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映画シナリオ「最終章を先に描け!」(3/4)

(2/4からのつづきです。
凸凹海賊チーム=編集者韮澤、神原作上山、神絵師えり(えりりん激ダイエット)、神アシ寺嶋は、『天空のファルコーン』の続きを勝手に描いて大ヒット! だがついに沈黙を守ってきた真の神=原作者ミツルギが……連載再開を宣戦布告!)


〇チャンプ誌面
 
予告 『天空のファルコーン 最終章・暗黒
 島編! ついに連載再開!』
 
〇早朝、コンビニ
 
   トラックがコンビニに納品中。
   走ってくる4人。
韮澤 「4冊くれ! 釣りはいらん!」
   1万円札を運転手に握らせる。
 
〇コンビニの前、早朝
 
   駐車場に並んで座り込み、チャンプ掲
   載の第一話を読み終えた4人。
4人 「おもしろい……」
   天を仰いで溜息をつく。
   再びページをめくり、読み返す4人。
上山 「……正直、負けです」
えり 「ミツルギ先生の線は違うわ。ここも、
 ここも、私には描けない」
寺嶋 「メカも背景もヤバすぎだろ。何人ア
 シスタント抱えてんだよ」
上山 「そして何より……」
韮澤 「ジークフリートは死ななかった」
   うなづく3人。
上山 「どうするつもりだよ! 太一の冒険
 が終わるためにはそれが最善手だろ! さ
 んざん考えただろ! それじゃハッピーエ
 ンドになれないんだよ!」
   韮澤、立ち上がる。
   駐車場には朝の光が当たって、日向と
   ビルの陰が半々になっている。
   その真ん中に韮澤が立ち、光の側と陰
   の側を指す。
韮澤 「こっち(陰)がジークの死んだ世界
 線、こっち(光)が生きてる世界線。世界
 は二つに分岐した。……そして、今の所こ
 っち(光)の方がおもしろい」
上山 「それじゃ俺たちが悪役みたいじゃな
 いですか」
韮澤 「……じゃあ、こう(手をクロス)」
 
〇川沿いの帰り道、朝
 
   を歩く4人。
   向こうから40代のサラリーマン二人
   (冒頭のコンビニ客)が走って来る。
サラリーマン1「あのコンビニにならあるっ
 て、チャンプ! 都内で一番早いんだっ
 て!」
サラリーマン2「なんか小学生以来だな! 
 走って漫画買いに行くって!」
   4人とすれ違う。
   その背中を見送る4人。
 
〇仕事場
 
   壁に続々とSNSが。
SNS『最of高』
SNS『9年待ってた!』
SNS『30年待ってた!』
SNS『これが公式の力よ』
SNS『才能という暴力』
SNS『海賊版同人誌よ、息してる?』
SNS『ジーク様! ジーク様!』
SNS『来週まで全裸待機』
SNS『最終回まで全裸待機』
SNS『すでに風邪ひきました』
SNS『手術成功しました』
寺嶋 「オイ、比較サイトができてるぞ!」
   画面を見せる。壁に投影。
韮澤 「『海賊版』1話から10、9、9、7、
 8、10、6。『本家』1話、15!」
寺嶋 「10点満点じゃねえのかよ!」
上山 「俺でも10点以上上げますよ。それ
 くらいすごかった」
韮澤 「……」
   その画像は拡散されてゆく。
 
〇夜、ミツルギの仕事場
 
   大学の大講義室のような、縦に移動す
   る二枚の大黒板があり、そこにびっち
   りメモ書きが書いてある。メモの粒度
   は上山より細かく、分岐が多い。
ミツルギ「ジークが死ぬルートは、大団円ま
 でたどり着けないんだよなあ……」
   大きく二股に分れている下のルートに、
   ×をつける。他のパターンもすべて×。
   巨大な壁にほとんど×がつけられて、
   細い細いたった一本の道が現れる。
ミツルギ「勝負だ、海賊」
 
〇コンビニの前
 
   揃って第二話を読む4人。
四人 「……おもしろい……」
 
〇一週間後、コンビニの前
 
四人 「はあ……」
   評価サイト、本家 15 13 12。
寺嶋 「俺ら全敗じゃん」
上山 「俺たちが先行してる分、向こうは後
 出しじゃんけんだろ。向こう有利だ」
韮澤 「作り手の有利不利とか、お客さんは
 見るか?」
   皆、首を振る。
寺嶋 「こっちは月1じゃん。本家は月4。
 4ターン攻撃を毎回くらうことになる」
韮澤 「たしかに。読者の心証もよくない」
上山 「次のラスト、書き換えていいですか」
えり 「え、作画、終わってるのに」
上山 「本当にごめん。こっちだって後出し
 できるだろと思って」
韮澤 「やってみよう。漫画は、面白ければ
 いいんだ」
 
