「失われた30年」①:需要不足か供給能力の低下か
失われた30年の正体は?
①「消費税が日本を壊した」というよくある誤解
「失われた30年」
この言葉でネットではよく「消費税が日本を壊した」という主張が流れてくる
たしかにわからんでもない
1997年の5%増税、2014年の8%、そして2019年の10%と、増税のたびに景気は足踏みして、消費は落ち込み、実質賃金も下がってきたように見える
でも、本当に消費税が“日本の停滞の原因”なんやろうか?
増税のたびに景気が悪くなっているように見えるのは、「短期的な反動」であって、「構造的な停滞」の原因とは限らない
そもそも日本経済の長期停滞って、バブル崩壊の1990年代前半からすでに始まってたわけで、最初の消費税導入(3%)は1989年、バブル崩壊の直前
つまり、すでに日本経済が曲がり角に差し掛かっていたタイミングで、増税が導入されたってことなんよね
増税のタイミングと、景気後退が起きたタイミングは確かに一致してる部分もある
でもそれを原因と決めつけるのは正しく把握する為に邪魔なバイアスがかかると思うんよ
「風邪をひいた時にマスクをつけたら熱が出た、だからマスクが原因」みたいな話になってしまう
実際、冷静に振り返ると、増税の影響は一時的な消費の反動減がメインで、景気全体を30年にわたって抑え込んだような重しではなかったと思う
例えば2014年の5%→8%の増税後は消費は減ったけど、GDPはその後回復してる
2019年の10%増税の影響も、翌年のコロナで見えにくくなったが、実はそれ以前からすでに消費の伸びが鈍くなっていた

つまり、増税で景気が悪くなったように見えるけど、それはあくまで「短期の変動」
30年スパンの停滞を説明するには弱すぎる
じゃあその“構造的な停滞”は、どこから来たのか?
これを考えるために、まずは消費税と景気の推移を簡単に振り返ると


1989年:消費税導入(3%)→ 翌年バブル崩壊
1997年:5%に増税 → 翌年アジア通貨危機+金融危機
2014年:8%に増税 → 直後の消費減速、その後回復
2019年:10%に増税 → 数カ月後にコロナショック
どう見ても「増税→即不況」という流れに見えるけど、それだけじゃ「失われた30年」の説明にはならないんよ
もちろん増税が景気に悪影響を与えなかったという意味ではなく、他の要因にも注目すべきやという意味
そこで注目したいのが「供給力の変化」なんよね
② 失われたのは“需要”よりも“供給力”だった?
「景気が悪い」って聞くと、多くの人は「モノが売れない」「みんなお金を使わない」と思うはず
つまり“需要が足りてない”と考えるのが自然やと思う
でも日本の経済停滞はほんまに“需要不足”なんやろか?
たとえば、リーマンショックやコロナのときみたいに急激な不況が来たときは、たしかに需要が一時的に落ち込む
でも、日本の「失われた30年」っていうのは、そんな一時的な落ち込みじゃなくて、長期的に続いた“構造的な停滞”なんよね
その原因を突き詰めると、どうも「需要」より「供給」のほうに問題があったんちゃうか?って思えてくる
供給力ってなに?
経済の“供給力”っていうのは、簡単にいえば「どれだけのモノやサービスを社会全体で生み出せるか」ということ
働く人の数(労働力)、使える機械や設備(資本)、そしてそれらをうまく回す技術(生産性)
こういった要素で決まってくる
その中でも、特に日本にとって深刻やったのが「働く人の数=労働力人口」の減少
人口ボーナスの終了、そして労働力の減少
1960〜80年代は言ってみれば「人口ボーナス」期やった
若い世代が増えて、労働市場も活気があって、企業もガンガン成長できた
でも1990年代から、その構図が崩れていってて、少子化によって若い働き手が減り始め、高齢者が増加し始める
その結果、働く人の数そのものが減っていくという“供給制約”がじわじわと日本経済にのしかかってくる




→ 1990年頃に生産年齢人口(15~64歳)の増加は止まって、特に2010年代から、急激に減少してるのが見て取れる
→ これって、そもそも“作れる人”が減ってきてるって話なんよね
実質GDPの伸び悩みも、「労働力」がネックになってる
GDPの中身を分解してみると、「労働」と「資本」という要素がある
実は日本の資本ストック(設備や機械)は比較的安定して伸びてきた
でも、それを動かす“人”が減ってきてるから、成長率全体が頭打ちになってきてる

