映画シナリオ「限界タクシー~首落村奇譚」(2/4)
(1/4からのつづきです。
霧に包まれた老人だらけの限界集落、窪内村。
住人たちの足代わりのタクシー運転手白井のもとに、
東京から女刑事勝村がやってきた。
25年前の村長の死は事故ではなく殺人の疑いがあると。
死体の左手には、無数のキリのようなもので刺し傷があった。
時効まであと18日……)
〇松風荘、トミナガの部屋
トミナガ、カメラに向かって。
トミナガ「ハイ大人気YouTuberトミナガの、
『限界暮らし』! こないだの事件! 犯
人の(ピー)夫婦、葉っぱ育てながら、別
の葉っぱを育ててたって! マジ限界!」
〇村の入口、大鳥居跡
に現れた女子高生メイ(18)。
メイ 「あー! マジヤバイ! これ! 絶
対これ!」
スマホの画面と、大鳥居跡を見比べる。
メイ 「マジ限界!(ポーズを取る)」
画面の中のトミナガのチャンネル。
トミナガの後ろに映る村の入口。
〇松風荘の前
メイ 「えっ! マ? マ? マ? ここじ
ゃん! ここ! ここ! 聖地! 聖地こ
こ! マジ死ぬ! 尊い! 尊すぎて死ぬ
! ぎゃーーーー!」
〇松風荘内、トミナガの部屋
トミナガ「(外の物音を聞いて)ん? 何、
また限界事件? ちょっと外見てみる
よ?」
〇松風荘の前
ガラリと窓を開けるトミナガ。
メイ 「ぎゃーーー! 本人! 本人! 神
! 神様! 会えた! ほんとに会え
た!」
トミナガ「……誰?」
〇松風荘内、トミナガの部屋、夕
棚の上のドングリや流木を見ながら。
メイ 「これ食べれなかったドングリの回の
やつで、これ滝壺で拾った流木かあ。懐か
しいわー。あのときトミナガさん金髪だっ
たんすよねー!」
トミナガ「あのさ……晩飯どうする? 食べ
てく?」
メイ 「マジすか! 私作りますよ! 材料
も買って来たんで!」
トミナガ「は?」
メイ 「私、家出してきたんです! 出来れ
ば泊めて欲しいんですが……」
トミナガ「え、なに、泊めたらヤっちゃうか
もよ」
メイ 「そのつもりで来ました!」
〇同、夜
セックスするトミナガとメイ。
〇松風荘内、ひきこもりのキムラの部屋
メイの喘ぎ声がうるさい。
キムラ、ヘッドホンをしてPCに集中。
〇同、ひきこもりのモリノの部屋
壁に耳を当てて興奮しているモリノ。
〇同、ひきこもりのオダの部屋
コップを当てて、コップありなしで効
果を確かめながら喘ぎ声を聞くオダ。
〇翌朝、松風荘内、共同キッチン
朝ごはんを甲斐甲斐しくつくっている
メイ。
メイ 「ダーリン、卵2個でいい?」
トミナガ「あ……ありがと」
メイ 「うふふ」
と、ひきこもり達が顔を出す。
キムラ「……おはようございます。あ、運び
ます」
メイ 「ありがとう! えっとお名前……」
キムラ「キムラです」
モリノ「あ、モリノです(別の何かを運ぶ)」
オダ 「オダっす(調味料をテーブルに)」
メイ 「こんな感じなんですね! 松風荘の
共同生活って!」
トミナガ「……いや、朝にこんな人いるの初
めてだけど」
キムラ、モリノ、オダ、全員笑顔でメ
イにアピールしている。
〇走るタクシーの車内
タイトル【時効まで、あと15日】
橋上から話を聞く勝村。
勝村 「お話は以上です。ありがとうござい
ました」
橋上 「……」
勝村 「あ、あとひとついいですか?」
橋上 「なんでしょう」
勝村 「亡くなった明神村長は、恨まれてい
たと聞きます」
橋上 「公然の事実のようなものよ」
勝村 「橋上さんも……恨んでましたか?」
橋上 「私は別に。ただ強欲で、偉そうな態
度で、村長で神主で、そして愚かだったわ。
この小さな村の権力者で王様。……きっと、
裸の王様だったんでしょう」
勝村 「具体的なエピソードとかあります?
