9月14日 食いしん坊の日 【SS】苦痛な食事
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 食いしん坊の日
世の中の食いしん坊に向けて様々な食の楽しみを提案する雑誌『dancyu(ダンチュウ)』を発行する株式会社プレジデント社が制定。
日付は「く(9)い(1)し(4)んぼう」(食いしん坊)と読む語呂合わせから。
食事をもっと美味しく、もっと楽しくすることを常に心掛けるとともに、生産者や料理人などへの感謝を忘れない、真の食いしん坊のための日とすることが目的。記念日は2021年(令和3年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
この記念日は「dancyu食いしん坊倶楽部」メンバー1万人突破を記念して制定されたものである。
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【SS】苦痛な食事
食事の時間がたまらなく苦痛な時間と感じるカールという子供がいた。食べられるものがほとんどないのである。離乳食までは普通の子供と変わらなかったのだが、普通の食事へと移行する際に蕁麻疹を発症してしまった。慌てた両親は急いで病院に連れて行ったのだが、医者からは「軽度の食物アレルギーでしょう。成長期の頃にある症状だと思いますよ」と言われただけだった。両親は、またアレルギーが出ては困ると思い、食べさせるものを迷い始めたのだ。そんな時、たまたま買って手に持っていたフライドポテトにカールは手を伸ばし、パクッと食べた。そして「美味しい」と笑顔で言ったのだ。それからというものフライドポテトが主食となってしまった。フライドポテトを食べても蕁麻疹は出なかったのだ。両親はその時はホッとしていた。
カールの家の隣には、カレンという同い年の女の子が住んでいて、よく二人で遊んでいた。
「ねぇ、カール。どうしていつもポテトばっかり食べてるの」
「だって美味しいんだもん。それに他のものを食べたら蕁麻疹が出ちゃうってママがいうんだもん」
「えー、変なの。私はハンバーグが大好きだな。お野菜もお魚もだーいすき。全然平気だよ。カールはかわいそうだね」
「全然かわいそうじゃないよ。だってポテトは美味しいし大好きだから、全然飽きないんだ」
この時、幼いカレンは、カールと一緒に食事をすることが辛いと感じ始めていた。自分だけはいろんなものを食べるけど、カールはポテトだけしか食べないので、周りから変な目で見られるからだった。その後成長して、二人でデートするような関係に発展していったのだが、レストランに食事に行くことは全くなく、テイクアウトして車の中で一緒に食べるようになっていた。もちろん、カールはフライドポテトとコーラのみである。
そして時は過ぎ、二人は大学を卒業した。依然としてカールはフライドポテトしか口にしない。カレンはこのままだと絶対に体に良くないと思うようになり、カールに一度アレルギー検査をするように何度も勧めるようになっていた。カールの両親は、アレルギーがあるということを信じていたので疑うことなくフライドポテトのみをカールの食事として作り続けていたのだった。
アレルギー検査を何度もカレンに勧められ、カールは渋々と近くの病院で検査を受けた。そして数日後、検査結果が出た。なんと食物アレルギーは全くなかったのだ。その代わり、犬アレルギーを持っていたのだ。そういえば、カールが幼い頃は両親が犬を飼っていた。カールが生まれる前から飼っていた犬だったのでカールが幼い頃になくなってしまっていたのだった。ちょうどその頃がカールにとって離乳食から通常の食事へと移行する時期でもあり、歩き始める頃だったのだ。しかし、長い間フライドポテトしか食べなかった体は、アレルギーに関係なく他の食べ物を受け付けなくなっていた。
「カール。あなたは食べ物のアレルギーは持ってないのよ。いろんなものを食べてみようよ」
「いやー、無理だよ。美味しくないし、戻してしまうかもしれないよ」
「でもこのままだと絶対体によくないと思うの。私がなんとかして食べられるようにしてあげる。だってカールのこと大好きだから」
この日から、カレンの挑戦は始まった。最初は野菜をすりつぶして、ポテトを潰してそこに野菜をすりつぶしたものを入れ、フライドポテトのような形に成形し油で揚げた。見た目はちょっと不細工なフライドポテトだった。カールは恐る恐る、カレンの作った特別なフライドポテトを口に運んだ。明らかにこれまで食べ続けてきたフライドポテトとは味が違う。なんとなく甘さが強いのだ。
「どお、これならなんとか食べられるでしょう」
「うん、でもそんなに美味しくない」
「今日は、にんじんをすってポテトの中に入れたのよ。ちょっと甘かったでしょう。これからは、普通のフライドポテトと特別なカレン製フライドベジタブルを半分づつ食べること。いいわね。野菜は色々と変えていくわよ」
「わかったよ。頑張る」
こうしてカレンは献身的にメニューを開発し、通常のレストランに二人でいくことを目標にカールの食事の改善を行い、一年が過ぎた。少しずついろんなものを混ぜたポテトから生野菜そのものや魚料理、肉料理へと挑戦を続け、なんと一年で好き嫌いのないカールが誕生していた。それどころかカール自身が「食事ってこんなに美味しいものだったんだ」と思うように変わっていたのだ。それまでは、カレンとの食事以外の他の人と食事をする時間は苦痛でたまらなかったのだ。
しかし、カレンにとっては誤算も生じた。二人は無事にゴールインし、結婚生活を送っていたのだが、食に目覚めたカールはグルメ好きになってしまい、食いしん坊となってしまったのである。結果、体重も現在九十キロにまで成長してしまった。カレンの次なる課題は、カールをジム通いさせることに変わっている。
了
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