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ショートドラマ集シナリオ「劇団黒バック」(5/5終)

 すぐれた役者は、そこに何もなくても、ありありと光景を浮かばせることが出来るという。
 この実験ドラマは、「黒バックと二人の男」限定のショートドラマ集である。ミニマルな【演劇】を、カット割りや照明や音だけは【映画】形式で撮る。そうすると、そこに「それ」が浮かぶ……。

 劇団黒バックは、あなたの想像力と共犯する。
 BLACK-BOX THEATER: jacks your imgination.


劇団黒バック 第五回「実は」

脚本 大岡俊彦


#1 考え方の博物館
 ここは考え方の博物館。困った男がやってくる。

#2 ジェットコースター
 女二人にドタキャンされ、男二人でジェットコースターに乗る羽目に。

#3 皇居ジョギング
 ジョギングをする男に、スナイパーに狙われているという男が助けを求める。

#4 菌の床
 菌のいるところに、あたしらい菌の新入りがやってきた。嵐が来るぞ!

#5 睡眠代行いたします
 悪魔と取引した男。悪魔の秘密をばらさない代わりに、「だれかの代りに睡眠することが出来る」という奇妙な能力を得た。眠って金儲けができるなら、こんなに楽なことはない。しかし……

登場人物


●タイトル『実は #1考え方の博物館』

○考え方の博物館

   A、座っている。
   B、訪ねてくる。
B  「ここが、考え方の博物館ですか」
A  「いかにも」
   B、周囲を見渡す。
B  「スゲエ。古今東西の本だらけだ。…
 ネットにある知識とかは?」
A  「そこの端末で。独自に整理しておい
 たので、ここの本棚並みに検索することも
 出来る」
B  「つまり、世の中の全ての考え方が…」
A  「ここにあるわけだ」
B  「スゲエ」
A  「で、何をお探しかな?」
B  「えっと…好きな子に彼氏がいて、悩
 んでいます。これをどう考えればよいです
 か?」
A  「ふむ。では、B―678―N―24
 を」
B  「はい(棚を探す)」
A  「ざっくり言うと、敵はその彼氏一人
 だから楽だ、という考え方だ」
B  「?」
A  「彼氏のいない子なら、彼女の理想を
 上回らんといかんだろ。それに比べたら、
 その彼氏一人を上回れば勝てるぞ」
B  「なるほど! そう考えればいいの
 か!」
A  「(指差して)その棚に」
B  「ありがとうございます! お借りし
 ます!」
   B、走って本を取ってくる。
   ×  ×  ×
   別の日。
B  「すいません。また考え方を知りたい
 のですが」
A  「今度は何を」
B  「777人のトーナメント戦は、何試
 合ありますか?2、4、8、16…と計
 算していくと、割り切れないというか…」
A  「全ての試合で必ず敗者が出て、一人
 が残るのだから、776試合」
B  「なるほど! そう考えればいいの
 か!」
A  「その考え方は、Z―CB―7024
 を」
B  「ありがとうございます!」
   走って本を取りに。
   ×  ×  ×
   別の日。
A  「またやって来たか」
B  「はい。人に嫌われないようにするに
 は、どう考えれば?」
A  「それなら、M―1178―H―15」
B  「はい」
A  「自分を嫌う人は一定数いる。好かれ
 る人を増やしなさい」
B  「なるほど! そう考えればいいの
 か!」
   本を取りに走る。途中で立ち止まる。
B  「あれ?」
A  「どうした?」
B  「本読むより、実は、あなたに直接人
 生相談したほうが早くないですか?」
A  「…」
B  「…」
A  「たしかに」