〇デッドヒート
 
   漫画を描く韮澤たちとミツルギ。
   コンビニでチャンプを読む4人。
   本家15、13、12、10
   海賊8
   本家8、7、7、9
   海賊4
 
〇仕事場
 
上山 「ダメだ……またネタ切れだ……」
韮澤 「もう一回原作を頭から読むんだ。答
 はここにある」
   剣のオブジェの前で、原典を読む二人。
韮澤 「週一対月一だと、どうしても後手っ
 ぽくなっちまうな」
上山 「……」
韮澤 「だめだ、原典に集中しよう」
上山 「……」
韮澤 「……こっちも、週刊連載する?」
上山 「無理っスよ。俺仕事やりながらの兼
 業っスよ?」
韮澤 「このペースだと、1カ月後に抜かさ
 れる」
上山 「隔週なら?」
韮澤 「2カ月後だな」
上山 「抜かされたら?」
韮澤 「追いつけるか?」
上山 「……読みましょう」
韮澤 「そうだった」
上山 「……」
韮澤 「……」
上山 「週刊、やってみていいですか」
韮澤 「同人誌即売会ってそんなにないだろ」
えり 「あ、ネットで無料公開して、物理本
 はまとめ本として売る手があります」
韮澤 「なるほど。物理本は物理本でいいし
 な。作画間に合うの?」
えり 「バイト休めば」
韮澤 「バイト?」
えり 「テレホンオペレーターの」
上山 「漫画家だけじゃなかったの?」
えり 「生活安定させようと思って」
寺嶋 「こっちも、別のアシ断れば」
韮澤 「……どうする」
上山 「……(決意)」
 
〇コンビニの前、5週分
 
   チャンプを読む4人。
   本家 8、9、7、9、8
   海賊 7、6、4、2、1
 
〇仕事場
 
SNS『引っ込めニセモノ』
SNS『本家があるのに何でやるの?』
SNS『所詮二次創作』
SNS『劣化三次』
SNS『劣化四次』
SNS『ジークのいない天ファルなんてカス
 や。天カスや』
 
〇仕事場
 
韮澤 「……」
   机の上のたくさんのネームたち。
えり 「……あの、食事とか行きませんか。
 空気悪いですよ?」
寺嶋 「1点とか気にするな。たまたまだよ」
   韮澤、ネームたちを握りつぶす。
韮澤 「なんか、やめるか。もうさんざん稼
 いだしな」
上山 「えっ」
韮澤 「俺たちの戦いはこれからだ! 海賊
 先生の次回作にご期待ください、でトンズ
 ラよ! だって本家始まってるんだぜ? 
 俺たちが代わりをする必要ある? 所詮
 他人のふんどしで相撲取ってるだけじゃ
 んよ。原作どろぼうは逃げ時が肝心だろ」
上山 「……」
えり 「原作どろぼうかもしれないですけど、
 でも私はジーク様の死に納得してるんです。
 火をつけて、責任取ってくれないんです
 か?」
韮澤 「……」
上山 「……」
韮澤 「あのさ。……正直に言っていいかな」
上山 「?」
韮澤 「俺、これをすぐ言うから、若者に嫌
 われて、作家や編集者たちにも敬遠されて、
 一人ぼっちになっちまった。だけど大事
 なことだから言うな? 漫画に嘘はつけね
 え」
上山 「……はい」
韮澤 「つまんないんだ」
上山 「……」
   えり、顔を覆う。
   寺嶋、苦虫を噛み潰すように。
韮澤 「これも。これもこれも。全部つまら
 ない。面白いものしか、世に出すべきじゃ
 ない」
上山 「……やっぱ、そうですよね……。薄々
 そうかもとは思ってしまった。うん。正直
 に言ってもらって良かったです。やっと、
 鏡を正面から見れた気分です」
   韮澤、立つ。剣のオブジェを岩から引
   き抜こうとする。
韮澤 「俺たちは、ニセモノかな?」
上山 「?」
韮澤 「原作に詳しい、タダの漫画ヲタクか
 な? 俺たちは、偽の人生を生きてるのか
 な?」
上山 「……ただの二次創作ですよ。ニセモ
 ノじゃないですか」
韮澤 「俺はそう思わない。あんたの原作は、
 本物だって思った。これは嘘じゃねえぞ。
 俺はマジで面白いって思ったから、バク転
 土下座でもなんでもやろうと思ったんだ。
 ジークが死ぬ。失うものは、得るものの為
 にある。最高じゃん。その最終回を、俺は
 見てえんだ」
   韮澤、剣を握りしめる。
韮澤 「この剣はニセモノだ。だけどこの剣
 をホンモノだと思って話は進むだろ。漫画
 ってそうじゃねえのか? ニセモノだけど
 ホンモノだろ。俺は、面白いものをつくる
 のは、本物の人生だと思う」
上山 「……」
韮澤 「あ、いっちょ休載するか!」
上山、えり 「えっ」
韮澤 「休載といえば天ファル、天ファルと
 いえば休載だろ!」
上山 「……ふふふ」
えり 「ははは」
寺嶋 「バカバカしい(笑)」
韮澤 「本歌取りってのもオツなもんだろ。
 俺たちの『天ファル』を描けばいいんだよ」
上山 「……そうしましょう。よし、熱海に
 行きます」
韮澤 「A―TAMIの天丼?」
上山 「いや。俺たちがもう一回熱海に行っ
 て充電してきます」
韮澤 「そっちの天丼かよ!」
えり 「やった!」
上山 「……あ、充電じゃなくて放電か」
えり 「すけべ!」
 
