映画シナリオ「限界タクシー~首落ち村奇譚」(3/4)
(2/4からのつづきです。
保坂はまさか、足が悪いとずっとだましていた……?
村長の愛人だったという噂をした瞬間、保坂は逃げ、そして滝壺で死体としてあがった。
三人の容疑者はあと二人――下田と橋上。時効まであと11日。)
〇滝の上の現場検証
足を滑らせた痕がある。
白井 「誰かに突き落とされて殺されたって
ことは?」
勝村 「保坂さんは村人も含めて全員をだま
していた。足の悪い老人だと。何のために?
いざというとき、逃げるため? その一生
に一回の時に、都合よく待ち伏せて突き落
とせる人がいて?」
白井 「……たしかに……」
勝村、立木に額をこすりつける。
勝村 「……『血液反応が出た』と言ったの
は、嘘なの」
白井 「……やっぱり」
勝村 「ハッタリをかませば、何か出ると思
った。左手のときみたいに」
白井 「……」
勝村 「まさか走れるなんて。完全に私のミ
ス……完全に私のミス……!」
はげしく後悔している勝村。
立木に額を打ち付ける。額が傷つき、
血がにじむ。
白井 「……」
タイトル【時効まで、あと11日】
〇村長の家の庭、葬式
神式と仏式の折衷みたいな、部外者か
ら見ると異質なスタイルの葬式。
参列する村人たち。橋上、下田。
少し離れて出口。トミナガも参列。
勝村、白井。市の担当として八ヶ岳も。
勝村は、額の絆創膏がかゆくてイライ
ラしている。
白井 「あの崖の先には、西垣村という村が
ありました」
勝村 「ありました?」
白井 「限界集落を下回って、廃村になった
と聞きます」
勝村 「人が住んでいるより、身を隠すには
都合がよかったのかも。時効の日まで、あ
と十日生き延びれば、だけど」
白井 「事件に関与してたんでしょうか」
勝村 「キリのことについては、何か知って
いたはず」
笑顔の保坂の写真。
× × ×
出棺後の片づけをしている中、橋上と
トミナガがもめている。
橋上 「絶対許しません! あなたそれがど
ういうものか知ってるの?」
トミナガ「なんでだよ! 俺はこの村のこと
を考えて、いっちょ企画しよう、って言っ
てるだけなんだぜ?」
橋上 「この村のことを何も知らない癖に!」
トミナガ「何もかも草生やして消えていくつ
もりかよ!」
殴り合いそうな二人を皆が止めている。
落ち着く二人。
橋上 「……とにかく、祭りは復活させませ
ん」
トミナガ「……アンタがこの村代表じゃねえ
だろ」
それを遠巻きに見る白井、勝村。
白井 「あの物静かで冷静な橋上さんが珍し
い」
勝村 「……祭り」
〇赤い橋の上、霧の中
橋上 「ほんとうに愚かなババア。あと十日
くらい我慢できなかったのかしら。あの刑
事から走って逃げたんですって。あの女、
走れたのよ。私たちを騙してたの」
下田 「あなたこそ、祭りの件であんなに声
を荒げなくても。目を付けられるわよ?」
橋上 「……」
下田 「ニラにスイセン入れたの、あなたじ
ゃないでしょうね」
橋上 「私に何のメリットがあるのよ。自分
でやっといてかわいそうな被害者面してる
んじゃないでしょうね?」
下田 「はあ?」
橋上 「……祭りなんて、復活させてやるも
のですか」
〇市役所、外観
〇同、資料課
タイトル【時効まで、あと9日】
白井が現れる。
新聞を読んでサボっていた八ヶ岳。
八ヶ岳「私に用……じゃなくて、こっち(棚)
のほう?」
白井 「窪内村の、昔の資料を探しています」
八ヶ岳「人死にがあっちゃあ、あの刑事さん
あきらめるかと思ったが」
白井 「お祭りの資料はありますか?」
八ヶ岳「祭り。もうずいぶん前から、窪内村
の祭りは廃れてたよ」
白井 「それ以前の新聞とか当たればいいで
すかね」
八ヶ岳「……あの棚かな(顎で指す)」
白井 「ありがとうございます」
棚へ向かう白井。
〇走るタクシーの車内、夕
白井 「かつての村祭りは、毎年冬の入り、
