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映画シナリオ「真下に落ちる流れ星」(2/3)

(1/3からのつづきです。
美女転校生凪に一目ぼれした、陰キャ天文部の聡。
凪はクラスのボス野々宮と付き合うことで、ほかの男からの誘いを断る処世術を心得ていた。しかし野々宮の元カノ祥子が、凪を密かにいじめだす。
それを知った聡は、盟友の谷とともに彼女を救う作戦を……?)


〇歩道橋

   グリーンのエアーマットを持ってくる
   聡と谷。歩道橋の階段下に設置。
   グリーンのじゅうたんを、階段に設置。
   小さなカメラをいくつかセットする。
   メインカメラを三脚にセットし、エア
   マット脇に置く。
   ×   ×   ×
   回想、天文部。
聡  「カメラの電波の距離は短い。バッテ
 リーが貧弱でな。お前は通行人のふりをし
 てカバンの中に受信側のPCを入れとくん
 だ。カメラは最悪壊されても、PCに動画
 は保存される。幸い、隣のクラスのお前は、
 面が割れてない」
谷  「お……おう」
聡  「恩に着る。ラーメンおごるぞ」
谷  「チャーシューメン味玉ニンニクマシ
 でな」
聡  「全部入り餃子セット、チャーハンも
 だ」
  ×   ×   ×
   知らずに歩道橋を渡る祥子。
   後ろからつける聡。
   下のカメラ脇には、カバンにPCを入
   れた谷。
   何も知らずスマホを見ながら歩道橋を
   歩く祥子。下り階段の前。
祥子 「?」
   グリーンの仕掛けに気づく。
   聡、後ろからドンと突き落とし、逃げ
   る。
祥子 「ぎゃあああああ!」
   グリーンの階段を転げ落ち、エアマッ
   トに顔面から着地する祥子。
祥子 「???」
   顔を上げる。谷と目が合う。
   蛇に睨まれた蛙のように、谷は固まる。
   カメラに気づく祥子。
祥子 「何これ! ドッキリ? いたずら?」
   カメラを蹴り倒す祥子。
   通行人のふりをしながら、その場から
   去る谷。

〇聡の部屋、夜

   動画からグリーンでマスクを切り、転
   げ落ちる祥子だけを抜き出す聡。
   動画に写っている、逃げる自分。これ
   を誰も写っていない歩道橋(空舞台)
   で消す。
   最後に歩道橋全体の空舞台に、転げ落
   ちる祥子を乗せて合成。
   下手コラだけど、「祥子は歩道橋を転
   げ落ちるが、無傷で、立ち上がりざま
   キッと見る(本当は谷を見てるだけ)」
   動画が出来上がる
聡  「……うむ」

〇翌朝、通学路

   道行く生徒が、祥子を見る。
女生徒「あー! あの人!」
   などの声も漏れ聞こえる。
祥子 「……?」

〇同、教室

ユウ 「来た! アクション女優!」
祥子 「は?」
トキヤ「お前斬新すぎんだろ! アレ、マジ
 でやったの?」
祥子 「何が?」
マリ 「再生数パネエよ!」
祥子 「は?」
   スマホで動画を見せてくれる。
   「JCアクション女優爆誕」とあり、
   歩道橋を転げ落ちて無傷で立ち上がる
   祥子が。
祥子 「え……あ……?」
   フラッシュ。小型カメラ。
野々宮「お前スゲエスキル持ってんな! 知
 らなかったよJCユーチューバーとは!」
祥子 「あ……うん……」
   無傷で転がる祥子の動画。
   再生数はどんどん伸びていく。

〇動画第二弾

   同じ転げて起きる祥子が、今度は「火
   山で転がって起きる動画」として再合
   成され、拡散。

〇動画第三、四、五弾

   砂丘を転がる、南極の氷を転がる、サ
   ーフィンのように巨大な波を転がる、
   と、次々と合成されていく。

〇朝、教室

   注目を浴びる祥子。

〇朝、通学路

女の後輩「あの、いつも動画見てます! チ
 ョーカッコいいです!」
   恥ずかしがって逃げていく後輩。
祥子 「……なにこれ?」

〇動画第六弾「アクション女優の素顔」

   隠し撮りされた祥子の日常の映像。
   しかしめっちゃ綺麗に加工してある。

〇朝、通学路

女の後輩「センパイ、好きです!」
男の後輩「俺と付き合ってください!」
祥子 「……なんなのこれ!」

〇動画第七弾「JCアクション女優と上履き」

   下駄箱を開ける祥子の盗み撮り。
   大量の上履きがあり得ないほど出てく
   る(クソコラ合成)。
   歩いている祥子の盗み撮り。上履き 
   (合成)たちが一緒に列をなして歩く、
   シュール映像。
   笑って誰かの肩を叩くシーンなのに、
   上履きが襲って叩き落とすようなアク
   ションシーンになっている。