その、恨みの」
橋上 「殺し文句は『水を止めるぞ』でした
ね」
勝村 「水?」
橋上 「農家にとって水は命でしょう? そ
それを止めるって脅すのよ」
勝村 「止められるんですか?」
橋上 「村長は、村の水門を開け閉めする権
利があるの」
勝村 「(メモを取る)」
〇小さな水門の前
棚田が眼下に広がっている。
水門のハンドルをいじってみる白井と
勝村。
白井 「手で開け閉めできそうですけど」
勝村 「物理的に水を止めるんじゃなくて、
たとえば村八分にすることを『水を止める』
みたいに言ってたのかも」
白井 「なるほど」
向こうに紅い椿が咲いている。
勝村 「椿!」
白井 「早咲きのがたまにあります。冬はこ
の辺は満開ですね」
勝村 「へえ」
白井 「ここは窪内村といいますが、元々は、
首落ち村と呼ばれていたそうです」
勝村 「くび……おち?」
白井 「椿は首ごとポトリと落ちるので、不
吉とされましたからね」
× × ×
回想。タクシーの中の保坂。
保坂 「この村は、もともと平地で生きられ
ない弱いやつらが山に逃げ込んでつくった
村よ。廃れていくのも当然よね。でも昔、
落武者の首を狩ってたらしいわよ。だから
首落ち村。椿の下には首なし死体が埋まっ
てて、その恨みで血の色になって、花が首
ごと落ちるそうよ」
× × ×
タイミングよく、椿が首ごと落ちる。
ビビる勝村。
〇下田の家、庭
下田 「見てくださいよ。ニラ農家の土地に
スイセン生やすわけないでしょうに。見た
ら引っこ抜きますよ」
下田の案内で、スイセンがないかを確
認した勝村、白井。
下田 「まったく、お客様にひどいことをす
る人がいたもんだわ」
勝村 「『この件に触れるな』って誰かの警
告かな、なんて思ってます」
下田 「そんなことありませんよ。私だって
こうして捜査協力してますし」
勝村 「あ、……では、その件でひとつ」
下田 「?」
勝村 「村長はキリのようなもので、手を無
数に刺されていました」
下田 「はい。聞きました」
勝村 「ところが左手のほうが傷が多かった
んです。心当たりあります?」
下田 「(首をかしげる)……なぜでしょう」
勝村 「……ありがとうございました。以上
です」
〇走るタクシーの車内
勝村 「私の勘ですが、容疑者は三人います」
白井 「えっ、もう犯人分ったんですか」
勝村 「犯人じゃないですよ。あくまで『怪
しい』だけです」
白井 「その三人とは」
勝村 「下田さん、橋上さん、保坂さん」
白井 「……女性? 私はてっきり男だと思
ってました。どうして?」
勝村 「『左手に傷が多かった理由』を、全
員に尋ねました」
白井 「ああ、はい」
勝村 「村長は左利きだったんです。それは
村の人なら全員知ってたこと。恨まれてい
たことも公然の事実なので、『利き手だか
ら刺されたのでは』と考えるのは当然でし
ょう? ところが、あの三人は」
× × ×
フラッシュ。
下田 「……なぜでしょう」
保坂 「さあ? 自分で刺したんじゃない?
