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10月5日 世界教師デー 【SS】大好きな先生

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 世界教師デー

国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が1994年(平成6年)に制定。国際デーの一つ。英語表記は「World Teachers' Day」。
1966年(昭和41年)のこの日、「教師の地位向上に関する勧告」が調印された。教師への支援を求めることと、将来を担う世代の子供たちに、充分な教育を施せるよう求めることを目的としている。また、この日を通じて、教師が教育を行う権利や子供たちが教育を受ける権利の重要性について、認識や理解を求めている。

世界100ヵ国以上で世界教師デーが実施され、UNESCOはこの日を中心に国際会議を開催している。


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【SS】大好きな先生

「みなさん、おはようございます」

「おはようございまーす」

「今日もみんな元気ですね〜」

「せんせー、かずのりくんは、今日もお休みでーす」

「はーい、そうですね。一則君は、今日も病気でお休みです。先生は今日、お見舞いに行こうと思います」

「わー、僕もお見舞い行きたーい」

「そうですねー。みんなも行きたいよね。でもね、病気だからみんなで行ってしまうと一則君が無理しちゃうかもしれないので、先生が一人で行ってきますね。ごめんねー」

 これは小学校の教室での朝の挨拶の様子です。二年三組担任の洋子先生がみんなに話しかけています。今日も一日、元気に学ぶ様です。でも、一則君はここ数日お休みしているのです。あんまり体が強くない一則君は時々学校も休みがちです。クラスのみんなも心配しています。どうやら、洋子先生が代表してお見舞いに行ってくれるみたいですね。病気で休んでいるので、大勢で行くのは迷惑になるため、先生が代表するみたいです。

 週が明けると一則君のお休みは一週間を超えてしまいます。もしかするとそのまま夏休みに入ってしまうかもしれません。洋子先生はちょっと心配しています。一則君が好きなものは何だったかなぁと考えて、本を読むのが好きだったことを思い出しました。洋子先生は近くの本屋さんに行って、一則君が読みそうな本を買って、お見舞いに行きました。

「ごめんください。担任の若宮洋子と申します」

「あら、先生。いらっしゃいませ。すみません、一則がずっと休んでしまって」

「いいえ、その後、一則君の調子はいかがですか」

「ええ、あの子は、喘息持ちなので一度発作が出るとなかなか治らないんです。もう少し、お休みが続くと思います。ご迷惑をかけて申し訳ありません」

 洋子先生は一則君のお母さんも結構疲れていそうだなと思いました。でも、どうすることもできないので、一則君を勇気づけてあげることくらいはしてあげたいと思い、一則君の部屋に向かいました。

「一則君、こんにちは。どうですか、体の具合は」

「ゴホッゴホッ、あ、ようこせんせー。こんにちは」

「無理しないでいいよ。先生もすぐ帰るからね。今日は、お見舞いで本を持ってきてあげたのよ。読んだことがない本ならいいけど」

「うわー、ありがとうございます、せんせー。がっこういけないから、本はうれしい」
「よかったわ。ゆっくり病気を治してまた学校で会おうね。それまでに、この本読んでおいてね。一日一話ずつゆっくり読んでね。そして学校でお話しましょう」

「ゴホッ、うん、わかったー」

 こうして洋子先生は喘息で休んでいる一則君に世界名作全集の第一巻を置いて帰っていきました。図書館で借りてきてもいいのに、わざわざ買って持ってきてくれたことを一則君もとても喜んでいました。それから、毎日体調がいい時間帯に少しずつ本を読みました。暑い夏に入り、あっという間に夏休みに入ってしまいました。だいぶ体調も戻ってきた時には、夏休みになっていたのです。結局、小学校は二ヶ月近いお休みをしたことになります。一則君は夏休みが終わって学校に行く日、ちょっと不安でした。長すぎる休みだったので「みんな話しかけてくれるかなぁ」と心配していたのです。

「おはよー、かずのりくん。おーい、みんな、かずのりくんがきたよー」

 教室に入ると、クラスのみんなから大歓迎を受けて一則君は嬉しくて涙が出そうになりました。

「みんなありがとう。またいつ休むかわからないけどやっと学校にこれたよー」

「かずのりくん、洋子先生がかずのり君が学校に来たら、かずのり君が休んでいた時のことをみんなで教えてあげてねって毎日言ってたから、僕たちも心配してたんだよー」

 一則君が休んでいる間、洋子先生がフォローしておいてくれた様です。それに、休んでいた間に進んでしまった授業内容も洋子先生がまとめておいてくれました。一則君は洋子先生が大好きでした。それに夏休み前に洋子先生からもらった本も毎日一話ずつ読んで、ちょうど読み終わったのです。毎日の目標ができたことで病気もだんだん症状が消えていったようでした。何かに夢中になる時間があれば、体も強くなるのかもしれません。一則君は嬉しくて洋子先生のところに行き、お礼を言いました。

「洋子せんせー。ありがとうございました。本、とっても面白かったです」

「あらー、一則君、元気になって登校できる様になったのね。よかったわ。はい、これ。一則君がお休みしていた間の授業をまとめておいたのよ。みんなに追いつこうね」

「はい、せんせー」

 こうして洋子先生に助けられて、勉強の遅れも取り戻して、一則君は学校生活を楽しみました。三学期も無事終わろうとしている時、洋子先生が教壇の前に立って、悲しそうにお話を始めました。

「二年三組のみなさん。一年間、一緒に勉強ができてとってもよかったです。みんなと出会えて先生はとっても嬉しかったです。三年生になっても、ちゃんと勉強してみんな仲良くしてくださいね。先生は、みなさんの担任が終わったら、先生を辞めます。本当にありがとうございました」

「せんせー、どうして辞めるんですかー」

「せんせー、辞めないでー」

「先生はね。もう、ずっと先生としてお仕事をしてきました。お仕事には終わりがあるのよ。先生にとってそれが今なの。もうおばあちゃんになったから、お仕事は終わりなの。三年生になったら新しい先生と仲良くしてね」

 子供たちの中には、泣き出してしまう子もいました。洋子先生も思わず涙が溢れていました。でも仕方がないことです。洋子先生は、長い間先生として働き、遂に定年となってしまったのです。一則君にとっては、一生忘れられない先生の思い出として残りました。その後一則君の喘息は、成長とともに次第に消えていきました。


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