〇翌日、誰もいない仕事場、雨
 
   外は雨が降っている。
   韮澤は一人で床に座り、コピー紙の切
   れ端をアイデアカード代わりにして、
   床に散らばせている。並び替えたり、
   書き込んだり。
SNS『海賊版、休載(笑)』
SNS『本家のマネすんな(笑)』
SNS『そのまま9年休載しろ(笑)』
SNS『帰って来なくていいぞ(笑)』
   外は雨が降っている。
   剣のオブジェの前で、韮澤はアイデア
   を書きつづける。
韮澤 「……家に帰るまでが、遠足です」
 
〇熱海のホテル、前、雨
 
   雨の中、湯煙に包まれる温泉街。
えり 「また、来ちゃったね」
上山 「俺たちの聖地」
 
〇夜、布団の中の二人
 
   裸(事後)。
えり 「ね。初めて漫画に出会ったのはい
 つ?」
上山 「漫画に?」
えり 「私が『天空のファルコーン』に出会
 った日のことはまだ覚えてるのね? 児童
 館の赤い長椅子に3巻が置いてあって、衝
 撃を受けて夢中になったの。冬の寒い日で、
 石油ストーブの匂いがして、窓からは午後
 の斜めの光が差し込んで。時間が止まって
 るかと思ったの。世界に、私と漫画しかな
 かったの」
上山 「……へえ」
えり 「でもそれまでに、漫画自体には出会
 ってたと思うのね。でも最初の漫画って何
 だったか、思い出せなくて」
上山 「……ドラえもんとかその辺かなあ。
 いつも漫画はそこにあったもんね。……床
 屋?」
えり 「床屋さんの漫画、いつも続き分らな
 くなるよね」
上山 「だから一話完結ものばっか読んでた」
えり 「わかる」
上山 「でも僕らは、続きが行方不明になる
 べきじゃない」
   回想。
   窓の外を見ていた高校時代。
   孤独な会社の自席。
えり 「?」
上山 「続きがなかったら……それじゃ、俺
 の人生みたいじゃん」
 
〇夜、雨の露天風呂でセックスする二人
 
上山 「あっ! 思いついた!」
えり 「えっ!」
   上山、慌てて脱衣場に戻る。
   脱衣場で猛烈にメモ。
   えり、取り残される。
えり 「えっ……えっ……」
   上山、戻って来る。続き。
 
〇快晴、砂浜で海を見る二人
 
上山 「タイトルの『天空のファルコーン』
 の意味。天空城が序盤に出て来ただけだか
 ら、『天空の』はただの枕詞だと思われてる
 じゃん? 魔剣ファルコーンも天空城のピ
 オリア姉さまから託された、七本の剣の一
 振りに過ぎないって」
えり 「うん。……あ。天空城を復活させる?」
上山 「(うなづく)天丼だ。もう一回使う」
えり 「どういうこと?」
上山 「動き出した大巨人ギガント。七本の
 剣では倒せない。だけど天空城が動いて空
 から攻める。『神々の杖』を大巨人に落とす
 んだ。巨人の弱点は頭」
   青空を仰ぐ二人。
   二人には天空城が見えている。
えり 「あ。……竜の翼をもつ一族の、背に
 乗って」
上山 「そうだ。太一が天空からファルコー
 ンを叩きつける」
えり 「(感動で涙が出てくる)最後の最後の
 最後に、タイトル回収するやつじゃん!」
上山 「好きだろ?」
えり 「大好き!」
上山 「(鼻を膨らませる)俺はえりりんをも
 っと好き」
えり 「私もダーリンをもっと好き!」
   二人は肩を寄せ合う。
上山 「……いや、今は『天ファル』かも」
えり 「わかる。私もだもん」
   二人、笑いあう。
 