ガハハ」
橋上 「……分りません」
× × ×
勝村 「意図的に隠したか、無意識に避けた
か」
白井 「犯人はもう死んでるか、この村から
引っ越したかも知れません」
勝村 「それも勿論あります。真犯人が『左
利きだから刺されたんだろ』と無邪気なふ
りをしている可能性もあります」
白井 「……確かに」
勝村 「確かなのは、彼女たち三人が、答え
る前に少し間を取ったことですね」
白井 「間?」
勝村 「とっさに考えたんじゃないかしら」
〇赤い橋の上、霧の中
橋上と下田が立ち話をしている。
そこに杖をつきながら、保坂がやって
来る。二人で話している様子を見て、
慌ててやって来る。
保坂 「ちょっとアンタたち、勝手に話始め
ないでよ。何か隠し事するつもりじゃない
でしょうね?」
橋上 「そんな訳ないじゃないの。私たちは
三位一体よ?」
保坂 「そうならいいんだけど」
下田 「隠し事なしでいきましょうよ」
橋上 「では確認を。下手なこと、あの刑事
に喋ってないでしょうね」
保坂 「当然じゃない! あと二週間、何ご
ともなく東京へ帰って貰いましょうよ」
橋上 「白井さんは刑事につくのかしら」
下田 「どっちでもないんじゃないかしら。
中立な立場に見えます」
橋上 「お互い、何も喋ってない、と確認し
ます。よろしい?」
下田 「(うなづく)」
保坂 「勿論」
下田 「じゃあ、誰よ? スイセンの葉なん
かニラに混ぜたの? あんたたちじゃない
でしょうね? 目つけられたらどうするの
よ?」
保坂 「そんな訳ないじゃない」
下田 「私一人を逮捕させて、自分だけ逃げ
ようたってそうはいかないわよ。そしたら
洗いざらい喋るから」
橋上 「下田さん落ち着いて。我々は三位一
体」
下田 「……白井さんは、あんな女の相手、
よくしてるわよ」
保坂 「あの人運転丁寧で信頼できるわよね。
荷物も持ってくれるから好きよ」
橋上 「……あと14日。それまでおとなし
いババアでいること。そうしたら、晴れて
我々はただのババアに戻れる」
保坂 「どっちにしてもババアね」
下田 「ただのババアのほうがましね」
霧の中から農家の人が現れる。
三人とも笑顔になって挨拶する。
〇松風荘、共同キッチン
洗い物をしているメイ。
キムラがのそっと現れる。
キムラ「トミナガさんは?」
メイ 「撮影でかけた。滝壺に魚釣り」
キムラ「メイちゃんさ、YouTubeとかに興味
ある?」
メイ 「え、まああるっちゃああるけど」
キムラ「俺も機材整えてんの。見に来る?」
〇キムラの部屋を廊下から見る
廊下から覗くだけのメイ。
沢山のモノが散乱していて、汚い。
美少女エロ系フィギュアなど、女子が
ドン引きするようなものだらけ。
キムラ「ホラこれ、耳元で囁いているように
録れるマイク。AMSRって知ってるよね。
メイちゃんの声をこれで録ったらエロイよ
ね」
メイ 「ああ……うん、そういうの興味ない
んで」
扉があき、モリノが出てくる。
モリノ「メイちゃん俺のコレクション見る?
アニメと特撮ばっかだけど」
メイ 「あ……それもいいです」
階段を下りると、オダがカメラを構え
ている。
メイ 「え、なんですか、やめてくださいよ」
オダ 「俺盗撮系YouTuber始めたんだよね。
昨日の夜はお楽しみでしたね。ここの壁薄
いからさ。丸聞こえなんだよ。俺ら悶々と
しちゃってさ。協力して盗撮することにし
たの。動画見る?」
メイ 「は? なんの話よ」
オダ 「メイちゃんの喘ぎ声エロすぎんだよ
ね。とくにバックの時」
メイ 「……」
オダ 「今トミナガいないんでしょ? 俺と
やろうよ。俺セックスウマいんだよ」
メイ 「あの、私そういうんじゃないんで。
カメラもやめてください」
オダ 「しゃぶれよ」
オダはズボンを下げる。
メイ、逃げる。
〇森の中
メイ走って逃げる。
追いかける三人。
キムラ「メイちゃん! 待って!」
モリノ「メイちゃん! オダは言い過ぎだよ
!」
オダ 「メイちゃん! メイちゃん!」
メイ、必死で走る。
〇走るタクシーの車内、夜
電話を切った勝村。
勝村 「……白井さん、すいません、村に今
