10月6日 国際協力の日 【SS】搾取
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 国際協力の日
外務省と独立行政法人・国際協力事業団(JICA)が1987年(昭和62年)に制定。
1954年(昭和29年)のこの日、日本が初めて国際協力の援助国として、国際組織「コロンボ・プラン」(Colombo Plan)に加盟した。翌1955年(昭和30年)から研修員の受入れや専門家の派遣などの技術協力を開始した。これが日本における政府開発援助(ODA)の開始とも言われている。この日には、各地で国際協力フェスティバルなど様々なイベントが実施されている。
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【SS】搾取
今の国際社会は貧富の格差が広がり過ぎている。金儲けをしようと企てる奴らは、特に弱い立場の者から搾取して自分たちの資産をどんどん増やしている。発展途上国はそんな奴らからしたら金のなる木に見えているのかもしれない。
その一方で純粋に途上国の子供達に学習の場を設けてあげたいとか、遠くまで毎日水汲みに言っている子供達を助けるために井戸を掘ってあげたいとか、砂漠が多すぎで乾季が長いため作物が作れない地域でも育てられる畑を作ってあげたいなど献身的に努力を惜しまない人も多数いる。
途上国の一つ、ガンバル国ではインフラ整備を政府が進めており、各国に支援を仰いでいた。もちろん、日本からも資金援助が実施されてはいるが、施工会社は各国から入札を実施して、最も安い工事価格を提示した会社と十年契約を締結することになっていた。いち早くインフラ整備を完成させた、隣国のアグラ国にあるセーフティ建設という会社も入札に参加していた。セーフティ建設は、日本や欧米、中国、韓国から入札していた会社より遥かに安価な工事価格を提示して、見事に落札してしまった。何とその額は、他企業の半値程度だったのだ。他企業は、その額では絶対になしえない工事だと呆れていた。
対象となる工事は、鉄道の敷設、高速道路整備、水道やガスのパイプ埋設工事であり、十年間で日本円にすると八百億円程度で落札したのだった。ちなみに日本のゼネコンは二千億円で入札していた。だが、セーフティ建設には、秘策があったのだ。
セーフティ建設は、以前からガンバル国の政府高官と繋がりを作っていた。今回の大々的なインフラ工事になる前から、ビル建設や街の整備などに関わり、一部の力のある政府高官に賄賂も送り続けていたのだった。そして、セーフティ建設は、受注後にガンバル国からの変更要求を受け、どんどん工事費用を釣り上げていくという作戦をとっていたのである。その変更要求は、繋がりのあるガンバル国の政府高官がサポートしていた。変更要求に対する見積もりは、競合がなくなっている状況のため、標準の三倍程度のコストを常に要求していたのだ。今回入札したインフラ整備もセーフティ建設は、変更要求の分を含めて、最終的には総合計で日本円にして三千五百億円程度を予定していたのだった。その内約三十パーセントは純利益になる予定として目論んでいた。
セーフティ建設は持ちつ持たれつという関係に見せながら、ガンバル国からかなりの工事費用を搾取し利益化するとともに、経営層の個人資産へと転換していたのだった。甘い汁を吸い続けていたセーフティ建設の経営層は、同じ方法を何年も続けていた。いつまでもこのやり方が通用するという錯覚に陥ってしまっていた。
だが、ガンバル国の政府にも若い血が入り込むようになり、正義漢に溢れる人材も入り始めた。同時に、セーフティ建設が過去に実施した工事でも手抜き工事による問題が出始めていたのだ。
「なぁ、セーフティ建設って何だかおかしくないか」
「ああ、俺もそう思っていた。過去の資料を見ても受注後の追加見積もりがかなり多いし、結局三倍くらいの額まで膨らんでいることに気がついたよ」
「そうなんだよ。しかも、その追加見積もりは全てにわが国の三人の政府高官が関わっているんだよな」
「そうそう、そして最近は数年前にセーフティ建設が施工した道路が陥没したり、ビルに大きなヒビが入る被害が出ているんだが、一切報道されていないんだよな」
「こうなったら、やるしかないな。我々の手で浄化しようじゃないか」
気概のある若者が立ち上がった。彼らはネットで仲間を募り「腐った政治」というチャンネルを立ち上げて国民に暴露し始めたのだ。だが、政府高官やセーフティ建設の経営陣はネットに疎いため、なかなか気づかなかった。そして周りからの報告を受け、気がついた頃には、ほとんどの国民が事実を知った後だった。政府への不信感はピークに達していた。そんな中、セーフティ建設から追加見積もりが政府に提出されていた。その頃、若手の政治家たちは、金の流れを抑え始めていた。セーフティ会社からダミー会社を経由して政府高官の家族の口座に大金が振り込まれている事実を抑えたのだ。警察も動き始めた。
流石に異変に気がついた政府高官たちは、セーフティ建設に「亡命」の手伝いを密かに依頼していた。セーフティ建設の本社があるアグラ国への亡命である。しかし、セーフティ建設は自分たちに飛び火が降りかかるのを恐れ、自国の政府に隣国から亡命したいと言っているということを密告したのだ。アグラ国の政府も自国の利益を守るため、この亡命を全面拒否という強い姿勢を示すとともに、亡命の意思を持っているということを公にしてしまったのである。これで、不正に関与した政府高官は政治生命を断たれると同時に、収賄罪で逮捕され実刑判決を受けてしまった。
しかし、元はといえばセーフティ建設が仕掛けてきたことである。そのことも何とかしたいと思った若手政治家は隣国アグラへの協力依頼などを試みたが、全ては拒否されてしまったのだ。隣国アグラでも、セーフティ建設は自国の政府高官と繋がりを持っており、危険を察知したセーフティ建設は先手を売っていたのだった。ガンバル国で問題が大きくなる様子を見ていたセーフティ建設は、すぐさま会社を解体して複数の新会社を設立して業務移管を実施し、責任の追求が来ないように画策してしまったのだった。
腐敗した政治と会社経営は少しの繋がりさえあれば再度復活してしまうだろう。今後のガンバル国とアグラ国の関係は悪化するかもしれないが、自分たちの利益重視しか考えていない連中にとっては気にならないのかもしれない。若手政治家の今後の追及と活動に希望を託そう。
了
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