大犬空港物語(10)「青春してる?って娘に言われた日」
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俺の名前は、大谷浩平。
年末年始の繁忙期を6日連続勤務で乗り越え、1月中旬になってから、俺は東京・日本橋の自宅に帰省した。朝、散歩に出ようとした俺の背中に、娘の声が追いかけてきた。
「パパ、わたしも行くよ」
「めずらしいな、一緒に行くか」
風が冷たい。ピリピリするような、頬を切るような、強く、冷たい、乾燥した東京の風。並び立つビルが、よく晴れた青空をいくつもの縦のラインに切り分けていた。
娘はマフラーを軽く首に巻き直し、前を向いたまま「寒いね」と言った。
日本橋の欄干越しに隅田川の水面が光る。並木の向こうに皇居の石垣が見える。
「どうなの?秋田は。楽しい?」
「楽しい」
即座に答えた。娘が少し驚いて、意外そうに俺の目を見る。
ほんとうだよ。ほんとうに、楽しいんだよ。
やりたいことが、たくさんあるんだ。
秋田犬をもっと多くの人に知ってほしい。
景色のすばらしさを、人の温かさを、食べもののおいしさを。
空港の利用者を増やす。外国人にも喜んでもらえるはずだ。
人の役に立ちたい。誰かに喜んでもらいたい——それは、俺の本能なんだ。
地元高校を甲子園に連れていきたい。監督になって、本気で。
NHKで、俺たちの空港を紹介してもらおうぜ。
「noteに書くよ。俺の仕事が、どんなに楽しいか、どれだけワクワクしてるか。言葉じゃ全部は伝えきれないけど。たまにでいいから、読んでくれるかな」
「えー、なんか青春してる? キモいんですけど。……うそうそ。パパ、変わったよね。なんだろう、一緒に歩きたいパパになった」
俺は笑った。
——たぶん、俺はここから、もっと変わっていく。
俺の名前は、大谷浩平。
大犬空港株式会社 取締役 大谷浩平。
作者のひとりごと
ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。
「連載小説|大犬空港物語」シーズン1は、今回で最終回となります。
大犬(おおいぬ)空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。そして私の“本業”は、そのモデルとなっている空港のファンクラブ会員を増やすこと。この小説を通して、少しでもこの地域や空港に親しみを感じていただけたら、うれしいです。
続編となるシーズン2は、ただいま執筆中です。出向2年目の大谷浩平を描く予定ですので、これからも楽しみにしていただけたら幸いです。
それでは、また次の物語でお会いしましょう。
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