十二月一日に行われていることが分りまし
た」
勝村 「……村長の亡くなった日」
白井 「それで、気になって調べてみたんで
す。もともとは椿の種を収穫して、椿油を
つくる祭りだったそうです。村にとって豊
作祭りだったんでしょう。かつては縁日や
火祭りでにぎわったそうですが」
勝村 「火祭り」
考える勝村。窓をあけて風を入れる。
勝村 「……私は思い上がってたと思うんで
す。ドラマみたいに、人の心理の裏を突い
た気になってた」
白井 「保坂さんの件は予測不能で、我々に
は不可抗力です」
勝村 「真犯人が保坂さんで、この一件はや
ぶの中かも知れない」
白井 「……」
勝村 「……」
白井 「勝村さん、犬、お好きですか?」
勝村 「はい?」
白井 「犬アレルギーとかそういうのでなけ
れば、ウチの犬がご挨拶したいと前から言
ってるので、ウチに寄ってきませんか」
〇郊外の一軒家(白井の家)、薄暮
タクシーから降りた勝村、白井。
迎える白い犬。
白井 「サヤカ! サヤカ! よーしよーし、
勝村さんにご挨拶を!」
サヤカ「わんわん!」
白井 「サヤカは死んだ女房の名前です。一
人じゃさみしいので、その名前と暮らそう
かとここに来て飼い始めまして」
勝村 「……あの、サヤカというのは……」
白井 「勝村さんの下の名前ですよね? 最
初に警察手帳見た時に気が付いたんですが、
言い出すタイミングがなくて。犬の名前と
同じだって聞いたらご気分を害するかも、
と思いまして」
勝村 「……」
サヤカの頭を撫でる。
勝村 「いい子だ。サヤカ」
白井 「はー、これで胸のつかえが取れた」
勝村 「そんなこと、気にしてたんですか?」
白井 「私にとって、サヤカは大事な問題な
ので」
勝村 「……」
白井 「あ、お茶でも淹れましょう」
鍵の無いドアを開ける。
勝村 「え、鍵とか」
白井 「このへんはみんなこうです。鍵をか
けるほうが珍しい」
〇同、中
お茶を飲む二人。勝村はサヤカの頭を
撫でながら、ぽつりぽつりと話す。
勝村 「いじめがあったんですよ。私が小学
校三年の時。私、見てられなくて」
白井 「その頃から、正義の味方だったんで
すね」
勝村 「……話はもっと複雑です。私こんな
性格なんで、いじめっ子のボスみたいな奴
に食ってかかったんです。『いじめなんて
卑怯だろ!』ってね。それでいじめは止ん
だんです」
白井 「目に浮かびます」
勝村 「でも次の日から、私がいじめのター
ゲットになったんですよね。いじめられて
た谷田さん……私が助けた子も、いじめる
側に回るようになったんです。その子、何
て言ったと思います?」
白井 「……」
勝村 「『ざまあ』って」
白井 「……」
勝村 「私が得た教訓は、一人で戦っても正
義をなせないということです。正義は組織
で実現しなければならないんです。だから
私、警察に入ったんです」
白井 「……私は組織が嫌になって、一人に
なった。真逆ですね」
棚の上の、妻サヤカの遺影。
白井 「彼女はずっと海を見に行きたいって
言ってました。海なし県の埼玉出身なので、
海が珍しかったんでしょう。でもここ長野
も山に囲まれてて、海には縁がないです」
勝村 「どこへでも行ける車に乗ってるのに、
どうして行かないんですか?」
白井 「……考えたことがなかったです。…
…規則的に生きることで、自分を縛って保
ってたんでしょうか。手袋をしないと自分
に戻れない。そんな風に心を閉じてきたん
でしょうか」
お茶が切れたので、もう一杯淹れよう
と立つ。
白井 「あの時不正経理と闘ってたら、と今
でも時々考えます。この件の解決は、だか
ら私の問題でもあるんです」
勝村 「……」
白井 「(不器用に笑う)」
〇村長の家の前、カメラの映像
YouTubeを収録中のトミナガ。
トミナガ「ハイ限界! 今日の『限界暮らし』
は、廃墟探検! 元村長の家に幽霊が?
