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空に解き放った心 - 第三話 翔との約束

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翔との約束

 翔が消えてしまったことにより、一瞬、里香の心は不安に襲われたが、翔は約束を破るような人間ではないと思い、ダメもとで社長に確認してみるために、意を決して社長秘書にコンタクトを取ってみた。

「私は、リサーチャーの川本里香と申します。社長とお話をしたいのですが、可能でしょうか」
「はい、川本さんですね。優先的に対応するように申しつかっています。いま、スケジュールを確認いたしますのでしばらくお待ちください」
「はい、わかりました」(本当に話を繋げててくれだんだ。やっぱり頼りになるな、次の社長は)
「川本さん、お待たせしました。午後三時からは時間が取れますので社長室までお越しください。業務で都合が悪ければおっしゃっていただければ再調整いたします」
「ありがとうございます。大丈夫です。三時に伺います」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」

 里香はこれまで何度か社長とも話をしたことはあるが、全てが仕事上での話ばかりである。しかし、今回は超プライベートな話であり、もしかしたら退職するかもという話なのである。しかし、ここまで自分を認めてくれる会社というより、翔と社長に対しては絶対に裏切ることはできないなと里香は感じていた。これまでの人生でこんなに自分のことを考えてくれる人は両親以外にいなかった。この会社に入って正解だったと思った瞬間だった。午後三時となり里香は社長室の扉を二回ノックして中に入った。これまで何回も入ったことはあるのに今回は緊張していた。

「失礼いたします。今回は私事にも関わらず色々と対応をしていただき感謝しています」
「あれ、今日はまた随分杓子定規な挨拶だね。いつぞやは、食ってかからんばかりの勢いの時があったけど」

 過去において、リサーチャーの仕事をコンサルタントへのステップだと言われた時に、コンサルティングの会社だからそれに甘んじているが、自分はデータアナリストなんだと大見えを切ったことがあったのだ。社長はその時の光景を脳裏に浮かべていたのだった。里香もそのことをすぐに思い出して、顔から火が出るほど恥ずかしくなり、頬が赤くなった。

「いえ、あの、あの時は、その、大変失礼しました」
「いいんだよ、あれで君の仕事に対する熱意を知ることができたし、その後は確実に成果につなげてくれている。翔も私も君を評価しているんだ。そして無条件に信頼している。とても大切な社員の一人だよ。そんな社員が幸せになるためなら、我々は力を貸すことは惜しまないから遠慮しないで言って良いよ。今、翔は訳があって日本にはいない。そのことは他言無用だよ。たとえ、プロジェクトチーム内であってもね。なので、翔がいない間は私に言ってきなさい。きっと力になってあげるから。で、早速今日は何かあるのかな」
「あ、いえ、あの、リーダーの翔さんと話をした時、自分がいない時は社長にと言われていたのですが、いきなり翔さんがいなくなったので、心配になって連絡してしまいました。翔さんは理由があって今いらっしゃらないのですね。承知しました。決して漏らさないようにします。この度は、本当に申し訳ありませんでした。とてもお忙しいのに時間をとらせてしまって、とても心苦しいです」
「何だ、翔が急にいなくなったから、私に話が通っているか心配したんだね。社内では失踪したみたいなニュースになっているようだね。大丈夫、翔とはちゃんと話をしてあるから。わかった、じゃあ、今度改めて話も聞きたいから、秘書とスケジュールを調整しておいてくれ。ただ、一、二カ月先の方が良いかなぁ」
「わかりました。ありがとうございます。また改めてご連絡いたします。本日はありがとうございました」
「いつでも連絡してきていいよ。スケジュールが合えばいつでも会うから。安心して連絡してきていいよ」


つづく


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