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【SS】 一年は十三ヶ月 #シロクマ文芸部 (十二月)

 十二月が年の最後の月だった時代があったのだと現在の歴史の授業では教えている。今から、約六千年ほど前の時代のことだったと。今では、一年は、十三月まで存在している。誰も不思議には思っていない。それどころか、いつまた新しい月が増えるのだろうとまで若者の間では噂が飛び交っているくらいだ。

 太陽を回る地球の公転周期が狂い始めたのは、六千年前のことらしいが、太陽の黒点が大きくなり、季節がずれ始めたことを不思議に思った日本の学者が気づき始めて問題になったという記録が残っている。それまでは、公転周期は365日だったらしいのだが、今では390日になっている。それで、一年を390日に定義し直したのだそうだ。その際に、一月当たりの日数も調整され、今は全ての月が三十日に設定されてカレンダーができている。それでも、少しずつ公転の周期は遅くなってきているらしい。

 六千年前、銀河系では惑星間のバランスが崩れ始めた。銀河系の中心となっている太陽の力がわずかに弱くなり始めたらしかった。太陽のエネルギーは永久のものだと誰しもが思っていたのだが、そうではなかった。わずかではあるが、黒点の広がりとともに年々少しずつエネルギーは減少していたのだった。それに伴い、惑星を引き付ける力も弱くなり、地球にとっては公転する軌跡が少し膨らんでいったのだそうだ。結果として太陽を一周する期間に狂いが生じ始め、カレンダーも再検討する必要性が発生し、地球上の識者が一堂に介して、議論し、検証した結果、一年は390日という定義が決定されたのである。

 当時日本では、各月に日本語の呼び名が付けられていた。新しくできた十三月の名称も検討され始めた。その結果、迫間月はざまづきという名称が付けられたのである。十二月と一月の間に現れた月ということから、命名されたのだ。これにより、俳句の世界も混乱し始めた。季語に影響するからだ。そして、影響はそれだけではなかった。多くの会社が影響を受け始めていた。

 六千年前のとある会社では、地球としての決定には従わなければならないと調整していたが、頭を抱える問題が発生していた。社長は混乱する頭の中を整理するために一つずつ問題を潰していこうと考えていた。

「おい、誰かいるか。新しいカレンダー適用が翌年である3900年から適用開始になるが、四半期の区分けはどうなるんだ」

「我が社は、一月から会計年度が始まりますが、仕方ないので第四四半期だけを四ヶ月間として処理することにしようと考えています」

「そうか、仕方ないな。それではボーナス支給月はどうするのだ」

「はい、七月と十三月に変更しようと思います。少しですが、後ろ倒しということになりますので、会社としては支給するための期間に少し余裕ができる予定です。その分、社員からはクレームも出るかもしれません」

「おいおい、社員のことは一番に考えなければならんぞ」

 こんな右往左往した対応をする会社が多い中、別の会社では、面白い施策を実行に移そうとしている会社があった。その会社ではワークライフバランスを重視し、社員の家族のことを第一に考えた計画を立てたのだった。

「みんな、来年からは、新しいカレンダーが全世界で一斉に適用になることが決定した。そこで、我が社としては、突然現れた十三月は無いものとして業務を継続しようと考えている。具体的には、有給休暇取得月間として定義したい。社員によっては、三十日の有給休暇を持っていないものもいるだろうが、年初に保有している有給休暇の六割に当たる日数を予め差し引いて、全社員一律に十三月は一月間全てを休暇としたい。そうすることで、十三月は業務を休止し、全社員が休みを取ることができるようになるだろう」

 この施策は、会社としての会計処理は十二ヶ月間のままで処理できるという利点もあった。ただ、他の会社が足並みを揃えないとビジネスとしては厳しいものになるかもしれないリスクをともなっていた。そこで、この会社の社長は政府に掛け合ったそうだ。その結果、日本国内では、十三月を原則として有給休暇取得強化月間とし、遵守した会社の法人税を割り引く法案に繋がったらしい。また、個人事業主には一ヶ月分の売り上げ補助が実施されることも決定した。

 この法案が元となり、数千年前からは、十三月は日本の祝日になっている。今は十二月、あと少し働けば、一ヶ月間の休みが待っているのだ。もちろん、学校も休みとなるので、家族揃って楽しい余暇を過ごし、緩やかに新年を迎えられることだろう。

 心配なのは太陽のエネルギーである。今もなお、少しずつ弱くなり続けている。あと数百年もすると、十四月が作られてしまうのかもしれない。さらには、数千年後のいつの日か、地球は太陽の求心力を失い、公転の軌跡を外れて宇宙の彼方に飛んでいってしまうかもしれない。一般の人々は何も気にすることなく、カレンダーに従った仕事を淡々とこなしてはいるのだが、一部の科学者たちは、地球を制御し安定した軌道を維持し、人類の生き残りをかけた対策を迫られるのかもしれないと考え、世界中の科学者は連携して様々な可能性の研究に取り掛かっている。



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