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#07│桃太郎「鬼が自分の9倍強いうえに9999匹いるんですが」

あらすじ&第1話はこちら

猿飛が柱に線を刻む。「正」の文字は、六つになった。復活した回数を数えているのだ。


「三十回目の失敗だな・・・・・・」


鬼討伐の失敗と復活を繰り返して三十回。負けっぱなしだ。
ただ、理解したことも増えた。

・復活する時刻は必ず朝である。
・復活すると、時が二週間前にさかのぼる。
・鬼退治に行かないと、鬼がこちらの島にやってきて大虐殺される。



 
つまり、二週間の間で対策を講じなければならない、ということだ。
囲炉裏を囲み、今後の方針について話し合う。


「上陸するところから、まったく先に進んでいないな・・・・・・」


猿飛は頭を抱えている。
そうなのだ。いつも、『上陸→鬼に囲まれる→全滅』を繰り返してしまう。
というのも、鬼たちはなぜかいつも待ち伏せしており、こちらの態勢が整う前に複数で襲ってくるからだ。
夜襲を仕掛けたこともあったが、普段と変わらず待ち伏せされていて、手も足も出なかった。

せめて、一対一で戦うことができれば・・・・・・。


「鬼たちは、いつも海辺に見張り番を配置しているのでしょうか」


雉彦がつぶやく。


「わからん。見張り番がいるのかもしれないし、鬼が特別な感知能力を持っているのかもしれない」


猿飛が頭を抱えたまま答える。


「鬼ヶ島の先には、何があるんだろう?」


「え?」


三匹は、口をぽかんと開けた。


「鬼ヶ島より先に進んだことがないだろう?その先には何があるか、興味が湧かないか?」


鬼ヶ島への討伐が十回を超えたあたりから、思っていた。このままどっか遠いところに行きたい、と・・・・・・。鬼ヶ島に上陸すると、すぐやられる。いくら希火団子があるからって、やられるのは痛いし怖い。


だから、鬼ヶ島に近づくたびに、「このまま鬼ヶ島をスルーして逃げればいいんじゃない?鬼ヶ島の先には、楽園があるかも」とちょっと思っていたのだ。
 
「すばらしい発想だ!」


猿飛、が前脚で両手を握ってきた。


「そうやでぇ!もしかしたら、新しい仲間がいるのかもしれへん!」
「伝説の武器が見つかるという可能性もありますよ!?」


なんか盛り上がってきた。そうだ、突破口になる何かが見つかるかもしれない。
 


◇◇◇◇◇◇◇◇


善は急げ。
朝食を食べたら出発の準備を進めた。この日は猛暑だ。じっとしているだけで汗が出てくる。オバアサンは人数分の水筒(竹筒でできたもの。一リットルくらいは入るだろうか?)に冷たい川の水を入れてくれた。


支度が完了し、舟に乗り込んだ。舟を漕ぐ力がいつも以上にみなぎることを感じた。


「島があるぞ!」


舟の上で叫んだ。遥か彼方に見える緑の塊を、島だと認識できた。
鬼ヶ島を通り越し、小一時間ほど舟を漕いだ。何もないのでは?と心配になっていただけに、喜びも大きい。


「上陸してみよう」
「えぇ。何か有益なものが見つかるといいんですが」
「頼りがいある仲間でもえぇし、伝説の武器でもえぇ。もしかしたら、ワイの一族がいっぱいいたりしてな」


仲間たちも盛り上がっている。
近づくと、島の概要がつかめた。島のほとんどを森が占めている。わずかに見える海岸には、誰もいない。無人島か?大きさはそれほどでもない。二時間程度ですべて探索できるだろう。


舟を海岸につけ、上陸した。鼻の利く楽丸が先頭に立ち、雉彦は上空から周囲を見回してもらう。


すぐに森に入った。
期待と不安が入り混じる。役に立つ何かがあるのかもしれないが、もしかしたらここにも鬼がいるかもしれない・・・・・・。


雉彦は肩にとまった。森の中では、飛べないからだ。頼りになるのは楽丸の鼻と、自分たちの目だ。楽丸は、時折止まってはクンクンとにおいを嗅ぐ。刀を抜いたままにし、敵襲に備えながら歩いている。


警戒しながらの探索は、精神力を削ぐ。そして、夏という季節は森の中を蒸し風呂と化し、体力を奪う。持参した竹筒の水筒は、早くも空になろうとしていた。


だから、

「向こうに何かある!」


という楽丸の発言は、救いだった。


興奮しながらも警戒を怠らず、ゆっくりとその“何か”に近づく。
その何かは、洞窟だった。


「どうする?入ってみるか?」


猿飛に尋ねた。洞窟の中は真っ暗であるし、懐中電灯などの光源はない。


「行ってみよう」


反対する者はいなかった。
 
「何も見えねぇ」


洞窟の中は真っ暗だった。左手を壁に当てながら進む。“迷路では、壁の右側か左側に手を当てながら進めば絶対に出口にたどり着く”ということを漫画で読んだことがある。
はぁはぁ。息遣いが荒くなっていることに気づく。緊張で喉が渇いて仕方ない。


壁に当てた左手の感触からすると、この洞窟は大きく右に曲がっているようだ。


「止まるんや」


楽丸が声を抑えながら言った。


「この先で、何か変わったにおいがする」
「どんなものだ?」


まさか、鬼か?


「わからへん。ただ、生き物のにおいやない。もっと変わった・・・・・・変わったにおいや」


じゃあ、何があるんだ?森の中は暑かったのに、今は寒気すら感じる。
やがて、明かりが漏れてくるのが見えた。

近づくと、そこには――
 

(つづく)

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