から戻れます?」
白井 「何かあったんですか?」
勝村 「トミナガさんから県警に捜索依頼が
あって、私も人足として手伝ってくれない
かと」
白井 「捜索?」
勝村 「トミナガさんの彼女が戻らないって。
荷物もケータイも置きっぱなしで、松風荘
の住民とトラブルがあったらしくて」
白井 「もし山にいるなら、イノシシが出る
こともあります。知らない道なら滑落の危
険も」
Uターンするタクシー。
〇森の中、夜
懐中電灯片手に探す県警、勝村、白井。
それをカメラで撮るトミナガ。
勝村 「ちょっとアンタ本気で探す気ある
の? 何カメラで撮ってんのよ!」
トミナガ「これ、暗視カメラ付いてるんス」
勝村 「あ……知らなくて、ごめんなさい。
何かあったら声で知らせて」
トミナガ「ウス」
警官の声「いたぞー! 生存ー!」
振り返る一同。
〇神社の祠、夜
祠の中で、隠れるように眠っていたメ
イ、まだ寝ぼけている。
メイ 「ん? あれ? 何?」
トミナガ「メイ! 家出なんかしてんじゃね
えよ!」
メイ 「あ、ダーリン! あれ? ケータイ
忘れてきた?」
× × ×
保護されたメイ、警察に事情を話して
いる。
勝村 「使われていない祠で隠れてるうちに
眠ってしまったって、小学生のかくれんぼ
じゃないんだから」
白井 「とくにここは25年使ってなかった
わけですし」
県警が勢いよく扉を閉めたら、壊れて
しまう。
慌てて蝶つがいをはめようとして懐中
電灯で照らすと……
警官 「おい、なんだこれ?」
もう一人が覗き込み、扉を開ける。
大量のキリが、がらがらと出てくる。
勝村 「キリ……?」
思わず走り寄る。
勝村 「そのまま、触らないで! 鑑識に回
して!」
〇市役所、資料課
過去帳を見る勝村。
昔の地図をコピーする白井。
勝村 「村長死亡当時の村の人口は三千人、
現在は百七十人……」
白井 「勝村さんは、犯人がいるとしたらま
だ村の中に住んでると思います?」
勝村 「分りません。隠れ住むには最適だけ
ど」
勝村に着信。
勝村 「はい。……(落胆する)そうですか。
ありがとうございました」
白井に。
勝村 「鑑識の結果。不特定多数の指紋跡し
か出なかったそうです。血液反応とか出れ
ば、何か情報が増えたはずなんですが」
白井 「……捜査は振出しですか」
勝村 「手がかりは、ゼロじゃないです」
タイトル【時効まで、あと12日】
〇走るタクシーの車内
出口(65)に話を聞く勝村。
出口 「……(挙動不審にきょろきょろと車
内を見渡す)」
勝村 「どうしました?」
出口 「この車、盗聴器とかついてねえよ
な?」
白井 「ドライブレコーダーは音声を切って
あります。記録は、勝村さんだけです」
出口 「……白井さんがそういうなら信用す
るよ。……俺がしゃべったって言わないで
くれよ」
勝村 「勿論です。守秘義務は守ります」
出口 「抜けがけは、『水を抜かれる』からな」
勝村 「それ本当なんですか?」
出口 「実際には見たことねえよ。抜け駆け
さえしなきゃ、みんなで協力するいい村だ
よ」
勝村 「……で、話というのは」
出口 「俺がこの村に来たのは……二十六年
前。つまりこの村ではまだまだ新人さんだ。
この車の中なら、本当のこと言ってもいい
かなって思ったんだ」
勝村 「それは」
出口 「実は俺、見たんだ」
勝村 「……?」
出口 「事件当日の夜。村長の家に入る――
保坂さんを」
勝村 「えっ」
出口 「昔は保坂さんも体型はスリムでね。
でもあの赤い肩掛けは絶対保坂さんだ。橋
の上から、村長の家に入るところを見た。
あの夜は雪がちらついてて、両手の上に椿
の花をこう持ってて……」
× × ×
イメージ。
雪の降る中、赤い椿の花を両手に乗せ、
村長の家に入る保坂(痩せていた)。
× × ×
出口 「村長の愛人、って噂も聞いたぜ」
勝村 「愛人?」
〇赤い橋の上
橋の上から村長の家を見る白井、勝村。
崖の上で、やや遠い距離。
白井 「この橋の上からだと、保坂さん本人
かどうか、顔がわかる距離じゃないですね」
勝村 「……本人でない証拠もないし、別人
