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10月4日 天使の日 【SS】恋する天使

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 天使の日

東京都中央区築地に本社を置く女性用下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社が2000年(平成12年)に制定。

日付は「てん(10)し(4)」(天使)と読む語呂合わせから。同社の商品「天使のブラ」の1000万枚販売達成を記念して制定された。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】恋する天使

 ここは天空界の日本支部。増加する人口、変化する自然環境、空と海と陸で繰り広げられる愛を見守る天使たちが住んでいる。天使たちも世代交代が進むと同時に、今では天使不足に悩む様になっていた。天使たちの組織は、繰り広げられる愛の場所単位に分かれている。そう、全体の愛を担当する愛本部の下に、空の愛を担当する空愛部、海の愛を担当する海愛部、陸の愛を担当する陸愛部が組織され、本部直轄のグループとして天使愛サポートグループというチームも組織化されていた。

 天使愛サポートグループは、天使同士の間で生まれる愛を成就させるために存在している。天使同士の愛を育て、次の世代の天使の誕生を見守るのがミッションである。天使の世界も人間界同様、少子高齢化の波が押し寄せているのだ。人間界と違うのは、天使の仕事が忙しすぎて、自分自身の愛を育む時間が取れないことが一番の問題だった。

 ある日のこと、陸愛部に所属している天使の一人である天使三号が、空愛部の天使に恋をしてしまった。言い忘れたが、天使には名前がない。出世すれば名前をもらえるのだが、それまでは一号、二号というように番号で呼ばれるのだ。陸愛部の天使は、森の中や街の中などの人間や動物の愛を育むことが仕事だったので、いつも人間や動物に見えないように陸の上を彷徨い続けていた。そんなとき、天使三号は空高く飛んでいる空愛部の天使の一人を見て、背に太陽を受けて輝いている姿に一目惚れをしてしまったのだ。その子は天使百七号だった。その後天使三号は、何かにつけて空を見上げる癖がついてしまっていた。いつも上を向いていたので、愛を育みたい人間を見逃すことが多くなり、本部からは厳重注意までもらうことになってしまった。ただでさえ、小心者の天使三号は、注意されてしまったことでかなり自信喪失になっていた。

「あーあ、怒られちゃったなぁ。今まで、こんなことはなかったんだけどなぁ。天使百七号を見てしまったからだろうなぁ。分かってるんだけど、どうしようも無いんだ。人間が恋する時の気持ちってこんな感じなのかな。だとしたら、やっぱり辛いよなぁ。僕たちが手助けしないとそれで終わりになってしまうかもしれないし。でも、僕たちの恋はどうなるんだろ。本部に僕たちをサポートするグループがいるらしいけど、会った事ないし、会ったとしても不安だし。 あ〜、どうしたらいいんだろ。このまま何もしないと、また怒られてしまいそうだよ。どんどん評価が下がるなぁ」

 天使百七号に知らないうちに恋してしまった天使三号は日々悩んでいた。そんな時、本部の職場内恋愛警報のランプが光り、天使三号が天使百七号に恋しているという通知が入った。一定期間気持ちが変わらなければ恋愛警報がなり始めるシステムになっている。天使同士の恋愛を支援する担当の天使は「よっこいしょ」とその重い腰をあげ、天使三号の想いが本物かどうかを確かめる作業に入った。

「あ〜、久しぶりに職場内恋愛が始まったかな。ん、なんだまだ思いっきり片想いじゃないか。天使百七号は思われていることすらまだ知らないぞ。というか、ん、天使百七号が想っているのは同じ部署の天使八十号じゃないか。これは困ったな。天使八十号は空担当の天使のリーダー格だったな。彼の思いはどうなっている。どれどれ、おっ、なんだ、天使百七号が好きなんじゃないか。なんだ、お互いに口に出せずにいる間に、天使三号はそうとは知らず天使百七号を好きになってしまったのか。う〜ん、かわいそうだが、天使三号には諦めてもらうしかないかな 」

 そういうと、天使同士の恋をサポートする天使は、赤い矢を取り出して、天使百七号に放った。同時に天使八十号にも赤い矢を放った。一度に放たれた二つの矢は、同時にそれぞれの天使の胸を後ろから貫いた。途端に、刺さった矢は黄金色の光を放ち、お互いの感情を交換したのだ。おかげで二人の天使はお互いの気持ちを知ることができ、めでたくゴールインした。問題は、天使三号だった。天使同士の恋をサポートする天使は、天使三号に向かって、申し訳なさそうに青い矢を放った。青い矢は天使三号の胸を正面から貫いて消えてしまった。その途端、天使三号は、それまで天使百七号を慕いすぎてミスをしていたのが嘘のように、テキパキと動き、人間の恋のサポートをこなす様になったのだ。天使三号に放たれた青い矢は、その時に夢中になっていた恋を記憶から消し去る矢だったのだ。天使三号は天使百七号を初めて見た時以前の記憶に戻されてしまったのだ。天使三号はその後、数百年にわたって真面目に自分の仕事を遂行していった。

 ある気持ちのいい朝、天使三号は、小さな赤ん坊天使を抱えた天使百七号が空を飛んでいるのを目にした。どことなく懐かしい感覚を感じたが、腕の中に抱かれた小さな天使を見て「早く大きくなって、我々の仕事を手伝ってくれる様になるといいなぁ、お母さん天使、がんばれ」と心の中で思った。

 天使三号は、消された記憶が元に戻ることはこの後もなかった。天使三号が次に恋をするのはいつのことになるだろうか。神様さえも知らない。


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