   暗転。

●タイトル『実は #2ジェットコースター』

○ジェットコースターの席

   A、B、ジェットコースターに乗り込
   む。
A  「これ?(安全装置をつけようと)」
B  「おう。こう」
A  「…こうか」
   二人、安全装置装着。
   ガクン、とジェットコースターが動き、
   上りはじめる。
A  「…俺このゆっくり上ってくの苦手な
 んだよ。なんか死刑執行みたいでさ」
B  「わかる」
   二人、微振動しながら上っていく。(芝
   居で角度をつけるか、カメラでやる)
A  「しかし真由美もメグもドタキャンし
 やがって、男二人で遊園地ってのも間抜け
 だな」
B  「しかも野郎二人でジェットコースタ
 ーってな(笑)」
A  「…」
B  「…」
   どんどん角度が上がっていく。
   二人、周りを見ながら。
A  「チケット代勿体ねえのもあるよな」
B  「たしかに」
A  「…」
B  「…」
A  「…あのさ、実はさ…」
B  「何?」
A  「俺、今日真由美に告ろうと思ってた
 んだ」
B  「え、マジで?」
A  「ずっと前から好きでさ、今日がいい
 チャンスになると思ったんだよ。振られて
 もいいんだ。今日がそのケジメになれば、
 それでいいと思ってた」
B  「…そっか…」
A  「それが二人ともドタキャンなんて
 な!」
B  「そりゃ、残念だったな」
A  「ホントはホッとしてる」
B  「なんでだ」
A  「俺、昔はメグの方が好きだったんだ」
B  「どっちだよ」
A  「本命は真由美だよ。今は真由美が好
 きなんだ」
B  「そっか…」
   ガクン、と角度が水平に。
二人 「…(下を見て、息を飲む)」
二人 「うおおおおおおおおおおおお!」
   コースター、急降下。
   (二人の芝居か、カメラを傾ける)
二人 「うおおおおおおおおおおおお!」
   左に急に曲がる。右に急に曲がる。
   (二人の芝居か、カメラを傾ける)
二人 「うおおおおおおおおおおおお!」
   コースター、水平回転。
   (二人の芝居か、円形ドーリー)
B  「俺ーーーーー実はさーーーーー!」
A  「何ーーーーーーーーーー?」
   コースター、きりもみ回転。
   (二人が側転か、カメラ光軸回転)
B  「俺、実はーーーーー!」
A  「何だよおおーーーーーーーーー!」
   コースター、逆にきりもみ回転。
   (二人が側転か、カメラ光軸回転)
   コースター、さらに逆にきりもみ三回
   転。(同)
B  「真由美とメグと二股かけててー!
 昨日、ばれたー! だから二人は今日来ね
 ええんだーーーーーーーー!」
   コースター、すごい軌道。
   (二人の芝居か、カメラをぶんまわす)
二人 「うおおおおおおおおおおおお!」
   ガクン、とジェットコースター終わる。
二人 「ハア…ハア…ハア…」
A  「お前、何か言ってたよな?」
B  「…言ったよ。…一応、言ったからな」
A  「……何を?」

   暗転。

●タイトル『実は #3皇居ジョギング』

○皇居ジョギングコース

   A、ジョギング中。
   B、走ってきて、隣に併走しはじめる。
   以下、走りながらの芝居。
A  「…(会釈)」
B  「…あの、すいません」
A  「…何ですか」
B  「(小声で)そのまま走ってください」
A  「? いや、ジョギング中…だし…」
B  「分ってます。だから、そのまま走っ
 てください」
A  「…はあ」
B  「(小声で)実は私、追われてるんです
 よ」
A  「ハイ?」
B  「そのまま走ってください」
A  「…はあ」
B  「実は私、国家機密を盗みまして。で、
 追手の狙撃手が私を狙ってるんです」
A  「…なんですかそれ。スパイ的なやつ
 ですか?」
B  「(小声で)そのまま走ってください。
 詳しくは言えないんです。詳しく言うと、
 あなたの命も狙われる」
A  「…ええっと…僕はスナイパーの盾、
 みたいなことですか?」
B  「すいません。一般人を彼らは巻き込
 めない。それを利用して僕は逃げるつもり
 なんです」
A  「はあ」
B  「(芝居がかって)よく走るんですか?」
A  「…まあ」
B  「(小声で)二人が自然にジョギングし
 てるフリをしたいんです。そちらは? と
 か聞いてください」
A  「ああ。…そちらは?」
B  「(芝居がかって)そんなでもないです。
 まだ初心者なので」
A  「…はあ」
B  「お仕事は何を?」
A  「流通系のサラリーマンです」
B  「…」
A  「…」
B  「『そちらは?』」
A  「ああ。…そちらは?」
B  「それを聞いたら命を狙われます」
A  「じゃあ聞く意味ないじゃん」
B  「ご結婚は?」
A  「してます。…あ、ええと、そちらは」
B  「それを聞いたら命を狙われます」
A  「何のための会話ですか」
B  「ホラ、ジョギングは会話しながらが
 丁度いいとか言うし」
A  「まあ、そうですけど」
B  「…」
A  「…」
B  「あ」
A  「?」
B  「ここ皇居だった。一周しちゃった
 よ!」
   二人、立ち止まる。
B  「もう一周しません?」
A  「やです」