〇帰りの電車の中
 
   眠る上山。
   えりは必死にスケッチする。
   竜一族の背に乗り、剣を構える太一。
   ×   ×   ×
   回想、児童館。
   石油ストーブ、窓からの光。
   長椅子の上に置きっぱなしの3巻。
   それを見つけて開いたえり(9)。
   回想、床屋の待合室。
   ふと1巻を取った上山(8)。
   二人は、じっと世界に入っている。
   ×   ×   ×
   眠る上山の髪を撫でるえり。
えり 「最高の、ラストにしようね」
 
〇仕事場
 
   アイデアメモを読み終えた韮澤、寺嶋。
韮澤 「……」
   涙がこぼれてくる。
韮澤 「なんでだ。なんで俺にこの才能がな
 かったんだ。……ほんとに悔しいよ。ちっ
 きしょう最高じゃねえか!」
   机の上の韮澤のアイデアの束に気付く
   上山。
上山 「ニラさんも、アイデア出してくれて
 たんですね」
   自分のものをバーンと床に捨てる韮澤。
韮澤 「バッカ野郎! こんなクズはいいん
 だよ! 最高じゃねえか、天空からの一
 撃! 天空の……ファルコーン!」
   剣のオブジェを持ち上げて、天空から
   たたきつける真似をする。
寺嶋 「背景の雲はキモだ。17世紀のエッ
 チングみたいな雲。『ラピュタ』を越える雲」
えり 「おねがいします!」
上山 「俺、計算したんです。七本の剣。五
 人の運命。天空のファルコーンは、35巻
 で終わるように計算されてる」
韮澤 「となると最終話は……350話か」
上山 「来週から再開すれば、同じ日に最終
 回を迎えられるはず」
韮澤 「……やれんのか」
上山 「くだらない会社の中で、いつか面白
 いことがあった時のために有給を貯めてあ
 りました。今が全部使う時です」
韮澤 「何日分?」
上山 「8営業週、つまり二カ月は休めます」
韮澤 「(指折り数える)……行ける。行ける
 な!」
   上山、うなづく。
韮澤 「俺たちの天ファル、突っ走るぞ!」
   4人、ハイタッチするが、またタイミ
   ングが合わない。
韮澤 「へたくそか!」
 
〇仕事場、コンビニ、ミツルギの仕事場
 
   必死で描く4人。コンビニでチャンプ
   を読む4人。ミツルギも描き続ける。
   本家 7、7、8
   海賊 9、8、10
 
〇精鋭社編集部
 
   PCで韮澤版を見る山根と渡辺。
   ラストのコマは、黒騎士の甲冑の中身
   が空っぽの驚きで「つづく」に。
山根 「ヤバい。面白いですよ、ナベさん!」
渡辺 「ううむ……まさか黒騎士が空っぽと
 は!……敵ながら天晴」
山根 「妨害とかしてる場合じゃないですよ。
 俺、漫画に携わる端くれの者として、彼ら
 と正々堂々と戦いたくなりました」
渡辺 「……若いな」
山根 「だめですか」
渡辺 「漫画は若者のものだ。それでいいと
 思う」
山根 「また、若者のふりして!」
渡辺 「いや。俺は単純に、こっちの続きも
 見てえんだ」
山根 「激しく同意です!」
 
〇ミツルギの仕事場
 
メモ 『黒騎士の甲冑、空っぽ』
   にすでに×がしてある。
ミツルギ「……」
 
〇仕事場
 
韮澤 「大どんでん返しを今入れよう。ライ
 ラックの魔女と黒騎士が同一人物だったっ
 て落ち、今やるぞ!」
上山 「えっ、それは大ネタに取っておいた
 ……いや、今やっても辻褄はあう」
韮澤 「3週連続こっちが勝ってるんだ。波
 に乗るのは今だ!」
 
〇壁に投影されるSNS
 
   本家 7
   海賊 10
SNS『【ネタバレ速報】魔女=黒騎士』
SNS『このための伏線だったのか……!』
SNS『完全に や ら れ た』
SNS『俺は黒騎士が太一の父だと思ってた』
SNS『兄のツバルだったのか……!』
SNS『じゃ父のオルテガは死んでる説?』
 