出たら面白いよね! もーう限界!」
〇村長の家、中、カメラの映像
トミナガ「(埃で咳)やべーよここ。なにあ
れ?」
両面宿儺像に気づく。
トミナガ「仏像?」
頭を撫でる。
カメラは奥の物置に。
トミナガ「ぜってえお宝あるっしょここ!」
つづらがたくさん積んである。
その一つを開けると、錆びた南京錠が
たくさん入っている。触ってみる。
トミナガ「なにこれ? 鍵ねえじゃん」
次のつづらを開ける。たくさんの油壺。
トミナガ「ん?」
壺の封を解く。黄金の油が入っている。
なめてみる。
トミナガ「これは青酸カリ……じゃなくて!
椿油じゃね? 前作ったやつと似てるし、
プロがつくる味っぽいし!」
〇松風荘内、トミナガの部屋、カメラの映像
油炒めが出来上がっている。
トミナガ「で! 椿油で炒め物!」
食べる。
トミナガ「うま!」
しばし食べる。
× × ×
カメラは置いてある。
油壺を見て。
トミナガ「これ、夜に使いたいんだけど」
メイ 「?」
トミナガ「ヌルヌルにできるんじゃないかと」
メイ 「天才か」
〇同、夜
事後の二人。
全裸でテカテカ、放心状態。
トミナガ「これやべーわ」
メイ 「ヤバイしか出ない」
タバコ吸いながらスマホをチェックす
るトミナガ。
トミナガ「ん?」
メイ 「何?」
トミナガ「(見せる)」
メイ 「……ヤバイ」
トミナガ「でしょ。行ってみるべ」
スマホ画面。
画面 「K村のGのハッパ結構モノが良かっ
たのに、売人逮捕されたらしい」
画面 「庭に埋めてあるって聞いたけど誰か
凸して」
画面 「凸! 凸!」
〇合田夫婦の家、庭、夜
大きな木の根元を掘り返したトミナガ
とメイ。
瓶に入った大量の乾燥大麻ゲット。
〇松風壮、トミナガの部屋、夜
事後の全裸の二人。
メイ 「……これはヤバイね。みんなやめら
れなくなるの、わかる」
トミナガ「すぐクスリで乱交パーティーやり
たがるのも分るわ。あ、隣のやつらどうせ
たまってんだから、乱交パーティーやろう
ぜ!」
メイ 「あいつらの相手はやだ」
トミナガ「じゃネットで集めようぜ! 祭り
の内容決まった! 大麻乱交ヌルヌルパー
ティー、火祭りもやるよ! 動画撮ってあ
とでモザイクかけて売るべ!」
〇走るタクシーの車内、松風荘の前
タイトル【時効まで、あと7日】
窓の外には、手をつないで歩くトミナ
ガとメイの姿が見える。
二人はペアルックを着ている。
白井 「……あっ」
勝村 「?」
白井 「ニラとスイセン!」
勝村 「?」
白井 「赤い橋の上で目撃された保坂さん、
別人だったってことあります?」
〇赤い橋の上
白井が保坂によく似た服を着て、村長
の家の前に立つ。
勝村、それをスマホで写真に撮る。
× × ×
その写真。
勝村 「確かに、誰でもわからないっちゃあ
分からないか。でも何のために?」
白井 「下田さん、または橋上さん、ってこ
とありますかね?」
勝村 「何のために?」
白井 「……それも分りません。でも先入観
を覆さないと」
勝村 「……今から市役所の資料課、いけま
すか?」
白井 「もちろんです!」
〇資料課
戸籍を調べる勝村。
〇走るタクシーの車内、街道沿い
白井 「おや?」
タクシーを止める。
〇小さなパン屋の前
シャッターの下りた店。
貼り紙「閉店 この土地に根付いて六十余年、
ご愛顧有難う御座いました。店主の体力の
限界につき、引退させて下さい。この一帯
は再開発され、老人ホームとなります。き
っと眺めの良いホームになるでしょう 店
主」
白井 「閉店……」
あたりを見回す白井。たしかに周囲の
家は空家で、駐車場だらけになってい
る。
白井 「下田さん、悲しむなあ……」
〇走るタクシーの車内、街道沿い
下田を乗せて走っている。
(勝村は乗っていない)
白井は不意にウインカーを出し、街道
