑事は、家庭科の先生と保健の先生に事情聴取を試みた。すると、家庭科の先生は、家庭科で利用するナイフが盗まれたといい、保健の先生は白衣が一着盗まれたと主張した。被害者に刺さっていたナイフは家庭科で利用するナイフだったようだ。そして血のついた白衣が学校裏の焼却炉の中に入っていたという連絡が来た。幸運にも火をつける前だったようだ。証拠として白衣は確保された。一瞬にして校内に噂が広まった。
「殺された生徒会長、家庭科の先生と保健の先生の両方と付き合ってたらしいぞ」
「ええ、そんな奴が生徒会長だったのか。殺されて当然だな」
しかし、一人だけ被害者を庇う女子生徒がいた。それが現在の彼女、中山未来だったのだ。彼女は「家庭科の先生か保健の先生のどっちかが、貢を殺したのよ」と主張しまくっていた。果たして真実は何なのか、犯人は誰なのか。
ここで、殺害されたはずの生徒会長はゆっくりと起き上がった。死んでいなかったようだ。そして、マイクを手に取り校内に向けて話し始めた。
「みなさん、サプライズの文化祭企画、楽しんでいただけましたでしょうか。映像も流れていたのでびっくりされたかもしれませんが、これは文化祭用に考えたミステリードラマでした。協力してくれた生徒の皆さん、刑事役の生徒の方、ありがとうございました。生徒間での噂話もシナリオの一部です。全ては創作でありフィクションであると言うことをお伝えしておきます。さて、これからは皆さんが参加する番です。犯人と殺害動機を推理して、各教室に準備されている応募シートに記入して投函してください。正解者の中から十名の方に記念品を差し上げます。尚、受賞者の発表は、文化祭終了の午後四時に行いますので、体育館にお集まりください。応募は午後三時までに投函されたものまでを有効とさせていただきます」
文化祭の殺人事件ドラマは、真面目な生徒会長が作ったシナリオであり、文化祭の中のプログラムの一つだったようだ。もちろん、家庭科の先生と保健の先生と付き合っていたと言うことは創作だったようだ。何とも大胆な文化祭のオープニングを考えたものだ。そんなドラマの成り行きを心配そうに見守っている人がいた。その人は放送室のある校舎の向かい側の校舎から一部始終を画面を通して見守っていた。そして、全てが上手くいったと確認したとき、手元のスマホのラインから生徒会長にラインを送った。
「貢、すごいシナリオと演技だったわ。これで私たちの保健室関係は安泰ね。文化祭が終わったらいつものところで待ってるわね」
了
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