空に解き放った心 - 第三話 Uターン計画
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Uターン計画
データアナリストが世の中で脚光を浴びていたことを知り、統計や予測が大好きだった大学生の川本里香は、就職先を模索していた。しかし当時の募集職種に明確にデータアナリストという記述を見つけることができなかった。代わりに、コンサルティング会社で調査を担当するリサーチャーとしての募集を見つけた。それが水島コンサルティング・サービスという会社だった。就職試験を受け、面接の際にデータアナリストとしての仕事を将来はしたいということを告げ、入社できたのである。それからというもの、翔のアシスタント的存在となり、そのスキルを存分に使い成長していった。入社してすでに六年が経過していた。
翔と里香は同じプロジェクトで仕事をしていた。翔がリーダーで、里香はリサーチャーという役割である。しおりと健二が出会うプロジェクトより前のプロジェクトである。流通業のお客様からの依頼で、物流業界再編の動向を受けて会社の今後の方向性を決断するためのコンサルティングの仕事だった。里香は、統計データや収集した数値データを分析することが好きであり得意だったのでここでも翔に役に立つ情報を懸命に作って提供していた。。里香は密かに翔に心を寄せていたが、翔はもっと経営的センスを持っている女性じゃないと選ばないということをよく理解していたので、自分と翔が結ばれることは絶対ないと自覚していた。しかし、仕事は楽しいので、継続するとして自分に合う男性を見つけたいという欲求が、翔とは一緒になれないと自覚したとたんに強くなっていった。里香の強みを生かすなら、平凡だけど将来性を感じる男性を見つけて、自分が持ち前の分析力を使って支援し、出世させることができると信じていた。そうすることで、自分自身もいい生活を送れるようになるに違いないと思っていたのである。また、できることなら北海道を拠点として活躍できる男性を見つけたいと考えていた。里香は旭川の出身だった。まだ両親が健在で旭川で生活している。特に不自由しているわけではないが、近くに住むことによって、何かあったときに駆けつけられるのが一番の親孝行と考えていたのである。自分自身の将来の安定を画策しながらでも両親のことは大切にしていたのである。しかし、なかなか里香の理想とする男性には巡り会うことがなかった。ある日、翔との面談で里香はお願いした。
「リーダー、私は北海道出身なのはご存知だと思うのですが、ゆくゆくは帰れればなと考えているんです」
「あぁ、そうだったね。北海道だったね。確か、、、旭川だったかな」
「はい、そうです」
「流石に旭川には事務所を作る計画はないけど、札幌だったら可能性あるよ。でも、君の分析力は惜しいなぁ。僕のそばで活躍してほしいと思っているから」
「でも、札幌でもリーダーの役に立てるような環境だったらいいですよね」
「ん、なんか含みを持った言い方だね。何か考えがあるのかな」
「大体察しはついてますよ。私を甘くみないでくださいね。最近というよりだいぶ前からですけど、コンサルだけじゃなくて開発まで業務を拡張しようと考えているでしょう」
「えっ、いや、そんなことはないよ」
「いいんですよ。他言はしませんから。だって、最近はコンサルが終了した時、次の開発を請け負う会社の情報とか、PMの情報とか拠点情報とか、IT業界動向の調査なんかをしてるじゃないですか。これは、私から見れば、国内の開発拠点を探して既存の開発会社より良い条件でお客様に提案できる環境を作りたいと思っているということなんですよ。もしかしたら海外進出までも考えてますか」
「うわー、まいったな。さすが里香だな。ますます、離したくなくなったな。まぁ、ほぼその通りだよ。これで里香に経営者としての采配力とPM力があれば求婚するんだけどなぁ」
「やっぱりそうですよね。私はリーダーのことがとっても好きですけど、絶対私じゃないってわかっているので、自分の方針を曲げたりはしませんよ」
「おー、やっぱり、里香はすごいな」
「で、もう少し話をしておきたいことがあるんです。この際だから言ってもいいですか」
「なんだ、僕が損しないような話なら相談に乗るよ」
「まだ、見つかってはいないんですけど、私がこの人と一緒になりたいっていう人が見つかったら応援してほしいんですよね。サイドサポートというか。お手伝いというか」
「それは応援するけど、たとえば、どんなこと」
「良い人が見つかったとしたら、何とか北海道で仕事をするように仕向けてくれるとか、もし違う会社の人だったら、私をその会社に送り込んでくれるとか」
「なんかすごいこと考えているな。それって、計略だぞ。そんな人がいるのか」
「いえ、いません、まだ。そんな人ができたらっていうことです。もし違う会社に行ったとしても、この会社の利益に絶対貢献しますから。力を貸してください」
「よし、わかった。そうなった場合は、無条件に応援するよ。それまではこの会社の利益に貢献してくれよ。親父にも今の話は共有しておくから、万が一、僕がいないときは直接社長に話ができるようにしておくよ」
「やったー、やっぱりリーダーは頼りになります。もう、一生貢献しまーす」
「全くお調子者だな、里香は。でも、よろしく頼むぞ」
何だか変な内容の相談ではあったが、里香は翔と翔に繋がっている社長とのパイプは切りたくなかったのである。今後巡り会う人を支援するためには勢いのある後ろ盾が必要と考えていたのだ。それは翔という存在を自分のパートナーにはできないということを自分に納得させるために早く相手を見つけようとしている自分へのプレッシャーだったのかもしれない。里香は分析が得意な策略家でありながら乙女の心を持っている女性だったのだ。しかし、そう簡単に理想の男性に巡り合うはずもなかった。無情にも月日は流れていった。そして、ある日、翔は忽然と姿を消したのだった。社内では失踪してしまったという噂までたっていた。しかし、里香には失踪する原因が思い当たらない。もしかしたら里香の知らないプライベートで何か問題が発生してしまったのだろうかとも考えた。そうすると、社長に話を通しておくといった翔の言葉はもしかしたら反故になっていいるかもしれないと気になり始めた。
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【小説】空に解き放った心
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