9月22日 国際ビーチクリーンアップデー 【SS】漂流物
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 国際ビーチクリーンアップデー
アメリカ・サンフランシスコに本部のある「海洋自然保護センター」が1985年(昭和60年)から実施。
この日に近い週末に、世界各地で一斉に海岸のごみを拾い集め、その数量・種類などを調べることによって、海洋でのゴミの発生元や、地球環境への影響を調査している。
日本では「クリーンアップ全国事務局」(Japan Environmental Action Network:JEAN)が主宰し、1990年(平成2年)から毎年春・秋の2回、「海岸クリーンアップキャンペーン」を実施している。
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【SS】漂流物
台風が過ぎ去った後の海岸には、多くの漂流物が打ち上げられ、せっかくの一面美しい砂で輝いている海岸を汚してしまう。見るも無惨な光景だ。私たちが住んでいる太平洋に面した海水浴場も例外ではない。すでに秋風が吹く頃となり、海水浴客は誰もいないが、夏場の海水浴客が残したゴミとは違い、綺麗に掃除をするのが大変な状況だということは一目瞭然である。
今日も街のボランティアで青年会を中心に心あるものが、軍手とトングと大きなビニール袋を手にして集まっている。台風の後片付けだ。今日は午後から夕方までかけて海岸を元通りの砂が輝く状態になるまで掃除する。海岸の西の端から始めるチームと東の端から始めるチームに分かれて総勢五十人で清掃開始だ。田舎街でシニア向けのパソコン教室を開催している新田好美も夫の順平とともに参加している。好美は清掃の状況を写真とともにブログで伝える予定のようだ。
東の端から清掃を開始した好美は、開始早々に不思議なケースを見つけた。一見透明のような四角いケースだが中身が見えない。どうみてもゴミには見えないので、持ち帰ることにして清掃を続けた。順平は西の端から掃除をはじめ、夫婦は中央地点で落ち合う予定である。夕方ごろまで時間をかけて清掃し、やっと綺麗になった海岸をみんなで確認した後、満足気に各自家路についた。
「ねぇ、あなた。今日の清掃の時にね、不思議なケースを見つけたのよ。思わず持って帰ってきちゃったわ」
「えー、ゴミを持って帰ってきたのか。汚くないのか」
「これよ、見て。何となく輝いているように見えない?」
「本当だ。綺麗だ。でも、これどうやって開けるんだろう」
「そうなのよね。ん、この角だけちょっと違うわね。ボタンみたいになってる」
好美が角のボタンのようなものをグッと押すと、ある面にパスワードを入力するような表示が現れた。数字のソフトウェアキーボードが表示されている。桁数は六桁だ。好美はちょっと考えたが、もし第三者に見てもらいたいのならパスワードは初期値のままだろうし、見せたくないものならわかりにくいパスワードだろうと考えた。好美は前者であることに賭けた。
「よし、全部0を入力してみるわ」
「そんな単純にはいかないだろ。えっ、ウソ、開いたぞ」
中から出てきたのは、見たこともないような電子ツールのように見える。何となく進化したスマホのようでもある。好美は思わず手に取った。するとそのスマホみたいなツールは全体がディスプレイになっているようで、まさしくスマホ画面のような表示が浮かび上がった。不思議そうに二人で眺めていたら、いきなり電子音が鳴り始めた。二人は一瞬ギョッとなったが、メカ好きの好美は止める夫を無視して手に取った。すると、画面が拡大され、ビデオ通話が始まった。画面の向こう側では、見たこともないような服を着た人がこっちをじっと見て話しかけて来た。
「この通信機を手に取ってくれた画面の人。そちらは今西暦何年ですか」
変なことを聞くと思いながら、好美は夫の顔を見て軽くうなづくと返事をした。
「今は、西暦二〇二三年九月二十一日よ。そして、ここは日本です」
画面の向こうで歓声が上がっている。相当喜んでいるようだ。一体何事なのだろう。不思議そうな顔をしていると画面の向こう側から説明が始まった。
「実は、私たちは二三四五年の未来からあなたの持っている通信機、正確には時空超越通信機にコールしました。私たちにとっても初めての経験で今、こちらではみんな興奮しています。私たちは、研究者の集まりで、タイムマシンと合わせてタイムフォンを作ったんです。つまり、時空を超えて過去と未来で通信できる装置です。その実験だったのです。私たちのボックスを拾ってくれて本当にありがとうございます」
「あのー、もしかして新手の詐欺ですか? 我が家にはお金は無いので無駄ですけど。こんな手の込んだことをしても」
「わー、やっぱり成功です。私たち、歴史の授業で学習したんです。何とか詐欺っていうのが数多く発生していた時代があったことを」
「えっ、歴史の授業で? もしかして、この電話、本当に未来と繋がっているの」
「はい、間違いありません。よろしければ名前を教えていただけますか?」
「私は、新田好美でこっちは夫の順平よ」
「ありがとうございます。って、アラタっていう姓ですか。ここにもアラタっていう学生がいますよ。もしかして大御先祖様かもしれませんね。後から調べさせておきます。時空を超えた通話はバッテリーの消耗が激しくそろそろ限界になりました。もっと話したいのですが、申し訳ありません。最後にお願いです。その通信機を回収したいので、時空超越通信機をボックスの中に戻して、ボックスの蓋を閉じ、パスワードに9999と入力して、少し離れていただけますか。それでボックスはこちらに戻ってきますので」
「わかりました。じゃあ、電話を切ります」
通話を終えて好美は夫の順平の方を向いて、不思議そうな顔をして聞いた。
「ねぇ、あなた。今の電話、本物だと思う?」
「本当だとすればすごいことだよな。未来との電話なんて。まぁ、言われた通りにしてその箱が消えてしまったら、本当だってことだろう。やってみようよ。まぁ、何も起こらないとは思うけど」
「そうね」
好美はボックスの蓋を閉めて、パスワードに9999と打ち込んだ。そして少し離れた場所で静かに見守った。何も起こらないのではと思いながら見つめていたら、いきなり発光したかのような眩しい光に包まれ、一瞬で箱は消えてしまった。好美と順平はお互いにじっと見つめあって「本当だったね」と目で語り合っていた。
了
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