〇夜、スナック「敦子」
 
   棚の天ファルコーナーが増えている。
敦子 「だいぶ、バチバチじゃない?」
韮澤 「ようやく、第四コーナー曲がったよ」
敦子 「休載した時はもうだめかと思った」
韮澤 「……俺、才能の芽をつぶしてきたか
 も知れないな」
敦子 「?」
韮澤 「ほんとは若者だってぶつかり合いた
 かったんじゃないかとちょっと思った。た
 だ俺のぶつかりが強すぎて、吹っとばして
 ただけだったんだ」
敦子 「気づいてなかったのかよ」
韮澤 「もっと可愛がらないと。褒めるのも
 つまらんというのも、同じ力でさ」
   飲み干すともう一杯出てくる。
韮澤 「なあ。この連載終わったら、ヨリ戻
 さないか? 今ならお前に楽させられるく
 らい稼いだし」
敦子 「お金だけが問題だと思ってる?」
韮澤 「……君は、きれいだ」
敦子 「(鼻で笑う)褒める話?」
韮澤 「そうしてでも、君を取り戻したい」
敦子 「……」
韮澤 「……人間ってさ、怪物だよね」
敦子 「はい?」
韮澤 「オルグノイエとかブラフリューとか
 ノースフェイトとかの怪物を描けるのは、
 人間にその素養があるからだ。他人を理解
 すればしようとするほど、奥にいるのは怪
 物だと分る。きみが俺を怪物だと思うよう
 に、俺はきみもまた怪物だと思うわけ」
敦子 「それで?」
韮澤 「だけどきみという怪物のそばに、ま
 たいたいんだよ。理解しても分らない怪物
 といるんだと思えば、そんなに難しくない」
敦子 「私の好きな怪物は?」
韮澤 「……ビィクェル」
敦子 「……はずれ」
   二人、苦笑い。
 
〇朝、コンビニ前
 
   チャンプを読み終えた4人。
   最後のページに「あと4話」と。
えり 「読み通りになった!」
韮澤 「あと4回で、同日最終回!」
   評価サイト。
   【平均】本家 8・2 海賊 8・2
寺嶋 「平均でついに並んだぞ!」
韮澤 「あと4回、死ぬ気でやるぞ。ギガン
 トを天空のファルコーンで倒し、太一はア
 ルファ村の前で『ただいまー!』って叫ぶ
 んだ」
上山 「第一話の『行ってきます!』と対
 になるように」
   4人、立ち上がる。
   駐車場が光の面と陰の面に。
   陰にいた4人は、光の側に歩き出す。
 
〇デッドヒート
 
   描きまくる4人。走るペン。走るベタ。
   走るトーン。
   描きまくるミツルギ。黒板に×をつけ
   続けるミツルギ。
   コンビニで読む4人。
   敦子、QT、サラリーマン2人は本屋
   でチャンプを買い、タブレットで海賊
   版を読む。
   あと2話 本家10 海賊10
   あと1話 本家10 海賊10
   最終回  本家   海賊
 
〇深夜、仕事場
 
   机で一人描き続けるえり。
   手が真っ黒で寝入っている寺嶋。
   その隣で潰れて寝ている上山。
   その隣でノートPCを持ったまま寝て
   る韮澤。
   最後の一筆を入れ、ペンを置くえり。
えり 「……」
   絵を保存する。
   寝てる3人の手を取り、韮澤のノート
   PCのスペースキーの上に置く。
   カーソルを「公開」のボタンに合わせ、
   3人の手の上から自分の手で押す。
韮澤 「んっ(起きる)」
えり 「……終わりましたよ」
   韮澤、重ねられた手に気付く。
えり 「みんなで、最後の投稿をしました」
韮澤 「そうか。……ありがとう。……おつ
 かれさまでした」
えり 「子供の頃からずっとあった世界。正
 直、終わらせるのが怖かったです。私たち
 はずっと壁の中にいて、天ファルは、終わ
 らない方が良かったんじゃないかって。…
 …でも私たちは、壁の外に出たんですね」
韮澤 「……」
えり 「あ、脂肪という壁の外にも、私出られましたし」
韮澤 「ふ。そうだな」
えり 「誘っていただいて、ありがとうござ
 いました」
韮澤 「……こちらこそ」
   窓の外は明るくなっているのに気づく。
韮澤 「いかん!」
   その声に上山、寺嶋起きる。
韮澤 「コンビニ行くぞ!」
 
〇未明、朝もやのコンビニ
 
   トラックがやって来る。
   走ってきた4人、大声で呼び止める。
 


(4/4につづきます。
次回同日最終回……決戦の行方を見届けよ!)
https://note.com/oooka_/n/n7c8cdb17c95b


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