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10月21日 あかりの日 【SS】光る手のひら

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- あかりの日

日本電球工業会(現:日本照明工業会)や日本電気協会などが1981年(昭和56年)に制定。

1879年(明治12年)のこの日、アメリカの発明家トーマス・エジソン(Thomas Edison、1847~1931年)が世界で初めて実用的な白熱電球を完成させた。
記念日はエジソンの偉業を称えて制定され、「あかり」のありがたみを認識する日。また、多様で豊かな生活の中で「あかり」を上手に使い、積極的に省エネ・節電を追求する日などとされる。

照明関連の団体である一般社団法人の日本照明工業会や日本電気協会、照明学会は、「あかりの日」委員会を設立した。



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【SS】光る手のひら

 十月二十一日午前五時、まだ夜が明ける前に分娩室の明かりの下、夫が妻の手を握り励ます中で、一人の可愛い女の子が生まれた。一瞬、真っ暗になり停電かと思ったが、どうやら瞬電だった様で照明はすぐに回復し、何事もなく出産は終わった。

 両親は共働きで女の子の誕生を心から喜んでいた。とても仲のいい夫婦だった。初めての赤ちゃんの名前は、それはそれは随分前から考えていた様だった。しかし、いざ生まれてみると、まだ目も見えないのに、ぎゅっと握った小さな手とまだ歯も生えていない口で、懸命に「オギャー」と泣いたのを見て、まるで漫画で書かれているような電球のようだなと感じ、考えていた名前は全て頭の中から吹っ飛んでしまった。そして、夫は妻に言った。

「この子の名前は、ひらがなで『あかり』にしよう。だって、明るくなる直前に生まれたし、何にしても電球のような明るさを感じたんだ。友達とか家族とかみんなを照らして明るくさせる存在になってほしいと今思った。どうかな」

「あかりちゃんか。いいわね。じゃあ、出生届はそれでお願い。あなたに任せるわ」

 夫は妻をぎゅっと抱いて病院を後にした。今日も宅配の仕事だ。ますます頑張らなければいけないなと気合を入れて、眠気を吹き飛ばすために濃いめのコーヒーをコンビニで買って飲み干してから職場に向かった。夫は妻の産休の間を経済的に支えるために、残業も厭わず働いた。その頑張りのせいもあってか、あかりはスクスクと明るく活発な子に育っていった。隣近所での評判も良く、両親も喜んだ。ただ、あかり本人は、自分の体の変化に気づき始めて戸惑い始めていた。小学三年生になっていた。

 小学校の理科の時間、あかりは手を挙げて先生に質問していた。

「先生、蛍はなぜ光るんですか」

「いい質問ね。ホタルは刺激を受けると光るような部分を持っているのよ。ホタルのお尻に近い部分に、黄色くみえる"発光器"というものがあって、そこが光るのよ。私たち人間は持っていない物質なのよ。不思議でしょ。ホタル同士で光によるお話しをしているんだと思うわよ」

 あかりは、夜になると自分の手の指先が光ることに気がつき、どうして光るのかが気になり原因を知りたかったが、誰かに話をすると気味悪いと言われそうで、誰にも相談することができなかった。もちろん、両親にも。

 そのまま成長し、指先だけが光っていたのが、高校生になる頃は手のひら全体が光る様にまで変化していた。あかりは『もしかしたら自分は人間じゃないのかもしれない』とまで思い始めていた。しかし、根っから陽気な性格は変わることなく友達が集まると大抵その中心にいた。手のひらが光るのは暗闇の中だけだったので、周りに気づかれることもなく、大学まで進んだ。その頃には更に不思議な現象を経験する様になっていた。手のひらが光るのは暗い場所だったのだが、明るい場所であかりの手のひらが触れた友達は、例外なく明るい性格に変わっていたのである。あかりは誰かに触れる時、手のひらでビリッと電気が流れるような感覚を感じる様になっていた。もしかすると、生まれる時の瞬電が影響していたのかもしれない。

 その後、あかりは、無事就職した。その頃になると、気軽に触れ合うという友達も周りにはいなくなり、いつしか人に触れるということがなくなっていた。そんな時、見るからに影を背負って生きてきたというような青年と知り合ってしまった。

 ある時、コンビニで支払いのための列に並んでいたことがあった。なかなか前に進まないので、並んでいる人からブーイングが出始めていた時、あかりは痺れを切らして列から外れ、レジ前まで行って話しかけたのである。

「どうか、されましたか」

「えっ、ああ、使えるカードがなかなかなくて探してるんです。現金持ってないので」

「じゃあ、とりあえず私が立て替えておきますよ。だって、後ろにこんなに並んでますから。すいません、店員さん、ペイペイでお願いします」

 あかりは、自分の買い物の分と合わせて男性の分も支払った。大した金額でもなかったので、もらわなくてもいいやと思いながら、その男性と共にコンビニをでた。

「ありがとうございます。支払っていただいて。自分でもどうしたらいいか焦ってたので助かりました。ただ、今は現金を持っていないのでお返しできません。できれば名刺か何かいただければ後日必ずお返します」

「そんなに気を遣っていただくほどの金額ではありませんが、せっかくのご縁なので名刺は差し上げておきますね」

「頂戴します。あっ、僕も同じ会社で働いてます、部署は違うみたいですが。よかった、それじゃあ、月曜日にでも会社でお返しします」

 すごい偶然だった。あかりと同じ会社で働いている先輩だったのだ。月曜日になり、会社に出勤するとオフィスの入り口で先輩が待っていた。相変わらず俯き加減の暗い感じだったので、あかりはすぐに気がついた。

「おはようございます。わざわざ、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。助かりました。これ、貸していただいた千二百円です」

 そう言って、お金をもらうとき、お互いの指先が触れ合った。その時、青白いスパークが二人の指先を飛び交い、バチっという音を立て、二人とも驚いてお金を落としてしまった。見ると足元で百円玉が転がっている。慌てて二人は追いかけ同時に拾った。なぜかその時の先輩の顔から暗いかげが消え、爽やかな笑顔に変わっていた。

「よかったら、今夜、一緒に食事でもどうですか」

 こうして、あかりの恋が始まった。そしてこの日を境にあかりの手のひらが光ることもビリッとした感触になることも無くなってしまっていた。どうやら、あかりの能力は暗い先輩を明るくして消えてしまったようだ。この後、二人がどうなったかは、皆さんのご想像に任せよう。


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