空に解き放った心 - 第三話 計画実行
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計画実行
全て順調に進んでいるそんな時に、健二が付き合っているしおりから突然の別れのラインが入ったのだった。健二としては、元彼である翔が戻っきてよりを戻そうとしていることは全く想定外であり、考えつくことすらなかったので突然のメールに驚愕していた。
「もう、これ以上続けるのは無理。私の心はあなたから完全に離れてしまったわ。これ以上はもうどうにもならないし何とかしようとも思わない。これで別れましょう。さようなら」
このラインを受け取った後の健二は顔から血の気が引き今にも倒れそうな雰囲気だったので、里香はすぐに気がついた。もちろん、翔の父親から翔が近々帰国するという連絡を受けていたので、毎日健二の顔色を伺っていたのだ。そしてすかさず、明らかに沈んでいる健二をみて」今日がチャンスだ」と感じ、翔に連絡が取れないことを知っていたので、父親である元の会社の社長に即座にコンタクトしたのだった。
「ご無沙汰しています。川村です。もしかして翔さんは戻って来られましたか。こちらの会社でしおりさんと付き合っている健二さんの様子がお昼休み過ぎてから急変しました。こんなことがあるということは翔さんからしおりさんに連絡が入ったからだと思うんですけど」
「相変わらず、鋭いね、里香さんは。その通りだよ。ついさっき、翔が帰国して元々使っていたスマホなんかを返してあげたから、きっとしおりさんに連絡したんだと思うよ。多分今夜あたりは、しおりさんのところに押しかけるんじゃないかな。しおりさんには現在のリーダー経由で帰国する日は有給を取得して自宅待機してもらうことにしてあるから」
「やっぱりそうでしたか。じゃあ、こちらは私が頑張る番のようですね。ついては、お願いです。札幌京王プラザホテルの個室レストランの予約と部屋の予約をお願いしてもいいですか。当日の予約は私ではどうにもならないと思うので」
「わかった、ではすぐに支配人に連絡して確保してもらうようにしておいてあげよう。万が一ダメだったら代わりの場所を予約して連絡するようにしてあげるよ」
「ありがとうございます。大変助かります。社長の協力を得て、何としても本日誘い出して決着したいと思います」
「いい結果を期待しているよ。禍根を残さず、全てが丸く収まる結果をね。そうすれば、里香さんの将来も我が社の将来も明るくなりそうだからね」
「はい、わかりました。きっとご期待に添えるように頑張ります。私、水島コンサルティングサービス会社に入社していた事がいまほど良かったと思うことはありません」
「おいおい、普段の仕事でそう思ってくれよ。今回のケースはこれが最初で最後だよ」
「あっはい、申し訳ありません。社長があまりにも親身になっていただけたので、つい本音が出てしまいました」
「はっはっはっ、全く正直だね、君は。今回の計画を考えた人とは別人みたいだよ」
こうして、里香は自分一人ではどうにもならないことを大きな流れの中で社長の力を借りることによって計画することができたのだった。そしてこの日、里香は健二を誘った。半ば強引に、でも不自然にならないように声をかけ、一世一代の芝居を演じて見せたのだった。失恋に打ちひしがれる健二をどん底から救い出す天使としての役割を演じて、無事気持ちのいい朝を二人で迎えるように仕向けたのだった。元々、里香は正直者である。しかし、切羽詰まったときは、持ち前の沸々と湧き出るアイデアを組み合わせ、最短距離の解決策を計画し、演じ切ることができる女性でもあった。里香は今回の健二にとっての不幸は、自分にとってのチャンスだと素早く認識し、自分自身も幸せになるためのお芝居をなりきって実施したのだった。人生の岐路に立ったとき、普段以上の力を発揮できるのも里香の持って生まれた性格が後押ししているのかもしれない。曲がったことが嫌いで事実を追求することが大好きな性格なのだが時に目的のためなら手段を選ばないところもある。それが故にデータアナリストを目指したのだった。しかし、追い込まれた時には、隠されていたスキルが目覚めるのである。綿密に分析ができるが故に、法律スレスレの解決策などを思いつくことができるのである。今回は里香の個人的なことではあったが、追い込まれた状態になっていたことには変わりない。普段使うことのないスキルが目覚め、周りを利用した今回の計画を作成し頭の中に叩き込んだのだった。
里香は今回の計画は死ぬまで健二に話すことはないと決めていた。そして、しおりと健二が付き合っていたということも知らないこととして貫き通すことを心に誓った。これからは、健二のサポート役に徹して、もっと健二を持ち上げ重要なポストにつけるのだという硬い決意をしたのである。これからが、里香にとっての幸せを追求する時間が流れていくのである。札幌を拠点として、ビジネスをさらに拡大できるように健二をサポートし、自らはできるだけ表舞台に出ないようにして、健二に脚光が浴びるように仕向けていくつもりである。そして、コンサルティング会社をもっと大きくしようとしている翔がしおりとゴールインすることを期待し、ビジネスの関係もより強固していきたいと思っていたのである。そして、いつの日か、みんなで集まって、しおりと健二がしばらく付き合っていた期間があったということが笑い話としてできる日が来ることを夢みることにした。そうなれば家族ぐるみでの付き合いもできるようになると思ったのだ。そうなるまでには、健二と翔がビジネス上で釣り合いが取れるくらいになってほしいとも願っていた。今回の計画はうまくいって、健二の心を掴むことができたが、ビジネスとしても札幌の拠点をもう少し大きくすることと、海外との連携もできるような体制やプロセスの必要性を感じていた。まだまだ健二をサポートしなければならないことは多くあるということを認識しながらも、一つのベッドで二人で気持ちのいい朝を迎えられるという今の幸せにどっぷりと浸っていた。
里香は、健二を自分のものにするために色々と画策した不純な心の全てを空に解き放ってさよならした。そして、健二を一途に思い、これから助けていく女性として今後の人生を歩んでいく決心をしたのである。
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【小説】空に解き放った心
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