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#17│桃太郎「鬼が自分の9倍強いうえに9999匹いるんですが」

あらすじ&第1話はこちら


「どえらいことに気づいた。仲間の中に、鬼の間者※かんじゃがおるで」

【間者】かんじゃ
スパイのこと。 


鬼のが間者かんじゃがいる。予想もしない言葉に、一瞬、思考が停止する。
が、すぐに質問した。


「で、誰なんだよ?」
「―――や」


なんだと・・・・・・?
「明日、全員が揃ったときに言うわ。そいつの反応を見たいからな」
 

◇◇◇◇◇◇◇


朝。
全員が囲炉裏に周りに集合した。楽丸の要望に応じ、オバアサンも家事を中断してもらって呼んである。


「楽丸から、みんなに話があるそうだ」


楽丸は、コホン、と咳払いしてから言った。


「単刀直入に言うで。お前裏切り者やろ」

楽丸は前脚で雉彦・・を指した。


雉彦は、一瞬びくっと反応したが、否定しない。ということはやはり・・・・・・


「ワイは今までの戦いを通じて、鬼のにおいを理解した。鬼と戦ったり接触したり、鬼のにおいが多少は身体に残るよ。だが、それもやられて復活すれば、においはなくなる。きっと、鬼との接触はなかったことになるんやろうな」


だから、門番の鬼を倒した時にニオイを嗅いでいたのか。
楽丸が話す間、雉彦は下を向いたままである。


「ところが、雉彦から鬼のニオイがするやないですか。こりゃ、どう考えてもおかしい。鬼と事前に接触してたっちゅう証拠や!雉彦は、鬼の間者や!」


楽丸が口を大きく開けて、まくしたてるように言った。



「たしかに・・・・・・間者がいれば、説明できる。上陸したときに鬼が待ち構えているのは、雉彦が事前に伝えておいた、ということか?」


猿飛が感心したように言う。


「ふざけるな!!」



言うと同時に、立ち上がったのは、オバアサンだ。


「桃太郎たちが必死に戦っているのに、騙しおって!」


掴みかかろうとするオバアサンを身体ごと割り込んで止めに入る。


「待て!何か事情があるかもしれない」


それでもオバアサンは、動くのをやめない。


「本当に間者なら、鬼の情報を知っているかもしれん。オバアサン、聞くだけ聞いてみないか?」


猿飛に説得されると、オバアサンは黙って座った。厳しい目つきで雉彦を睨んでいる。
 
雉彦を半円で囲むようにして、全員が座った。


「みなさんが怒るのは当然です。わたくしは、鬼の間者です」


ちっ、というオバアサンの舌打ちが聞こえた。


「猿飛さんが言うとおり、上陸前、鬼たちに『桃太郎たちが来るぞ』と伝えていました」
「雉彦はん、鬼としゃべれるんか!?」
「鬼の頭領とうりょうは、我々と同じ言葉を話します。頭領に伝えると、奴は手下に鬼の言葉で指示をしていました」


雉彦は、さすがにバツが悪そうだ。


「わたくしは、『木の上で眠る』と言って、夜は別行動をしているでしょう?鬼ヶ島に行く前日は、鬼のところに報告に行っていたのです」
「暗闇の中、鬼ヶ島まで飛んでいけるのか?」


たしかに。
電気などないこの世界、夜はまっくらなのだ。


「我々鳥類は、総じて目がいいんです。夜に見えなくなるのは、鶏以外なものですよ」

 
急に怒りがわいてきた。今までの苦労は、ぜんぶコイツのせいということになるのか?
気が付くと、愛刀”一期一腰”を抜いていた。


「まて!今、わたしたちがやるべきことは雉彦から情報を得ることだ。怒りに流された行動は控えろ」


歯を食いしばり、刀を納めた。


「おのれは、なんでそんなことをすんねん?報酬でももらっとるんか?」


楽丸が噛みつくように聞いた。


「報酬!?とんでもない。鬼どもが、そんなものをくれるはずがありません」


雉彦は急に立ち上がった。


「端的に言いますと、脅しです。『お前の命は助けてやるから、桃太郎を騙すのに協力しろ』と言われています」


ちょ、ちょっと待て。


「なぜ、鬼は桃太郎の命を狙うんだ?」


猿飛が、聞きたいことを聞いてくれた。

「わかりません。わたくしは、ただ命じられただけなんです。鬼の頭領、シュテンドウジに」


「シュテンドウジだと!?」
「シュテンドウジが!?」


オバアサンと猿飛の声が重なる。
初めて聞くその名前の説明を求めた。


「朱色の“朱”に天空の“天”。ドウジは、わらべを表す“童子”です」
「朱天童子・・・・・・オバアサンと猿飛は知っているみたいだな?」


交互に二人を見る。先に猿飛が口を開いた。


「朱天童子といえば、大嶽丸おおたけまる、九尾の孤と並んで“三大妖怪”に数えられる悪党だった・・・やつだ」
「だった、というと・・・・・・?」


継いだのは、オバアサンだ。


「倒された、と言われておる。朱天童子の悪行を見かねた殿様が、百人の精鋭軍を派遣したのじゃ。そこから、悪行はぴたりと止んだんじゃが・・・・・・」
「本当に朱天童子を倒せたかどうかは、わかっていないらしい。なぜなら、帰ってきた者は誰もいないから」


猿飛の説明に、オバアサンが無言でうなずく。


「朱天童子は、倒されたわけではありません。たしかに、その戦いで大きな傷を負いました。が、若い女性を食べることで身体を回復させつつあるのです」


だんだんとわかってきた・・・・・・。
鬼どもが村の娘を要求するのは、朱天童子の養分とするためだったんだ。


朱天童子の鎧が、上半身だけ壊されていたのは、先の戦いが原因だろう。しかし、わからないこともある。


「雉彦。どうして、朱天童子は桃太郎の命を狙うんだ?」

まさに聞こうとしたことを猿飛が質問してくれた。
雉彦は、首を横に振る。


「それはわかりません。ただ、私は命令されただけなんです。『ギフケンというところに桃太郎という奴がいる。そいつのところに忍び込み、情報を流せ』と言われました」
「変な話やなー。なんで朱天童子は桃太郎はんの存在を知ってんねん」


楽丸の眉間には、シワが寄っている。


「雉彦、他にもっと情報はないのか?なぜ狙われるのか、すっげぇ気になるんだが」


立っていた雉彦は、羽を折り畳みながら座った。


「本当に、わからないんです。わたくしみたいな間者には、詳しいことは教えてもらえません」
「信用できへんなー。だいたい、これから雉彦はどっちにつくねん」


楽丸は、ぐいっと顔を近づけた。


「わたくしは、桃太郎さんたちにつきます。鬼に味方しても、どうせ最後には喰われます」
「しかし、言葉だけでは信用できないな」


雉彦は、珍しくニヤリと笑った。


「信用してもらうための、とっておきがあります。鬼たちの弱点・・・・・・を教えましょう」


(つづく)

次の話→
(1月22日投稿)


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