〇朝、下駄箱

   スマホでその動画を見る祥子。
祥子 「あいつしかいないよね、上履きを知
 ってるの。……偶然?」

〇休み時間、教室

   イケメンの鷺宮(15)がやってくる。
鷺宮 「ここに祥子さんっている?」
   女子たちがキャーキャーいう。
鷺宮 「ちょっと話してみたいんだけど」
ナルミ「祥子、行きなよ、鷺宮くんだよ!」
祥子 「……」
   廊下に出て話す二人。
   壁ドンされる。
   女子たちキャーキャーいう。

〇翌朝、下駄箱

凪  「……」
   上履きは何もされていない。
   周囲を見渡す凪。とくに誰もいない。

〇放課後、天文部部室

   大爆笑する聡と谷、ハイタッチ。
聡  「谷にも見せてやりたかったわ! 遠
 藤、メスの顔になってんの!」
谷  「斬新すぎる復讐だろ! 普通傷めつ
 けるとか脅迫するだろ! 何アクションヒ
 ーローに仕立て上げてんだよ!」
聡  「だから俺が真のヒーローなんだよ! 
 憎しみは何も生まない。復讐の螺旋に巻き
 込まず、その螺旋からいち早く抜けさせる。
 これぞ成仏」
谷  「途中から仏教入ってんじゃねえか」
聡  「南ー無ー(合掌)」

〇カフェ

   みんな喋っている中、凪は一人離れて
   本を読んでいる。
野々宮「祥子、来ないの?」
マリ 「こっちよりいい男の所」
ユウ 「言うね」
トキヤ「(スマホを見せて)〇〇中のやつらが
 『遊ぼう』って」
ユウ 「またカワイイ子連れて来いって返せ
 よ」
ナルミ「イケメンもよろしく」
トキヤ「(スマホに着信)え、マジか。JK来
 れるってさ」
野々宮「年上。いいじゃん」
ナルミ「年上のイケメンは?」
ユウ 「こっちは美人の新人入ったって言っ
 とかないとな」
凪  「……」
   横目でそれを見ている。

〇(日替わり)放課後、天文部部室

聡  「ていうか、何で急に入部希望者増え
 たの?」
   部室に入りきらない生徒たち。
谷  「……ウチが夏休みに合宿やるって漏
 れたんでしょ」
聡  「?」
谷  「下原さんと旅行行けるチャンス」
聡  「……不埒な。なんと不埒な」
   おおおと声を上げて、道を開ける入部
   希望者たち。凪が立っている。
凪  「……?」
   ×   ×   ×
聡  「えー、明後日から夏休みですが、ウ
 チの合宿は毎年野辺山高原で、ペルセウス
 座流星群を観測します!」
   拍手するみんな。
聡  「谷、世界三大流星群は」
谷  「ペルセウス座流星群、双子座流星群、
 しぶんぎ座流星群」
聡  「その極大期、つまりピークの日は」
谷  「8月12日、12月14日、1月3
 日」
聡  「その8月12日俺たちは野辺山高原
 だ!」
   ウエーイと盛り上がるみんな。
谷  「ちなみに俺の誕生日な!」
   みな、しんとなる。
谷  「……あれ、滑った?」
   凪、小さく手を挙げる。
凪  「あ、それでいうと」
   みんな注目。
凪  「私の誕生日と一日違い。……1月3
 日のしぶんぎ座流星群と」
みんな「おしい!」
   などと盛り上がる。
聡  「1月4日?」
   凪、うなづく。
聡  「じゃあビンゴだ! 1月3日の夜か
 ら4日朝にかけてがピークだし、つまり、
 年齢が変わる瞬間、流星群が祝福してくれ
 るぞ!」
みんな「おおおおお」
谷  「いや、俺もなんだけど」
聡  「なんで流星群は毎年同じ日に見える
 か分る?」
   凪、手を挙げる。
凪  「季節と関係あります?」
聡  「いいね! 地球はぐるぐる太陽の周
 りを回ってるよね? 軌道上の同じ場所に、
 流星のモトがあるんだ。チリとか氷の集団
 だね。毎年ここに地球が突っ込む。引力に
 引かれた奴から順番に流星になる」
凪  「ペルセウス座……からやって来たチ
 リ?」
   天井には天球図。
聡  「惜しい! 地球から見て単にペルセ
 ウス座方向から来るだけだね。これに関し
 ては、スイフトタットル彗星がまき散らし
 犯人って分ってる。周期が133年、その
 通過あとに、宇宙船地球号が突っ込むのさ」
凪  「へえ……」
みんな「へえ……」

