大犬空港物語(15)「ニワトリが先か、卵が先か」
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俺の名前は、大谷浩平。
あれからずっと、二次アクセスのことを考えている。
たとえば、十和田湖。昔を知る人は「ずいぶん寂れた」と言うけれど、
実際に行ってみれば、湖は青く澄んだ水をたたえ、湖畔の道には木洩れ日がつくる光が静かに落ちている。見渡すかぎり、静かで、美しい青と緑。
呼吸するたびに、心の奥がゆるやかに癒されていく。紅葉の頃はなおさら。
交通手段さえあれば、観光地として必ず復活すると思う。
そして、弘前市。隣県だが、距離は近い。大犬空港から、車で約70分。いまはバスで最寄り駅まで行き、JRに乗り換えなくてはならない。
出向者会議で元上司から言われたこともあるし、整備士の小島(※season1 第7話参照)からも、弘前へ向かうビジネス客が多いと聞いていた。
直行できる二次交通があれば、空港の利用者も必ず伸びるはずなんだ。
現状は、お客さんがいないから、アクセスがない。アクセスがないから、お客さんが来ない。お客さんが来ないから、アクセスが作れない。
「あぁぁ~、ニワトリが先か、卵が先かって話だよな、これは」
思わず頭を抱えた俺に、竹野内さんが反応した。
「あ、わたし、その答え知ってます。」
「なんだ、知ってるなら教えてくださいよ。」
「ずばり、『たまご』で・す・よ」
「だって、卵はニワトリから生まれるでしょう、ニワトリがいないと卵も生まれない……」
「ち が い ま す」
竹野内さんは、短く、きっぱりと言い切った。
「たまごを産むのは、カラスでも、キジでも、スズメでも、ダチョウでもいいんです。大事なのは、それが『にわとりが生まれる卵』であることだけ。だから、たまごが先です。」
「なーるーほーどー。いや、むかつくなぁ、そのドヤ顔。いま『わたし、いいこと言った』って顔してますよ。なんかむかつく」
「うち、実家が牧場で。酪農なんですけどね。知ってます?ホルスタインのお母さんから、黒毛和牛の子が生まれるんですよ。」
「なになに?なんの話?もう1回言ってください」
「黒毛和牛の受精卵を買って、ホルスタインに移植するんです。すると、100%黒毛の遺伝子を持った子牛が、ホルスタインから生まれるんです。」
「なんの話でしたっけ?」
「さあ、大谷取締役が、『ニワトリが先か、卵が先か』っておっしゃるから」
「なんでその話になったのかなぁ」
「さあ」
作者のひとりごと
ひよこが生まれるためには、たまごを温める「だれか」も必要ですね。
リスでも、ウサギでも、太陽でも、人間でもいいので。
大犬(おおいぬ)空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。そして私の“本業”は、そのモデルとなった空港のファンクラブ会員を増やすこと。今日もみなさんの温かさが、わたしたちの支えです。
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