   暗転。

●タイトル『実は #4菌の床』

○菌の温床

   Aのいる所へ、Bが挨拶しに来る。
B  「ちっす! 先輩ちっす! この辺で
 増えさせてもらいます!」
A  「新入りか」
B  「ハイ! 黄色ブドウ球菌先輩! 自
 分、大腸菌ッス! 先輩、ここ長いんス
 か?」
A  「まあな。ここは適度に湿気があって、
 栄養も供給されやすい、俺たち菌にとって
 は、理想郷のような場所だ」
B  「マジっすか! じゃあこの温床こそ
 が、俺のついの住処になるってわけだ!」
A  「そうもいかんぞ」
B  「?」
   二人、耳をそばだてる。
二人 「嵐が来るぞー!」
   A、あわてる。
A  「いかん! 準備しろ! 殺される
 ぞ!」
   A、伏せる。
B  「なんですか嵐って! 先輩、俺恐い
 ッス! 何が起こるんスか!」
A  「バカ! 立つな! 何かにつかま
 れ!」
   B、嵐に飛ばされる。
B  「ああ先輩! あああああああ!」
   B、消える。
   A、立ち上がる。
A  「…今回の嵐は強かった…(あたりを
 見渡して)…かなりの数が殺菌されてしま
 ったな…」
   と、Bがまた登場。
B  「ちっす! パイセンちっす! この
 辺で増えさせてもらいます!」
A  「大腸菌! 生きてたのか!」
B  「? 他の大腸菌のことッスか?
 大腸菌ってクローンで増えるんスよ! だ
 から見た目同じのが、ただ増殖するだけな
 んス!」
A  「そうなのか」
B  「パイセンここ長いんスか? どこ出
 身スか?」
A  「網走」
B  「マジっすか! めっちゃ遠いんスよ
 ね?」
A  「そうだ。俺は網走の岬で生まれた。
 キタキツネの背中、4WDの車、空港の扉
 …。数々の住処を経由して、俺はついにこ
 のシャングリラに辿りついたのだ」
B  「俺さっき生まれたばっかなので、パ
 イセンの話は参考になります」
   二人、耳をそばだてる。
二人 「嵐が来るぞーーーーーー!」
   A、Bをかばって伏せる。
二人 「うわああああああ!」
   嵐、過ぎる。
   二人、立つ。
A  「良かったな。今回の殺菌の嵐は、抗
 菌レベルで済んだ」
B  「ところでパイセン、ここはどこッス
 か? 菌のパラダイスに見えますが、便器
 ッスか?」
A  「いや。ここはスマホ」

   暗転。

●タイトル『実は #5睡眠代行いたします』

○オフィス

   サラリーマンのA、デスクで居眠りし
   ている。
   誰かに起こされる。
A  「ああ、すいません。…ハイ、やりま
 す」
   仕事にかかるけど、またすぐ居眠り。
   誰かに起こされる。
A  「あ。…ハイ。…たしかに、寝るのは、
 俺の一種の才能かも知れないですね。…ハ
 イ、スイマセン。…いえ、開き直ってない
 です」