〇夏の風景、電車が走る

T  「八月」

〇山の中、深夜、ペルセウス座流星群

   凪の周りは新入部員たちが固めて、聡
   の入る余地がない。
   聡は不満そうに、自作観測マシンを組
   み立てる。デジカメの下に回転台がつ
   いていて、ノートPCに接続されてい
   る。方角を見て、カメラをセット。
聡  「一時間露光、30分露光、10分露
 光、3分露光とテストしたいんだよね」
谷  「……残念だったな。姫と喋れなくて」
聡  「……別に」
   空に流れ星が流れるたびに、皆わーき
   ゃー言う。
聡  「そんなんで朝まで持つかよ、素人が」

〇帰りの電車、内

   全員寝ている。
   ノートPCを抱え込んで寝ていた聡、
   ふと目覚める。
   隣のボックス席の凪と目が合う。
   二人以外、全員寝ている。
   凪は黒いカバーの本を読んでいた。
聡  「……」
凪  「……」
聡  「なんか、全然喋れてないね」
凪  「うん」
聡  「野々宮たちと、うまく行ってる?」
凪  「……多分。時々、遊ぶ」
聡  「なにして?」
凪  「……」
聡  「?」
凪  「いろいろ」
   聡、ノートPCの、出来上がった写真
   を見せる。
凪  「こんな風に写るんだ」
聡  「(窓の外を見て)今は太陽の光で見
 えないだけで、こうしてる間にも流れ星は
 降り続けてる」
凪  「……そんな風に考えたことなかった」
聡  「大人の言うことってすぐにひっくり
 返るじゃん。だから、絶対正しいことを知
 りたい」
凪  「……なんか、分る」

〇教室、授業中

T  「九月」
   凪、休んでいる。
聡  「……」

〇夕方、凪のアパートの前

聡  「(独り言)やあ。なんか最近見なく
 て、心配でさ」
聡  「(独り言)プリント、持ってきた。
 ノートのコピーも」
聡  「(独り言)夏合宿の写真、見る?」
   中で母親(千代子)と喧嘩している凪
   の声。扉が開く。
千代子(40)「待ちなさい! 凪!」
   凪は涙目で、真っ赤。
凪  「……」
聡  「あ……プリント」
凪  「……ありがと」
   ポストに入れて、走り去る。
聡  「(独り言)お前、ナイトだろ」
   彼女を追いかける。

〇夕方、土手

   二人は所在なげに座っている。
凪  「ごめん、変なところ見せちゃって」
聡  「いや、やっぱお父さんとお母さんが
 仲悪いのはショックだよな。家庭環境って
 やつ? このままじゃ娘が不良になってし
 まうよな」
凪  「もう……なってたりして」
聡  「なってるの?」
凪  「(曖昧なほほ笑み)……あのさ」
聡  「何?」
凪  「やっぱいいや」
聡  「何?」
凪  「星の話、して」
聡  「……どの星の?」
凪  「なんでもいいから」
聡  「え、……じゃ、宮沢賢治も大好きだ
 ったオリオン座の、ベテルギウスの話」
凪  「それ」
   必死で話す聡。
   ただ笑って聞いている凪。

〇夜、凪のアパートの前

凪  「ありがとう。現実に向き合う勇気、
 出た」
聡  「完璧美人に見える下原でも、勇気出
 ないことあるんだ」
凪  「……みんな顔の話ばかりする。たか
 がツラ一枚のことなのに」
聡  「あ、えっ、ごめん気にしてたんだ」
凪  「私がこの顔じゃなかったら、違う人
 生だったのに」
聡  「え。……どういうこと?」
凪  「ごめん。忘れて。今日はありがと」
   扉を開けて、中に入る。

