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10月22日 パラシュートの日 【SS】一か八か

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- パラシュートの日

1797年のこの日、フランスのパリ公園でフランス人のアンドレ=ジャック・ガルヌラン(André-Jacques Garnerin、1769~1823年)が高度8000フィート(約900m)の熱気球から飛び降りた。
直径約7mの布製の傘のようなものと一緒に飛び降り、これが世界初のパラシュートによる降下となった。着陸時に衝撃があったものの、当人は無傷であった。また、この時の熱気球とパラシュートはガルヌラン自らが製作したものであった。その後、パラシュートは改良が加えられ、排気弁を取り付けることで安定した降下が行えるようになった。

「パラシュート」(parachute)はフランス語の「守る」(para)と「落ちる」(chute)を組み合わせた言葉である。


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【SS】一か八か

 今は、西暦二五〇〇年の地球、世界中で紛争が勃発し、平和とは程遠い環境になってしまっている。日本も例外ではなく、昔自衛隊と呼ばれていた部隊は、日本防衛軍として、陸海空にサイバーが加わり四つの部署で再構成されている。過去と違うのは、兵士は全てロボットに代わっていることである。人間は、シェルターの中から、日本語の暗号化を施した周波数帯の無線を利用して兵士ロボットや無人ドローンを制御している。もちろん、開発力や予算が取れない小さな国々の中には、いまだに前線に人を送り込んでいる国も存在している。国の貧富の差は、国の防衛体制にも大きな影響を及ぼしているのだ。

 日本防衛軍の海上作戦部隊にリョウという兵士がいた。リョウの役割は、攻撃用ドローンや偵察用ドローンの遠隔操作、そして攻撃された際の迎撃ミサイルの遠隔操作だった。遠隔操作といっても、多くの場合は、事前にプログラミングされているので、実際に操作することはほとんどない。予期せぬ事態に遭遇した場合は、AIによる判断が瞬時に実施され、事前プログラミングが修正される機能も備わっている。それでも対応できない事態に陥った時だけ、人が介在するシステムになっている。したがって、国同士の戦争は、今やテクノロジー戦争なのである。それでも、過酷な勤務に備え肉体を鍛えるために日々訓練は実施されている。ただ、過去のフィールドに出て行う訓練ではなく、シェルターに連結されている室内ジムでのトレーニングがメインである。レーダーに探知されない場所で訓練を実現するためだ。訓練中には、厳しい上司がゲキを飛ばす光景は昔から変わってはいない。

「おい、リョウ。遅いぞ。もっと膝を高く、もっと速く」

「はい」

 トレーニングジムの中は汗の匂いが籠らないように換気扇と空気清浄機がフル稼働している。訓練の環境としては申し分ない。そんな訓練中、突然緊急を知らせるサイレンがジムの中に鳴り響いた。どこの国からかまだ分からないが、日本に対して攻撃が開始されたという合図だ。リョウは急ぎ遠隔操作するための席に着きヘルメットを被った。ヘルメットのシールドにドローンやミサイルの映像が映し出されるのだ。スピード、角度、風、気圧、空気密度の影響などの数値情報を確認するためだ。

 日本に向かってくるミサイルが確認できた。迎撃態勢に入る。プログラミングを修正する時間はない。リョウは操縦桿を握り締め、半自動で迎撃することを決断した。AIによる判断にも期待した。ミサイルが飛んでくるのが確認できた。AIが反応して迎撃ミサイルが発射される。それに伴い、スクリーンは迎撃ミサイルのカメラに切り替わる。わずかに軌道がずれているのを確認し、操縦桿を微調整する。画面が真っ白になった。命中したのだ。同時に頭の中で激痛が走り、目の前が真っ暗になってしまった。

 リョウは、油臭いエンジン音とプロペラ音で目が覚めた。周りには俯いた兵士らしき人たちが整然と整列して座っている。なんだか時代を感じる格好だ。よく見ると自分も同じ格好をしている。どうやら胸の前のリュックの様なものはパラシュートのようだ。リョウはパラシュート降下を実践した経験はない。自分に起きていることが理解できなかった。おそらくは夢なのかと思うのが精一杯だった。機内で隊長の様な人が声を張り上げた。

「我々第二挺進団は、これよりレイテ島にこうかし、空港を制圧する。この作戦は大日本帝国にとって、重要な意味を持っている。大和魂を見せるときだ。日本の落下傘部隊は世界一だといわしめる活躍を諸君に期待する。空の神兵たちよ、降下せよ」

 機体の扉が開けられた。数珠繋ぎになっているかのように兵士たちは次々に降下していく。

『えっ、ウソだろ。夢なら覚めてくれよ。パラシュート降下なんてやったことないよ。えっ、レイテ島って言ってたよな。まさか、タイムスリップしてしまったのか』

「前の兵士に遅れることなく続けー。空の神兵たちよ、飛べ飛べ飛べー」

 どうすることも出来ないリョウは、パラシュートを開くためのロープだけを確認し、目を瞑って飛行機の扉から勢いよく飛び出した。ゆっくり目を開けると目の前には、無数のパラシュートが開き空港に向かって降下している。信じられない光景だ。リョウは全てを受け入れ、ロープを引いた。抱えていたパラシュートが体から離れ、風を受けてバンっと開いた。その瞬間、リョウの体はものすごい衝撃を受けた。引力に引っ張られて落ちていたのが、急に上空へ引っ張られる力が加わったのだ。何かにぶつかったような感覚を感じた時、リョウは初めての体験で気を失った。

「おい、リョウ、リョウ、大丈夫か」

 ヘルメットを脱がされて、誰かがそばで大声を張り上げている。その声が遠くから近づいてくるような感じでリョウはゆっくりと目を開けた。まだ、自分の身に起きていることが把握できていない。

『確か、タイムスリップしてパラシュートで降下していたはずだったが、ここはどこだ』

「おお、リョウ、目が覚めたか。よかった。お前が被っていたヘルメットに過電圧がかかって、電気ショックを受けた状態になっていたんだよ。まぁ、五分間ほど気絶していたが、どこもおかしくないか。とりあえず医務室に行こう。歩けるか」

「あ、ああ。ここはシェルター内の遠隔操作室なのか?」

「ん、当たり前だろ。電気ショックを受けて少し変になったか。ついでに先生に見てもらえ」

 リョウはホッとした。無事戻ってこれたのだという思いとやっぱり夢だったのかという思いが交差していた。医務室での診断は軽い脳しんとうを起こしただけと診断された。それでもリョウは自分のリアル過ぎる経験が気になり、資料室に行き、レイテ島作戦の記録を検索した。そして見つけた。一九四四年十一月、レイテ島上空から降下した落下傘部隊のうち、隊員一名が不思議にも降下中に忽然と行方不明になっていたという記録を発見した。


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