から逸れる。
下田 「?」
白井 「ああ、すいません下田さん。今日は
例のパン屋、寄れません」
下田 「ええ? どうして?」
白井 「この先に道路工事があって、しばら
く通行止めなんです」
下田 「ええー。そうなの。残念だわ。パン
の分、お腹すかせてあるのに」
白井 「じゃあ、この先の蕎麦屋に寄りまし
ょう。立ち食いですけど。蕎麦屋にはダン
ナさんとの思い出はあります?」
下田 「とくにないわ」
白井 「……あ、でも結構おすすめですよ山
菜そば」
〇新しめのチェーン店の、立ち食い蕎麦屋
山菜そばを食べる白井、下田。
下田 「あら」
白井 「悪くないでしょ。長野の人はそばう
るさいから」
下田 「そうね。名産品ですものね」
白井 「……?」
下田 「?」
白井 「どうして村では、そばつくってない
んですか?」
下田 「? ……何故かしら」
白井 「……」
〇市役所、資料課、夜
大量の資料を調べて、疲れ切っている
勝村。
そこに白井がやってくる。
白井 「何か分りましたか」
勝村 「今日は別行動では?」
白井 「気になったんです。何故村ではそば
を作っていないのか。椿油がメインだった
としても、冷害に強いそばは農家の救世主
と聞きます。あんなに霧の強い村で、そば
を作らない理由がない」
勝村 「……(起き上がる)昔からそば農家
があったかは、過去帳で調べられる」
白井 「勝村さんの成果は?」
勝村 「村長が神主の家系だとして、巫女の
家系がないかと疑問に思ったんです。昔は
祭りが盛んだったとして、毎回バイトを雇
っていたわけでもないでしょうし」
白井 「……たしかに」
勝村 「巫女の家系が三つありました。下田
家、保坂家、橋上家です」
白井 「……何か、ありますね絶対」
勝村 「そば農家の件は気になります。調べ
ましょう。いや、でも……」
白井 「?」
勝村 「時効までに、間に合うかどうか」
白井 「まだ5日あります。それまでに犯人
が分れば」
勝村 「違うんです」
白井 「?」
勝村 「ドラマとかでよく勘違いされてるけ
ど、時効ギリギリに逮捕すればOKじゃな
いんですよ」
白井 「え?」
勝村 「逮捕して、検事が裁判所に起訴する
までが、時効の締め切りなんです」
白井 「どれくらいかかるんですか」
勝村、二本指を立てる。
勝村 「一番速かったので、二週間」
白井 「……」
勝村 「一週間あれば例外的になんとかなる
かと思ってましたが、保坂さんが亡くなっ
た時点で一週間。……たぶん、何をどうし
ても間に合わないと思います」
白井 「……え、じゃあ、あきらめるんです
か」
勝村 「……」
白井 「勝村さんの正義って、それで終わり
ですか」
勝村 「終わりも何も、逮捕できても意味な
いし」
白井 「逮捕だけが正義じゃない。真実を白
日の下にさらすのも、正義だ。私はそれを
怠った」
勝村 「……」
白井 「私はぎりぎりまで粘りたいです。…
…乗りますか、乗りませんか」
ガチャリと扉が開いて。
警備員「あれ、もう終わりですよ」
二人同時に「もうちょっとだけいいですか?」
二人、顔を見合わせる。
〇走るタクシーの車内
タイトル【時効まで、あと4日】
村人から話を聞く勝村。
〇早咲きの椿の前
タイトル【時効まで、あと3日】
村人から話を聞く勝村。
〇走るタクシーの車内
タイトル【時効まで、あと2日】
村人から話を聞く勝村。
〇走るタクシーの車内
タイトル【時効まで、あと1日】
白井と勝村の二人。
勝村 「……」
白井 「……」
勝村 「明日の最終を予約しました。それで
いったん東京に帰ります。お付き合いあり
がとうございました。また休暇が取れたら、
来るかも知れません。その時は、もう刑事
じゃないかも知れませんが」