〇(日替わり)放課後、天文部部室

   聡と谷の二人の天文部に戻った。
谷  「……なんか、元に戻ったな」
   聡、窓の外を見る。
   窓の外に、野々宮グループたちがどこ
   かへ出かけるところ。
   凪は野々宮と話しているが、表情が暗
   い。
   聡、胸騒ぎがして、カバンにPCを入
   れる。
聡  「今日は帰るわ」
   一方、地上の凪。
   天文部部室を見る。
   窓には誰もいない。

〇ラブホテル、前、夕方

   凪、野々宮、マリ、トキヤ。
   高校生の男女。
高校生男「(凪を見て)写真よりかわいい」
凪  「……」
野々宮「やっぱ美人とイケメンが集まって楽
 しくやらないとね!」
高校生女「こっち2人で、特にカップルじゃ
 ないけどいい?」
野々宮「勿論! 今日は6人で遊びましょう」
   笑うマリ。隣の凪。
高校生女「最近のJCマジやべえな」
高校生男「お前も中学生と3P狙いで来たく
 せに」
   それを物陰から観察している聡。デジ
   カメで彼らにズームするが、何を言っ
   てるかまでは聞こえていない。
   指の動きを見てアフレコする。
聡  「(独り言)好物はスイカです」
聡  「(独り言)マジ2個一気食いできる
 ね」
聡  「(独り言)俺は6個だ」
聡  「……なわけ、ねえよな」
   高校生男、凪の腕をひっぱり、強引に
   連れ込もうとする。
凪  「嫌」
野々宮「優しくしてあげてくださいよ。怖が
 られちゃ、楽しくないでしょ」
高校生男「そりゃそうだ。ごめん、6Pとか
 初めてでさ。緊張するわ」
   6人、ホテルに入っていく。
   フラッシュ。凪の口元のアップ。
聡  「いや。……『いや』、だよな」
   聡、考える。必死で考える。
   ラブホテルの入り口にダッシュ。
   外から見えるパネル。二人用、大部屋
   などが見える。大部屋はひとつランプ
   が消えている。
聡  「ハア……ハア……ハア……(肩で息
 をする。考える)」
   フラッシュ。凪の「いや」という口。
   聡、ダッシュ。

〇ラブホテル、大部屋

   凪、制服のまま高校生男に組み敷かれ
   る。
高校生男「ねえ、どこがいいの? 彼氏に見
 られながらが好きだって?」
   既に周りは、大きなベッドの上で、脱
   いだりまさぐりあったりしている。
凪  「……」
   諦めて体の力を抜く凪。
高校生男「動画撮ってもいいんだよね?」
マリ 「私のスマホ限定、三分まで、顔写っ
 てたら消すルール。クラウドに上げたら児
 ポバレるから、ローカル保存で」
   次第に、女たちの喘ぎが部屋を満たし
   ていく。
   凪、天井を眺める。
   宇宙の柄の壁紙。
凪  「……いや」
高校生男「何?」
凪  「……いや。いや!」
高校生男「え、ここにきてダメなの?」
凪  「(首を振る)」
高校生男「もうやってるんだから、認めたっ
 てことでしょ?」
凪  「……(首を振る)」
高校生男「そういうプレイなの?」
   ブラウスを脱がせる。
凪  「(宇宙を見ながら暴れる)」
   と、火災報知器が鳴り響く。
みんな「え? 何? びっくりした!」
   凪、その隙に男を蹴飛ばし、逃げる。

〇同、裏口、夜

   裏口でボヤが起こっている。
聡  「あ、こっちです!」
   警官、消防士たちを誘導する聡。
   彼らが消火を始めたら、ポケットの中
   の百円ライターの指紋を拭き、どこか
   の家の庭に捨てる。
   ラブホテルの利用客が非常口から出て
   くる。
   その中に、ブラウスを羽織った凪。
   ボヤの火に照らされた顔。泣いている。
聡  「あ」
凪  「……何で、いるの?」
聡  「……」
   凪の手を取り、その場から走って逃げ
   る。
   煙に巻かれて出てきた野々宮たち。
野々宮「あー……なんか、潮時かな……」

