10月20日 はっかない恋デー 【SS】仕方ないさ
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- はっかない恋デー
北海道北見市の「まちづくりプランニング」が制定。
北見地方は昭和初期に世界の70%を超す生産量を誇る「ハッカ」の名産地だったが、現在では天然のハッカがない。そんな「ハッカが無い」と「はかない」をかけて記念日を制定し、「はかない恋」に悩んでいる人の手助けをし、まちづくりに役立てることが目的。
日付はハッカを収穫して精油の製造時期であり、恋の神様のいない神無月である10月と、「はっか(20日=はつか)ない」と読む語呂合わせから。記念日は2015年(平成27年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】仕方ないさ
生涯、はかない恋の連続で幕を閉じてしまったナオキという一人の男がいた。ナオキは成長していくと共に色んな女性に恋をした。
ナオキが幼い頃は、ハッカを齧りながら家の近くで元気に遊ぶ子だった。近くには、綺麗なお姉さんが住んでいた。休みになるとよく遊んでくれた。ナオキはそのお姉さんが好きだった。生まれて最初の恋らしきものだった。幼い男はまだ恋心を知らない。でも綺麗なお姉さんが好きだった。ある日ナオキが幼稚園から帰ってくると、綺麗なお姉さんは真っ白い着物に身を包んでお嫁に行ってしまった。ナオキはハッカを口に咥えたまま、エンエン泣いて母を困らせた。生まれて初めての失恋だった。
そんなナオキも小学生となり、幼稚園の時の初恋はすっかり記憶から消え、同級生の笑顔が素敵な子に恋をした。いつもナオキを見て微笑んでくれる。ナオキは「きっと僕のことを好きなんだ」と確信した。お互いの家は違う方向だったので、一緒に帰ることは叶わず、校門を出るまで一緒に歩くのがやっとだった。ある日、意を決してナオキは女の子に思いの丈を伝えた。
「僕、アイちゃんが好きだ。いつも僕を見て笑ってくれるから好きだ」
「えっ、ごめんね。私近眼でよく見えないから、眉を寄せてしまうのでママから言われたの。見えないんだから、いつも笑顔でいなさいって。だからいつも笑う様にしてるだけなのよ。ナオキくんのことが好きなわけじゃないんだ。ごめんね」
ナオキは中学生になった。過去のことは忘れて学校を楽しもうと思っていた。そんな時同じクラスにとびっきり可愛い女の子が転校してきた。ナオキは張り切った。水泳が得意だったので、体育の時間にかっこいいところを見せて好きになってもらおうと思ったのだ。水泳の日は家を出る時に水着を履いてズボンを履いて学校に行っている。運命の日もそうだった。教室で勢いよくズボンを脱いでプールに向かうつもりだった。ズボンを下ろした時に目の前に好きになった女の子がいたので、ちょっとポーズを決めようと思っていたら、なんと水着を履いていなかった。はかない恋だった。
高校生になった。毎年盛り上がる文化祭。隣の女子校からも多くの女子がやってくる。ナオキにも気になる子がいた。中学の時の悪夢は強制的に記憶から消していた。文化祭当日、気になる女の子が文化祭にやってきて、ナオキに近づいてきた。ナオキは心臓が破裂しそうだった。
「ナオキくん、これ、お友達のケントくんに渡してくれない? 私、彼のことが好きだから恥ずかしくて直接渡せないんだ、だからお願い」
高校での恋も終わった瞬間だった。そして大学では余計なことを考えるのを止め、勉強を頑張って無事に就職することができた。就職した会社の入社式で隣にいた女性がとても綺麗で、一瞬で気持ちを持って行かれてしまった。何とか告白しようと考えている間に、五年の月日が流れた。気が付いた時、その女性はナオキの上司となっていた。またまた、ナオキの恋は実らなかった。
出世にも縁がないまま四十代に突入。ナオキも一大決心をしてマッチングアプリを頼ることにした。しかし、金もない中年男にマッチする女性は現れなかった。ナオキはアプリを削除した。まず金を貯めようとそのあとは懸命に節約して貯金をした。すでに五十歳を超えてしまった。何とか家でも探そうと物件を探していたら、不動産屋と名乗る美人から声をかけられた。
「掘り出し物件があるんです。今なら相場より三割も安く買えます。三年も保有していれば価値は上がりますよ。約束します。あなたのような素敵な方に買ってもらいたくて思い切って声をかけたんです。そうすれば私も時々様子を伺いに訪問できるかなと思ったものですから」
そう言って口説かれ、すぐに心が動き、契約することに。溜め込んだお金を全て注ぎ込んだ。生まれて初めての持ち家に心が躍っていた。しかし、その綺麗な不動産屋はぱったりと姿を見せなくなった。地面師だった。
ナオキはまたしても貯金のない男に戻ってしまった。その後ナオキは何とか県営住宅に入ることができ細々と生活していた。すでに年金生活へと突入していたが、年金だけでは生活は苦しかった。そんな時、行きつけの定食屋の女将が優しくしてくれた。ナオキは親切にされているのが心に沁みた。そしてそれは恋心に変わった。すでに七十歳を超えていた。ただ、女将は年老いた独身男性を哀れに思い、時折定食を無料で提供してくれているに過ぎなかった。そこに愛はなかった。少なくとも最初の頃は。
ナオキは定食屋の女将と結ばれることを毎日のように夢を見ていた。しかし、毎日同じものばかり食べているナオキの体はバランスを失い始めていた。気がつけば、県営住宅に住んでいたはずなのに、いつの間にか病院のベッドで横たわり、酸素マスクまでつけられている。少し横を見ると定食屋の女将が心配そうにナオキを覗き込んでいる。いつもはメガネをかけているが、この日はメガネをかけていなかった。ナオキの目には女将が小学生の時の同級生のアイちゃんに見えた。いつも女将はメガネをかけていたから気づかなかったが、メガネを外して笑っている顔は確かにアイちゃんの面影が残っていたのだ。
「アイちゃん、だよね」
「そうだよ。やっと気づいてくれたね、ナオキくん」
ナオキは眠るように目を閉じた。その顔はにっこりと微笑んでいる。傍にいるアイちゃんの頬には一粒の涙が流れ落ちていた。ハッカ飴を口に含んだアイちゃんは、ナオキの唇にそっとキスをした。
了
🙇🏻♂️お知らせ
中編以上の小説執筆に注力するため、コメントへのリプライや皆様のnoteへの訪問活動を抑制しています。また、ショートショート以外の投稿も当面の間は抑制しています。申し訳ありません。
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
一日前の記念日SS
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #ショートストーリー #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説 #毎日ショートショート
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。