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9月25日 骨董の日 【SS】愛しすぎた人(2.骨董屋の主人)

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 骨董の日

京都府京都市中京区に本社を置き、骨董・美術品のオークションを手掛ける株式会社古裂會(こぎれかい)が制定。

日付は江戸時代の戯作者で「骨董」の語を広く知らしめるべく『骨董集』を刊行した山東京伝が『骨董集 巻之三』に記した日付の文化十二乙亥九月二十五日から。日本の古き良き文化の一つである骨董品を多くの人に愛してもらうきっかけの日とするのが目的。記念日は2017年(平成29年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】愛しすぎた人(2.骨董屋の主人)

 証刑事は、掘り起こされた遺体に手を合わせた後、顔写真をスマホに収めていた。まずは、キャンプ場に集まった人たちにスマホを見せ、被害者に心当たりがある人がいないかを縁梨刑事と共に確認していた。すると集まった中から、数人の人が声を上げた。

「あれ、この人って街の中でよく見かける保険屋さんじゃないかな」

「えっ、あー、そういえばそうだね。親切保険という保険会社のセールスの男性だ。確か、去年くらいから見かけるようになった人じゃないかな」

「なるほど。親切保険という保険会社の人なんですね。この人の名前とか分かりませんか」

「何だったかなぁ。何だか、ハワイみたいな名前で変わってるなぁって思ってたんだけどなぁ」

「あっ、私思い出した。確か、常夏さんよ」

「おお、そうだ、常夏の旅人さんだった。名前は、タビトっていうんだけど、旅人って書くんですよ。そう、そう、思い出したよ。僕も一回話をしたことがあったな。確か、事務所は、骨董品屋の前にある『森の入り口バス停』の前にある建物ですよ。そういえば、向かいにある骨董品屋にもよく出入りしていたと思いますよ」

 証刑事と縁梨刑事は顔を見合わせて、身元が早く判明したことで安堵の顔になった。同時に、近場で事故か事件に遭った後に、森の中に埋められたのだと確信していた。

 死因の特定はこの後の司法解剖を待たなければならない。その結果で、殺人なのかどうかが判断されることになる。その間に証刑事と縁梨刑事は、保険会社と骨董品屋に聞き込みに行くことにして山から降りていった。

 キャンプ場で聞いた通り、骨董品屋の前にはバス停があり、その前に親切保険の事務所があった。そこは数人の社員が勤務しているだけの小さな事務所だった。

「こんにちは。神奈川県警の証と縁梨と申します。少しお話をお伺いしたいのですが、責任者の方はいらっしゃいますか」

「はい。私が所長の保科明日香と申します。警察の方がどんなご用件でしょう」

「実は、常夏旅人さんについてお聞きしたいのですが、こちらにお勤めですよね」

「ええ、確かに常夏は私どもの営業員です。ここ数日連絡が取れなくて困っているのですが」

「実は、今朝、山のキャンプ場近くの森の中で遺体で発見されました。こちらの写真をご確認ください」

「えっ。あっ、確かに常夏です。でも、なぜ、こんなことに」

「まだ分かりません。現在、捜査中です。最近の常夏さんのお客様のリストと自宅の住所を教えていただけますか。それと何か揉め事に巻き込まれたりとかしていたようなことはありませんでしたか」

「そうですね。最近は、営業成績もそんなに良くなかったので、収入もあんまりなかったのではと思います。向かいの骨董品屋さんに常夏が持っている品物を買ってもらうために何回か出入りしていましたから。ただ、揉め事があったかどうかはよく分かりません。時々おしゃれして出勤してくる時はありましたけど、なぜだかは聞いたことがないので私には分かりません」

「そうですか。ありがとうございます。もし、何か思い出されましたら連絡をお願いします」

 証刑事と縁梨刑事は、その足で、向かいの骨董品屋に向かった。店内には、いろんな骨董品が所狭しと整理されることなく雑然と置かれている。引き戸になっている玄関の扉を開けて、声をかけた。

「ごめんください。どなたかいらっしゃいますか」

「はい、はい。いらっしゃいませ。何をお探しですか。最近珍しい絵や書も入りましたよ」

「いえ、私たちは客ではなく警察のものです。証と縁梨と申します。少しお時間よろしいでしょうか。この店のご主人ですよね」

「ええ、私が主人の古絵好男です。えっ、警察。警察が何の用ですか? 税金もちゃんと払ってるし、交通違反もしてませんよ」

「そうではありません。今日は、常夏さんについてお話を聞きに参りました」

 一瞬、主人の顔が曇った。証はその表情を見逃さなかった。そして店内を見ると骨董品が乗せられている一枚板でできた頑丈なテーブルにも気づいていた。

「えーっと。常夏さんですか。ああ、時々店に来られますよ。それが何か」

「実は今朝、遺体で発見されたんです。森の中で」横から縁梨刑事が説明した。

「えっ、遺体。亡くなったということですか。常夏さんが」

 なぜか、古絵の顔は安堵感に満ちたように証刑事は感じていた。

「こちらのお店によく品物を持って常夏さんはいらしていたようですね。もちろん買っていただくために。向かいの事務所で聞いてきました」

「あ、はい。時々、あまり価値のないものを持ってこられて、どうしても買ってくれと迫られるので困っていました。でも、死んだなんて。あっ、私じゃないですよ。私は人を殺したりはできませんよ」

「因みに、常夏さんはどんなものを持ち込まれていたのですか」

「ほとんどが贋作で、書とか絵でした。しかも、贋作でないとしてもそれほど値がつかない作者のものばかりでしたよ。それでも何とか買ってくれとせがまれるので仕方なく買い取っていました。大損害ですよ。売れる品物ではないので」

「なるほど。じゃあ、多少なりとも恨みはあったわけですね。常夏さんに。もしかして、これで心配事は無くなったとか思っていたりしてますか」縁梨刑事が揺さぶりをかけてみた。

「そんなこと思うわけないじゃないですか。ただ、常夏さんは、キャンプ場とは反対側の別荘地に住んでおられる別所さんの所有する別荘で生活されていたはずなので、もしかしたら持ってきているものは別所さんのものじゃ無いかと心配したほどですから。私は何もやましいことはありません」

 目を泳がせながら早口で話す古絵を証刑事は「何か隠している」と思ったが、古絵が言った別荘に行ってみることにして、骨董品屋を後にした。

続く


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