6月21日 世界一周の日 【SS】惑星旅行
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-世界一周の日
千葉県佐倉市の世界冒険社代表の砂川博昭(すながわ ひろあき)氏が制定。
日付は日本初の世界一周ツアーと言われる朝日新聞社が主催した世界一周会による世界一周旅行の一行が帰国した1908年(明治41年)6月21日から。
砂川氏は2015年(平成27年)、62歳のときに一人で世界一周の旅に出発し、一時帰国を挟みながら28ヵ国を巡り219日間で世界一周を達成した経験を持つ。
その旅の途中で世界中の人にお世話になったことから、恩返しの意味を込めて記念日を制定し、一人でも多くの人が世界一周の旅に出るきっかけになってほしいとの思いが込められている。記念日は2021年(令和3年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。なお、砂川氏は「世界一周の日」を商標登録している。
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【SS】惑星旅行
遠い昔、地球を一周する旅を実現すると賛美を浴びていたらしいが、今では地球の世界一周など誰も気にすることは無くなった。というよりも、大気汚染が進み、だれも地球の中で旅行をしたいと思う人がいなくなったことも理由の一つだろう。月や火星にも自由に渡航できる時代になったし、銀河系の惑星にはほとんど街が建設され、すでに定住している人も数多くいる。定住してしまうと、定住用ドーム内での生活となり、旅行者用とは違う環境で生活する様になるらしい。やはり、惑星ごとに異なる重力に適応した生活に移行するためらしい。定住する人間が環境に合わせることで使用するエネルギーも少なくて済むのだそうだ。なるほどうまく考えられている。
今、地球で生活しているが、大気汚染はひどい上に人工的な水以外は安全じゃないし、なんとなく移住しようかなと漠然と考えている宇宙という若者がいた。宇宙は、移住のため体験旅行を申し込むべく、旅行会社の窓口に行った。
「すみません。移住を検討しているのですが、その前にいろんな星の短期滞在を経験してみたいのです。いい商品ありますか」
「いらっしゃいませ。はい、最近は同じ様な要望で来られる方が多くいらっしゃいますので、いろんなアレンジができる旅行商品を取り揃えております。ご希望の惑星はございますか」
「いえ、特に行きたいと思っている惑星があるわけではありません」
「そうですか。それなら地球よりも質量がウンと少ない惑星をお勧めします。何しろ重力が小さいので体力を消耗しません。体型も保ちやすくなります」
「なるほど。そうなんですね。じゃあ、小さい惑星をいくつか経験するプランでお願いします」
「かしこまりました。それでは、火星、冥王星、ケレスなどでいかがでしょうか。ケレスは準惑星ですが水がありますので、移住を考える場合は検討価値があるかもしれません。また、途中でトランジット重力体験として質量が極めて大きな木星に立ち寄るのも面白いかもしれません。訪れる星の順番は如何様にでも組み替えられます。距離は違いますがワープしますので旅行代金には影響しません」
「なるほど。木星の重力体験って面白そうですね。地球よりも大きい重力なんですよね。体が重く感じるのかなぁ。それっ、ぜひお願いします」
「はい。では、火星、木星、冥王星、ケレスの順で旅行を組みましょう。ただし、木星はトランジットなので数時間の滞在のみとなります。それ以外の三つの星にはそれぞれ一ヶ月ずつ滞在するプランをご提案します。出発は二ヶ月後になります。それまでに、ウィルス検査、細菌検査、筋肉量検査を済ませて、スペース・パスポートの取得をお願いします。もし手続きで不明な点があれば私共がお手伝いさせていただきます」
こうして宇宙は、初めての移住を目指した惑星短期滞在旅行を契約した。きれいな惑星で住みやすい場所が見つかるといいなと漠然と考えていたのが、だんだん現実味を帯びて来て若干緊張しながらも、出発に必要な事前検査を次々と受けていった。もちろん、問題があるはずもなく、ウィルスも細菌も規定量以下であり筋肉量も問題はなかった。そして生まれて初めてスペース・パスポートを取得して右肩に埋め込んでもらった。この後、宇宙は体力をつけるためのトレーニングも始めていた。
二ヶ月の準備期間を経て宇宙は宇宙旅行に出発した。地球を離れる際の重力は思ったよりも強く感じたが、宇宙空間に出た途端に快適になった。火星ではちょっとだけ体にかかる負担が軽くなるのを体感していたが木星に着いた途端に体は鉛の様に感じてしまった。一ヶ月の火星での生活が余計に木星での負荷を増した様だ。しかし、冥王星に行くと、ほとんど重力を感じず、逆に制御するのに苦労した。そして一ヶ月後、ケレスに到着し、さらに体が軽く感じられ少しの動きで全てを賄える様になった。加えて凍った地下水の純度が高く、アルコールをロックで飲むのに最適だった。宇宙は移住先はケレスにしようと内心決定していた。やはり天然の水があるのはいいと感じていた。
体験旅行を終えて地球に戻って来た時、体の異変に気がついた。立てないのである。旅行会社の説明書には小さく記載があった。
『体験旅行の後は重力の差で生じる体の変化があるため、地球に戻った後、重力難民として重力リハビリセンターで数ヶ月の療養が必要になる場合があります。なお、その費用は旅行代金には含まれていませんので各自ご対応ください』
宇宙は重力リハビリセンターで二ヶ月を過ごし、やっと元の生活に戻ったが、重力が小さいところに移住すると地球には戻ってこれないのかもしれないということを改めて感じ、もう一度移住計画の見直しを検討しようと思っていた。しかも他の惑星から避難して来た重力難民の人たちを見ると自分のわがままの様な気もしてしまい、移住に対する意志は溶け始めている。
了
※参考重力値
太陽(273m/s2)、水星(3.7m/s2)、金星(8.9m/s2)、
地球(9.8m/s2)、月(1.6m/s2)、火星(3.7m/s2)、
ケレス(0.3m/s2)、木星(24.8m/s2)、土星(10.4m/s2)、
天王星(8.9m/s2)、海王星(11.2m/s2)、冥王星(0.6m/s2)
ちょっとだけ1日前のお話と関連を作りました。
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