○電車の中

   A、つり革につかまって居眠り。
   と、目を覚ます。
A  「お。あいた。ラッキー」
   席に座って、また寝だす。
   B(悪魔)、登場。
   きょろきょろと辺りをうかがう。
   OLの尻を触ったり、スカートめくり
   したり。
B  「臭い息。臭い息」
   と乗客にハーッとやって嫌がるのを楽
   しんでいる。
B  「イヤホン絡ませ」
   と、座ってる客のイヤホンを絡ませる。
   A、おもむろに起きる。
A  「何やってんの?」
B  「えっ!」
A  「…」
B  「起きてたのか!お前!」
A  「あれ?寝てると思ってたけど…今
 日会社で寝すぎたからかな?」
B  「なんだよ!寝とけよ!お前!」
   A、周囲を見渡して。
A  「あれ?」
B  「(手でさえぎる)見なかったことにし
 て! 寝といて!」
A  「なんで周りの人が止まってんの?
 (窓の外を見て)…何これ、時間停止?」
B  「ちげーよ!悪魔のイタズラだよ!」
A  「悪魔?」
B  「しまった! 今のなし! そう、時
 間停止! SF! SF! タイムパラド
 ックス!」
A  「お前、悪魔なの?」
B  「ちっげーよ!」
A  「悪魔って嘘つきなんだよな?」
B  「そーだよ俺は悪魔だ」
A  「やっぱそっか」
B  「あ。…もう、見なかったことにして
 よ! 人間に目撃されたってばれたら、大
 王に怒られちゃうんだから…!」
A  「分った。見なかったことにする」
B  「ホッ」
A  「代わりになんかちょうだい」
B  「お前、悪魔に悪魔の取引するたあ、
 いい度胸だな!」
A  「じゃいいや。大王とかに報告すれば
 いいんでしょ。人間に姿見られたって」
B  「分ったよ! 分ったよ! 取引だ!
 望みを叶えてやる!」
A  「望み?」
B  「悪魔に何を頼む!」
A  「…とくにないな」
B  「は?」
A  「うーん。しいて言えば、世界が平和
 でありますように」
B  「そういうのは神様に言えや!」
A  「そっか」
B  「そっかじゃねえだろ! あー、なん
 か悩みとかねえのか。それを解消してやろ
 う」
A  「うーん。僕ね、居眠りするのが好き
 なのね」
B  「おう」
A  「でね、なるべく眠っていたいのさ。
 だけど、仕事もしなくちゃいけないんだ」
B  「で?」
A  「眠ってて、お金を儲ける方法はない
 かなあ」
B  「ねえよ!…待てよ」
A  「?」
B  「代行の力を授けよう」
A  「?」
B  「睡眠代行だ。誰かの代わりに寝ると、
 その人の睡眠を代行できる力。それで金を
 稼げばいいんだ。時間いくらってな。寝る
 間も惜しいって奴は、いっぱいいるだろ」
A  「いいね」
B  「よし、取引成立」

○翌日、オフィス

   同じく、デスクで居眠りするA。
   誰かに起こされる。
A  「ああ、スイマセン。…居眠りしちゃ
 いました。仕事に戻ります」
   ケータイがかかってくる。
   席を外すA。
A  「ああ神谷。どう? スッキリしたか?
 …そう。睡眠代行ってホントだったろ?
 二時間で、そうだな一万円ってとこか。は
 はは。いい小遣い稼ぎになった」

○翌日、オフィスの廊下

   OLのマイに話しかける。
A  「あ、マイちゃん。こないだ言ってた
 チケットゲットしたよ。一緒に行かない?
 臨時収入があって…そう、パチンコで勝っ
 てさ。…え?行かない。…そう。じゃ、
 また誘うよ」
   ため息をつく。
   ケータイがかかってくる。
A  「おう神谷。何? …ほう、デカイプ
 レゼン。三日徹夜の予定。毎度ありー。う
 ん。八時間かける三でいいか?…そりゃ、
 デカイな。勝ったら億か。会社の居眠りじ
 ゃ足りねえから、有給とって寝るわ。うん。
 頑張れよ」

○街

   A、Bと歩いている。
B  「どうだ、睡眠代行業」
A  「いやあー。儲かっちゃって儲かっち
 ゃって。最初二時間一万円にしてたんだけ
 ど、社内で噂広まっちゃってさ。値上げし
 たら、一時間十万でも、ってなっちゃった」
B  「悪魔め」
A  「寝てるだけでOKだし、最高だよ。
 難点は、有給とんなきゃいけないぐらいか」
B  「?」
A  「その分寝ないと、起きれなくて」
B  「そりゃそうだ」
A  「こないだなんか、会社で寝て、起き
 たら真夜中で誰もいなかったし」
B  「(笑)そりゃ最悪だ」
A  「会社のエースに神谷って同期がいる
 んだけどさ。アイツの分寝てやったら、億
 単位の仕事取ってきて社長賞さ」
B  「ほう」
A  「会社に貢献。社会に貢献。俺は寝て
 るだけ。こんな美味しい取引をありがとう」
B  「喜んでくれて何よりだ。…で、大王
 にはくれぐれも」
A  「内緒に決まってんじゃん。ていうか
 俺がどうやって大王に…」
   と、A、立ち止まる。
A  「あ…」
   思わず物陰に隠れるA。
B  「何?」
A  「…! …! …!(号泣)」
B  「何だよ。…あの女?」
A  「マイちゃん。俺あの子が好きだった
 のに! 横に歩いてんのが…その、神谷だ
 よ。…なんだよ、二人、付き合ってんのか
 よ!」
B  「ハッ! こいつは面白え! お前が
 寝てる間にそいつは出世して、女も奪った
 ってことか! 面白すぎんぞ!」
   A、反対方向へ歩き出す。
B  「オイ、どこ行くんだよ!」
A  「ほっといてくれよ! もうどうでも
 いいよ! 俺、金稼ぐ悪魔になってやる!」