である意味も分からないし。村長の愛人だ
ったというのも初耳」
白井 「一人ひとりに聞いて回りますかね?」
勝村 「……(歩き出す)ご本人に、直接聞
いたほうが早いかと」
白井 「保坂さんの買い物の日は、三日後で
す」
勝村 「重要参考人が浮上したのよ? 直接
伺いましょう」
〇保坂の家
保坂 「どうもお。悪いわねウチまでわざわ
ざ。行ってくれれば出向くわよお、って言
いたいけど、これ(杖)じゃあねえ。今お
茶淹れるわねえ」
歩きにくそうにしながら台所の戸棚を
開ける。
勝村 「いえ、あの、お構いなく。手伝いま
しょうか」
保坂 「いいわよう。次いつお客さんが来る
か分からないから、取って置きの湯呑みだ
すわね」
高そうな湯呑みに茶を淹れる保坂。
× × ×
保坂 「(茶を飲んで)おいしいでしょ?」
白井 「これ、いつものスーパーですか?」
保坂 「産地、見てる?」
白井 「どういうことです?」
保坂 「このお茶、長野産の茶葉と、静岡産
の茶葉の時があるの。静岡産のやつを私は
狙って買っておいてあるわけ」
白井 「知りませんでした」
保坂 「ガハハ。ババアの知恵よ」
勝村 「……(黙って茶をすする)」
保坂 「東京のお口には合わないかしら?」
勝村 「……本題を話します。25年前の事
故。当日の夜、保坂さんが村長の家に入る
のを見たという証言がありました」
保坂 「……誰よ、そんなデマ流すの」
勝村 「デマかも知れませんし、本当かも知
れません。また保坂さんと村長は、個人的
な関係があったとも」
保坂 「ハア? ババアとジジイで何するっ
てのよ! 変な目で見ないでよね! 私あ
の村長嫌いだったんだから! 虫唾が走る
!」
勝村 「彼の両手は、キリのようなもので、
大量の穴が開けられていました」
保坂 「何度も聞いた話よ。何故だか左手の
ほうが多かったんでしょ?」
白井 「……(保坂と勝村を交互に見る)」
勝村 「神社から出た大量のキリは、何に使
われていたんでしょう?」
保坂 「昔はみんなで冬に蓑を作ってたのよ。
藁は大量に余るし、村の現金収入にもなっ
たし、その道具よ。ずっと使ってなくて、
なにせ……」
勝村 「血液反応が出ました」
白井 「(驚き、勝村を見る)」
保坂 「……」
勝村 「O型と、AB型。目に見えないけど、
血液成分は残っていたようです」
保坂 「……」
勝村 「O型は村長のもの。村でAB型はご
くわずか。保坂さんもそうですよね?」
保坂、茶筒を倒し、湯呑みを床に落と
す。高価な湯呑み、割れる。
勝村 「え? あ(慌てて拾おうとする)」
保坂、すっくと立ちあがる。
勝村、白井「え?」
保坂、そのまま走り出して、扉を開け
て逃走。
勝村、白井「は?」
勝村 「足悪いんじゃないの?」
白井 「ずっと私はそうだと……」
椅子に立てかけてあった杖が、カタン
と床に落ちる。
勝村 「ずっとそのふりを?」
〇村の道
全速力で走る保坂。
保坂の家から出てくる勝村、白井。
勝村は走って追いかける。
白井はタクシーに飛び乗り、発進。
勝村に追いつき、扉を開ける。
勝村、飛び乗る。
保坂、くねくね曲がる舗装路をショー
トカットして走る。
車は舗装された曲がる道しか走れない。
白井 「くそ! 向こうのほうが道を分って
る!」
保坂、振り返り、車の二人を見る。
道のない森の中を走り出す。
〇森の中
走る保坂。
走って追いかける勝村、白井。
白井 「保坂さん!」
保坂、振り返らずに全力で走る。
勝村も白井も慣れない山道。
保坂は山菜採りのように身軽に走って
ゆく。
姿を見失い、立ち止まる勝村、白井。
息を切らせた二人。
勝村、無闇に走る。誰の姿も見えない。
勝村 「……くそっ!」
〇翌朝、滝壺
滝壺に、保坂の水死体があがっている。
イタチと同じように。
警察や消防が出動して、回収している。
(3/4につづきます。
核心に迫る二人。迫る時効。トミナガが見つけた大量の椿油。そして白井は「蕎麦の謎」に気づく。)
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