【SS】 甘い海 #シロクマ文芸部
海砂糖を隠すために海水は塩水になった。神様が地球を作り、海を作った時、最初は海水は甘かったのである。海砂糖と呼ばれる砂糖の一種が水に溶けていて、魚たちは毎日甘い水の中で生活をしていたのである。しまいには、コンペイトウと呼ばれる甘そうな魚まで生まれてしまった。
甘い水の中の生活は魚たちの日常を怠惰なものにしていた。魚たちは移動することもなく、甘い水を飲みながらその場でじっとして、ブクブクと太っていったのである。平和といえば平和な世界だったのだが、水の流れも起きず澱んだ海へとなっていった。そうすると太陽の光も海底に届かなくなり、生態系も変化する可能性が出てきたのである。
海を作った神様は、自分の失敗を認めたくなかったが焦っていた。なんとか現状を変えて、海の中の生物が生き生きと動き回るような環境に変えるにはどうすればいいのかと毎日考え続けた。なかなかいいアイデアが出てこなかったのだが、ある日、突然思いついたのだ。まるで天からの啓示のように。
「そうか、魚たちは水が甘いから満足して動こうとしないんだ。海砂糖を隠して甘くない水にしてしまえば、どこかに甘い水があるはずだと思い、ヒレを動かして動き出すことだろう。なんで、こんなことに気が付かなかったのだろう。よし、海の水を徐々に海砂糖が溶けた状態から塩味になるように変えてやろう。徐々に変えることで魚たちは泳ぎ出すだろう。そして、最終的に全ての海水を塩味に変えてしまえば、ずっと動き回ってくれるに違いない」
神様は早速太平洋の水を塩辛い水に変えていった。焦ったのは魚たちである。今まで甘い水と信じていたのが急に塩辛くなってしまったのである。こんな塩辛い水は飲めないと感じた魚たちは移動を始めるようになった。これが、青魚の回遊魚の始まりだった。魚が移動することにより、プランクトンの生態系もつられて変化し甘い水に頼ることができなくなった魚たちはプランクトンを食べるように変化したのである。ついには、塩辛い水の中で存在しなくなった甘い水を求めて、ひたすら泳ぎ回るようになったのである。そして、それが習性として定着したのである。
神様によって隠された海砂糖は、海底の土の中に隠されてしまった。海水の中に溶け出さないように、海藻が生い茂っている場所の下に海砂糖は集められたということだ。
了
※ コンペイトウという魚は実在します。もちろん、砂糖でできているわけではありません。
一つ前の投稿、今回の話と繋がります。
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