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10月13日 引っ越しの日 【SS】相続の話

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 引っ越しの日

「引越専門協同組合連合会」関東ブロック会が1989年(平成元年)に制定。

1868年(明治元年)のこの日、明治天皇が京都御所から江戸城(現在の皇居)に入城された。この日を近代の引越しの始まりとして、引越専門協同組合連合会関東ブロック会の創立15周年を記念して記念日が制定された。

引越専門協同組合連合会は、1974年(昭和49年)に東京で創立された引越専門の運送事業者団体で、現在の名称は「全国引越専門協同組合連合会」である。本部を東京都千代田区神田紺屋町に置く。「ハトのマーク」が目印で、全国の熱意ある専門業者によって構成される。


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【SS】相続の話

 十月十三日、吉永宅に遺産相続の関係者が集合していた。その場に証刑事と縁梨刑事も同席している。公正証書として遺言書を預かっている弁護士の手出須は、静かに話し始めた。

「みなさん、朝早くからお集まりいただき、ありがとうございます。今回集まっていただいたのは、吉永氏の財産を受け取っていただく予定の皆様と関係者の方々です。民生委員の瀬羽さん、郵便局の日々さん、日頃吉永さんと特に親しくしていただいていた赤水さん、そして、唯一の親族と判明した宮前さん、更に関係者として、宮前さんの付き添いで来られている大洞さん、後ろには、県警から証刑事、縁梨刑事にも証人となってもらうため参加いただいています。今日は、吉永氏の遺言書を開封しその内容を皆さんとともに確認するために集まっていただきました。ただ、最新情報に変更がありましたのでお知らせします。実は、二日ほど前に吉永氏本人から私宛に最後の遺言書が届いたのです」

 集まっているみんながその場でどよめいた。遺言書が二通も存在するとは思っていなかったからだ。赤水が声をあげた。

「今日は、その二つの遺言書が開封されて確認することになるのですか? 遺言書って認められている最新のものが有効ではないのですか」

「はい、赤水さんのおっしゃられることは正しいです。しかし、最新の遺言書は吉永さんが自分で認められ封印されたものなのです。今後は裁判所に申請して承認してもらい、再度皆さんと共に内容を確認する必要があります。その際、今日開封する遺言書との差異があれば、最新の内容で置き換えられることになります。ただ、最新の遺言書の内容は私宛の手紙にも認められていますので、具体的な金額を除き、今日お話し致します。最も最終的にはこちらの最新の遺言書を裁判所にて皆さんと一緒に開封するまで正式な内容とはなりませんのでご了承願います」

「わかりました。私たちは親族でもなんでもないので、特にクレームをつける立場にはありません。取り扱いは、お任せします。ただ、私は今日急な転勤が決まり、引越しの手配をしなければならないので、手短に教えていただければ助かります。多分、他の方も同じではないかと思います」

「ありがとうございます。公正証書となっている遺言書では、遺産の管理担当者として私が記載されていますが、あくまでも整理のための担当者としての役割です。実際の相続者としては、瀬羽さん、日々さん、赤水さんの三名の方々です。ただ、全財産ではなく不動産、具体的には賃貸マンションのいくつかの区分所有権を譲渡するような内容で記載されていました。しかし、この内容は新しい遺言書では書き換えられています。三名の方々用にネット銀行の口座が開設されすでに金額が振り込まれています。その銀行口座に入っている金額を三名の方に相続してもらう内容に変わっているのです。金額に関しては、裁判所において開封するときにお伝えすることになりますのでご了承ください。それから、同様に私のための口座も作成されていました。これは今後の弁護士費用や資産の整理、名義変更などに関わる諸費用の前払いという意味合いで作られました。それ以外の財産である不動産、証券、残りの預貯金は全て宮前さんに相続させると記述されています。私はこの遺言書に則り相続の手続きを実施させていただきます」

 誰からもクレームされることなく、遺言書の内容確認の一回目は終了するのかと思っていた時、証刑事が前の方に移動して話し始めた。

「皆さん、実は吉永さんの死亡の原因は、青酸化合物の中毒でした。分かりやすく言えば青酸カリを飲んでしまったということです。それで、私たちは他殺が濃厚と考え事件を追いかけていました。しかし、先日生前の吉永さんが残した最後の手紙を読み、自殺である可能性も否定できなくなりました。皆さんの中には勘違いをされている方も、もしかしたらいらっしゃるのかもしれませんが、直接の原因というか動機としては、吉永さんが過去の行為に対して後悔したことによる自殺の可能性が出てきたのです。故人のプライバシーを公にするわけにもいかないので、吉永さんの最後の手紙の公表は差し控えますが、もし、皆さんの方で言っておきたいことがあればおっしゃってください。なお、吉永さんが亡くなられたのは、発見前日の九月二十九日の昼であることは司法解剖によって確定しています」

 その場にいた宮前以外は「自殺」する動機がわからなさそうに不思議な顔をしている。しかし、三人ともが何かを言いたそうにしているのは誰が見ても明らかだった。証刑事はしばらく沈黙の時間を意図的に作った。手紙の内容に基づいて説明しても良かったのだが、当事者の口から故人の手紙の内容と同様なことが聞ければ信ぴょう性が出ると考えていた。そのため、誰かが話し始めるための時間をあえて作っていたのだ。誰かが口火を切って話し始めることで、これまで言っていないことが判明することを期待していた。その時、耐えきれないかのように宮前が立ち上がった。横で手を握っていた大洞は驚いた様子で宮前を見上げている。先日、宮前から秘密を打ち明けられ、それ以上の隠し事はないと信じていただけに、ショックを受けているようだ。

「大洞さん、ごめんなさい。貴方には先に話しておかなければならなかったかもしれないわ。酷い女だと思われたくなくて話せなかった。でも、今、話しておかなければと感じたの。だから、貴方が私の言葉で私のことを嫌いになるかもしれないけど、話すわ。刑事さん、実は」

 宮前は、大洞に本当に申し訳ないという顔をして証刑事の方を向き、自分が取った行動を静かに話し始めた。

明日に続く


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