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【SS】 午前四時 (1305字)  #シロクマ文芸部

 早朝に枕元で充電中だったスマホがけたたましく鳴った。緊急地震速報だ。金曜日、早朝四時、思わずベッドから飛び起きてパジャマから普段着に着替える。この部屋の住人、光山飛影みつやま ひえいは揺れが続いている部屋で一人だ。経験したことがない恐怖が襲いかかっていた。

 飛影は、九州育ちのため地震には慣れていない。東京に出てきたのは大学を出た後だ、まだ半年も経っていなかった。初めての大きな地震に遭遇して緊張していた。

「地震が多いとは聞いていたけど、こんなすごい速報が鳴り響くんだな。まだ朝四時じゃないか。うーん、まだ頭痛がするな」

 ぶつぶつと独り言を言いながら、二日酔いが残っているのかまだ地震で部屋が揺れているのか判別もつかないまま、キッチンに行って蛇口を捻った。

「焦っても仕方ない。ここは十五階だ。そう簡単に出て行けるわけでもない。どうせエレベータは止まっているだろうし。とは言っても、結構恐怖だよな、地震。このマンション、結構古いから揺れもあるんだろうな」

 コップ一杯の水を飲み干したが、まだぼうっとしている頭の飛影だった。夜明けまではまだ時間がある。もう一度ベッドに潜り込もうとしていた矢先、ラインのメッセージ着信音が鳴った。

「ん、洋子からか。地震を心配してメッセージを入れてきたのかな。まさかね」

 洋子と付き合い始めたのは三ヶ月前だった。飛影のマンションからは車で四十分程度のところに洋子のマンションがある。深く考えずに、ラインのトークを開いた。洋子のアイコンに未読マークがついている。無意識にクリックすると予想外の内容が。

『飛影。今地震があったでしょう。私、大変なことになってしまったわ。落っこちて倒れちゃったみたいで…来てくれないかな』

 飛影は躊躇せずに返信メッセージを送信した。

『えっ、そんな…わかった。すぐ行く、待ってて』

 飛影は地下の車庫に向かった。愛車のロックを解除して乗り込む。車内はキンキンに冷えている。エンジンをかけるとすぐにシートヒーターとステアリングヒーターのスイッチを入れた。寝静まっているマンションの住人に気兼ねするかのように、ゆっくりと駐車場を出るとスピードを上げ首都高へ。ラジオのスイッチを入れると少し前の地震のニュースが流れていた。朝早いせいか渋滞もなくスムーズに洋子のマンションに到着。

 急いで洋子の部屋の前に行き、一応チャイムを押してみる。応答がない。飛影は不思議に思うこともなく合鍵でドアを開けた。

「おーい、洋子。来たよ。大丈夫か」

 冷え切ってまだ暗いリビングに入り無意識に照明をつけた。久しぶりの照明の光が冷え切った空気で満たされたリビングを明るく照らした。飛影は迷うことなく東側の窓がある方向に視線を投げかけた。

 東向きの窓際は洋子が好きだった場所だ。その床に洋子の写真が果物と一緒に転がっていた。飛影はハッと気づいた。

「ああ、落ちちゃったんだね、仏壇から…それで僕を呼んだのか…」

 飛影は静かにスマホを取り出しラインを確認した。やりとりしたはずのメッセージはなく、そこには生前の洋子とのやりとりだけが表示されていた。飛影は静かに写真を元に戻して手を合わせた。



あとがき

 地震速報のお知らせは本当にびっくりするくらいに鳴り響いていたなということを思い起こしてショートショートにしてみました。

 表紙の画像はCHATGPTに作ってもらいました(便利になりましたよね)


下記企画への応募作品です。

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