白井 「……力及ばず、済みませんでした」
勝村 「夕方、みなさんに集まってもらおう
と思っています」
〇村長の家の庭、夕
皆に話をする勝村。
丁寧に頭を下げる。
下田は思わず笑みを浮かべる。
橋上、下田をきつく見る。
下田、あわてて無表情に戻る。
勝村、ポケットから白いハンカチを出
し、白旗代わりに振る。
〇ビジネスホテル、勝村の部屋、夜
荷物をまとめている勝村。
壁に貼った村の地図や手がかりの写真、
メモ、村人たちの写真などをはがし始
める。
× × ×
ベッドに寝転がる勝村。
スマホをなんとなく見ている。
ふと思い出し、あるページを。
トミナガの『限界暮らし』。
村に来たころの勝村が映っている。
勝村 「……(苦笑い)」
最新の廃虚探検回を見る。
そこに映る大量の南京錠。
勝村 「……(指で止める)」
机の上に散らばった地図や資料。
白井のつくったリスト。
赤のマーカーで線を引き始める。
時計を見る。深夜三時。
勝村 「今から白井さんを呼び出すのは……」
上着をひっかける。
〇村、水門の前、深夜
(普通の)タクシーに乗ってきた勝村。
地図と村と水門を見比べる。
そこの畑は放置状態。
〇同、別の水門、深夜
同様に確かめる勝村。
そこの畑も作付けなし。
勝村 「この辺を見渡せる場所は……」
辺りを見回す。村長の庭の物見の塔。
〇村長の庭、物見の塔、夜明け
手をかけ、一段ずつはしごを登る勝村。
取っ手が崩れ、落ちる。
勝村 「くそ!」
今度は足をかけたところが崩れる。
地面に落下、ひどく体を打つ。
勝村 「……」
手に持った地図や資料が散乱。
勝村 「負けるか!」
額にずっと貼っていた絆創膏をビリッ
とはがす。
懸命に上り、ついに一番上に到達。
東の空から太陽が昇ってくる。
村全体を見渡す勝村。
勝村 「……やっぱり、そうか」
タイトル【本日、時効】
〇走るタクシーの車内
橋上を乗せて走っている。
白井に電話がかかってくる。
白井 「荷物が残されたまま、どこへ行って
たんですか?」
電話の声(勝村)「廃棄したそば農家たちの
リストと、水門の関係を調べました。リス
トをつくってくれた、白井さんのお手柄で
す」
白井 「……どういうことです?」
電話の声(勝村)「その農家たちは、橋上さ
んの下流の水門の水路の農家ばかりでした。
そして、村長の家からは水門の鍵が消えて
いる」
白井、後部座席の橋上が気にかかる。
電話の声(勝村)「……(電波が途切れる)」
白井 「あれ? もしもし? もしもーし!」
リダイヤルしてもつながらない。
橋上 「あの刑事の方?」
白井 「あ、そうなんですが……」
橋上 「村に入ったからかしらね」
白井 「はあ……」
橋上 「……」
白井 「……」
橋上 「……」
白井 「あっ」
橋上 「何かしら?」
白井 「ひとつ質問をしていいですか?」
橋上 「? どうぞ」
白井 「水門の鍵は、橋上さんが持っている
のでは?」
橋上 「……」
タクシーは橋上の家に着く。
橋上 「上がって。美味しい紅茶を御馳走す
るわ」
〇橋上の家、玄関
扉を開けて入った白井。
その裏に、鍵が沢山かかっている。
驚く白井。
橋上 「それが水門の鍵」
白井 「廃業したそば農家は、ことごとく橋
上さんの近くの水門から流れる水路を利用
してた家。……あなたが水を止めたんです
か?」
橋上 「……よく調べたわね」
白井 「つまりあなたは、村長の権力が欲し
かった。それが動機じゃないですか?」
橋上 「たった一枚の扉の向こう。あなたは
何があるかさえ知らない」
白井 「……」
橋上は家の中へ。白井は続く。
品のいい洋間が広がっている。
(4/4につづきます。
語られる真相。もう白井は引き返せない。)
https://note.com/oooka_/n/nc3c4d1662028