「働く人がいない」からこそ…というより、「供給力の総和が落ちている」という構造
ここで重要なのは、「労働人口そのものが減ったから供給力が下がった」っていう話ではないということ
実際、日本の労働人口はこの30年でそこまで劇的に減ってない
高齢者の再雇用や、女性の社会進出、外国人労働者の受け入れなどによって、「働いてる人の数」はむしろ微増している年もある
でもそれでもなお、経済全体としての供給力は伸び悩んでいるんやけど、その理由は以下のような構造にある
・高齢者や非正規の増加により、1人あたりの労働時間が短くなる傾向
→ 就業者数が増えても、全体の労働時間は増えにくいし、生理的に労働力は下がる
・働き方改革による時間規制(残業制限等)
→ 「長時間労働の是正」は必要やけど、短期的には供給力の総量に制約がかかる
・新規就業層における熟練労働・専門職の比率が低く、生産性が上がりにくい構造
→ 特に社会保障・介護など「人手は要るけど生産性が上げづらい」分野の人員が増加中
つまり、「労働人口が減ったから景気が悪い」んじゃなくて、労働力としての質・時間・配置の総和が低下していて、それが供給力全体を押し下げている
働く人はいるけど、作る力としてのエネルギーが薄まってる感じになる
カネを回しても「モノが出てこない」経済に
この状態で、どれだけ政府が予算を増やしても、消費を喚起しても、その需要に応える“供給側”が足りない
→ 結果として、モノが足りずに値段だけが上がる=実質賃金が伸びないという状況になってしまう
これは今の日本で、物価上昇が続いてるのに賃金の実感が乏しい一因でもある
じゃあなぜ日本はここまで供給力が落ちる方向に進んだのか?
その出発点にある“少子化”の原因…
③ 少子化は「経済のため」に起きた
少子化は「経済が停滞したから子どもが減った」と思われがちやけど
ワイはこの因果関係、実は逆なんちゃうかと思ってる
「経済のため」に、少子化が進んだんやないか?と考えてる
・高度成長期の副作用
戦後復興から高度成長へと向かった日本は、世界でも類を見ない速度で経済水準と生活水準を引き上げた
電化製品が家庭に普及して、マイカーを持つ家庭が当たり前になって、大学進学率もどんどん上がっていった
この変化はすごかった
でも、急激な豊かさの拡大は、副作用も生んでしまってて…経済成長に必要だった要素(女性の社会進出、労働集約型の働き方、都市部集中)は、結果的に“少子化が起きやすい社会”を作り出してしまったということ

よく「経済が落ち込んだから少子化が進んだ」と言われるけど
それよりも先に、少子化の土台は「経済成長そのもの」が作ってしまったという方が、むしろ筋が通る気がする
・労働需要の増加で女性の労働参加 → 育児の分担不全
・大都市集中で住宅費・教育費の増大 → 若年層の出産抑制
・共働きが増えて、育児の物理的・心理的コストが上がった
・教育水準の向上が、子育てコストを“贅沢化”させた
・長時間労働・都市化・核家族化が育児環境を悪化させた
これって一つひとつ見ると当たり前のことかもしれんけど
ぜんぶつながってて、経済成長を支えるために、社会構造が“子どもを産みにくくする方向”へと変化していったと見るのが自然やと思う
そして、少子化が供給力を削った
この経済の副作用としての少子化が、30年後に何をもたらすかというと
→労働力の減少、つまり供給力の限界
働く世代が減る
社会保障の支え手が減る
一方で、高齢者への支出は増える
これが、【②】で触れた「日本が供給制約に突き当たった理由」なんよね

→ かつては若者が多かったのに、今や“支える人”がいなくなっていく構造が視覚的にわかる
経済のために、少子化と供給制約が進行した
少子化が経済を壊したというより
経済成長を求めたがゆえに、少子化を内包する社会構造ができあがり、それが30年後の供給力の限界を生んだ
この逆転した因果関係を意識すると、「失われた30年」って単なる“失敗”じゃなくて、成長の副作用やったとも言えるかもしれん
そして、この視点を持つと、次に触れる「社会保障費の増加」もまた、単なる財政の問題やなく、構造の帰結として理解できるようになると思う😙
④ 社会保障費の増加は結果論
「財政が苦しいのは社会保障費が多すぎるから」
「保険料や消費税がどんどん上がって生活が苦しい」
こういう話、頻繁に聞く
たしかに、社会保障費は増えてる
でもワイが言いたいのは、それは“原因”じゃなくて“結果”やということやねん
少子化と供給力の制約が「支え手の不足」を生んだ
これまで見てきたとおり、日本は急速な経済成長の副作用として、少子化と供給制約を内包した社会構造になってしまった
それに加えて、長寿化も進行したことで
支える人(労働者)は減る+支えられる人(高齢者)は増える
この構造が進行することで、社会保障を“支える側”の負担がどんどん増していくというのは、ある意味で不可避の帰結なんよね

財源が足りないから消費税が上がった
保険料が上がってるのは政府が無能だから
こんな感じに単純化したくなる気持ちはわかるけど
実態としてはもっとややこしい
負担の母数が減ってる(働く人が少ない)
給付の対象が増えてる(高齢者が多い)
しかも長寿化して給付期間も長くなる
つまり、これは「増税すれば解決」とか「減税で景気回復させれば解決」っていう単純な話やなくて
社会の構造がねじれてしまった結果として、支出が膨らみ、税・保険料の負担が重くなっているっていう話なんよ
まして「政府のせいだー」といったところで「じゃあ経済成長はほどほどで良かったの?」って話にもなってくる
持続可能な労働力の維持を追求すれば経済成長は多少なり緩やかなものになっていたはず
ワイらが今の高度な生活を享受できているのは過去の経済成長があってこそやし、それが同時に少子化による停滞にもつながった
日本社会の持続性よりも個人の自己実現に重きを置けたのは良くも悪くも…といったところやね🙄
おそらくはどの政権だろうと、多産文化を残しながら先進国としての発展を実現することは難しかったんやないかな?
追記:続編