〇夜、土手

   二人、座ったまま無言。
凪  「……家、帰んなきゃ。不良娘は」
聡  「……なんかあったんだろうけど、聞
 かないし、誰にも言わないし」
凪  「……うん」
   凪、立つ。
凪  「高野。……私を殴って」
聡  「え?」
凪  「私のこの顔が悪いのよ。ボコボコに
 して。変な顔にして。ニヤニヤされない顔
 にして」
聡  「え」
   聡、立つ。
聡  「……」
   平手で頬をぺしり。
凪  「男でしょ? 男の力でやってよ!」
   聡、平手でぺしり。
凪  「誰かに所属しない生き方が、できる
 ようになりたい」
聡  「……」
   聡、平手で張る。
凪  「グーで来て!」
   ポコッと殴る。
凪  「足りないよ! 全然足りない!」
   ポコッ、ポコッと殴る。
凪  「本気でやってんの?」
聡  「……」
   決意して、一発デカイのを。
   鼻血が出てくる凪。
凪  「いい! いいよ! もっと! もっ
 と!」
   聡、殴る。凪、泣いている。
   聡、訳も分らず殴る。
   凪の血と涙は混じってゆく。悲しさと
   笑みも混じってゆく。

〇授業中、教室

   凪は休み。
   聡はずっと机を見ている。
T  「十一月」

〇放課後、天文部部室

谷  「あー、なんで下原さん来ねーんだよ
 ー。やっぱ美人がいねーとつまんねーよな
 ー。聞いてる?」
聡  「……知らねーよ」
   がらりと開く扉。
   野々宮が立っている。
野々宮「ちょっと今話せる?」
聡  「……」
野々宮「俺、凪と別れることにしたんだわ」
聡  「は?」

〇校舎裏

野々宮「凪に言うの止められてたんだけど、
 アイツんち、引っ越すって」
聡  「え」
野々宮「あそこの両親仲悪くて、離婚するん
 だってさ」
聡  「……は?」
   回想。母と喧嘩して、扉から出てきた
   凪の涙目。
野々宮「で、別れるわ。東京の方戻るらしい
 し」
聡  「え? 何、その程度な感じ?」
野々宮「何が」
聡  「愛とか……あるじゃん」
野々宮「あるけど、そんなもんだろ恋愛なん
 て」
聡  「そんなもん?(納得いかない)」
野々宮「わざわざ言いに来たのはさ、覚えて
 んだろコレ」
   画鋲を出す。
聡  「……」
野々宮「仕返ししていいよ。それでチャラに
 してえんだ」
聡  「……」
   手のひらの上に乗せられた画鋲。
   針は下向き。
   フラッシュ。凪を高校生に紹介してい
   た野々宮。
   バンと手のひらを叩きつける聡。
野々宮「……!」
聡  「チャラだな?」
野々宮「……おう」
聡  「教えてくれて感謝する。いつ引っ越
 すの?」
野々宮「年明けたらすぐだって」
聡  「……」
   いても立ってもいられず、走り出す。

〇夕、凪のアパートの前

聡  「下原! 下原! 下原凪! 俺! 
 高野聡!」
   窓に叫ぶ聡。
   凪が顔を出す。
   聡、最初に計算していた真っ黒なノー
   トを見せる。凪、窓を開ける。
聡  「あ、顔、変形するほどじゃなかった
 ね!」
凪  「(笑う)高野が意気地なしだったか
 らね」
聡  「……」
凪  「……」
聡  「……引っ越しのこと、聞いたよ」
凪  「親と喧嘩してさ。不良と付き合うな
 ら閉じ込めるぞって。丁度よかった。外に
 出たら、私ダメになる」
聡  「本読めるチャンスじゃん」
凪  「……そうだね」
   聡、ノートを見せる。
聡  「この計算、覚えてる? 手計算だか
 ら合ってるか分んないけど、つまりこれは、
 今年が当たり年だってこと!」
凪  「なんの話?」
聡  「しぶんぎ座流星群!」
凪  「……」
聡  「日付が変わった誕生日、ここに迎え
 に来る。一緒に見に行こうぜ。流星群の写
 真を撮ってプレゼントする。みんなが寝静
 まったあと、その部屋を抜け出すんだ」
凪  「(うなづく)」
聡  「スゲー寒いから防寒具マシマシで!」
凪  「(うなづく)」

〇夜、聡の部屋

   すごい手計算をしている聡。
   ノートPCでも数値計算プログラムが
   走っている。


(3/3につづきます。
聡と凪の秘密の天体観測。しぶんぎ座流星群を見る夜の始まり。)
https://note.com/oooka_/n/n2a9c5a12c9a0


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