○街

   A、通行人に。
A  「睡眠代行いたします! え? どう
 いうことかって? 代わりに寝るんです。
 一時間十万円。嘘じゃないですよ。あなた
 がその分、寝たことになるんです。ハイ。
 もしそうじゃなかったらお代は返します。
 後払いでも構いません」
   ×  ×  ×
A  「睡眠代行いたします!」
   ×  ×  ×
A  「どなたか、代わりに寝て欲しい人、
 いるでしょ?」
   ×  ×  ×
   A、札束を数えている。
A  「…まだまだ足りない。もっと寝てね
 え業界ねえかな。ブラック企業に行くか。
 …そうだ!映画の撮影現場だ!」
   長い暗転。
   長い明転。

○Aの部屋

   A、布団に寝ている。
   枕元に悪魔が正座している。
   A、目を覚ます。
A  「(以下老人の声で)あれ?…」
   大きなあくびをして、伸び。
A  「ああー。だいぶ、寝たなあー。これ
 で随分儲かっただろ…」
   起き上がろうとするが、腰が痛く、ゆ
   っくりとしか動けない。
A  「なんだこれ…? 体がなまってるの
 か? …動かねえ…それに、声も変だ。ま
 るで老人のような…」
   そこでようやく悪魔に気づく。
A  「うわ!お前、いたのか!」
B  「今日は、本当の悪魔の仕事をしにき
 たぜ」
A  「?」
B  「実は、今日がお前の寿命の日だ」
A  「はああ?」
   鏡を見る。
A  「なんだこれ! ジジイじゃねえか!」
B  「今は二〇七六年。お前は六十年寝て
 て、今日が九十歳の誕生日で、命日」
A  「はあああああ?」
B  「じゃ、死ね」
   立ち上がる。
A  「待ってくれよ! 待ってくれよ!
 どうして俺が死ななきゃいけないんだ!」
B  「寿命だから。お前は寿命まで寝て過
 ごすことを選んだんだろ?」
A  「なんだよ!そんなの聞いてない
 よ!」
B  「…一々うるせえなあ。魂の緒、切る
 よ」
A  「待って!だ、大王に言うぞ」
B  「何を?」
A  「お前が人間に見られたってことを
 さ!」
B  「あ…いや、それはちょっと勘弁して
 ください。あれはお前が寝てると思ってて
 …」
A  「その場に、連れてってくれよ」
B  「?」
A  「その場に連れてってくれよ。あの、
 出会いの場に」
B  「…仕方ねえなあ」

○電車の中

   寝てる過去のAを見てる二人。
B  「な?お前、寝てるように見えるだ
 ろ?」
A  「いや。寝てた。このあと起きた」
B  「なんだ、やっぱり寝てたのか」
   と、A、ツカツカと歩き、過去のAの
   頭をはたく。
B  「何やってんだよ! そんなことした
 らお前が起きて…あ! 過去の俺が、お前
 が起きてるのに気づいて…ああ! 俺とお
 前は出会わなかったじゃん! 時系列が変
 わっちまうだろ! どうしてくれるんだ
 よ! ああどうしよう…」
   AとBに当たるライトが、ゆっくり消
   えていく。
A  「ああ。未来の俺たちは、消滅するの
 か」
B  「そうだよバカ!」
A  「…そうか…」
   奥へ消えようとする二人。
   もう一度過去のAをはたくA。
A  「起きろ、俺」

   暗転。

●エンディング




※ 「裏黒バック」 役者AとBをそっくり入れかえて撮影することが可能だ。
あの時のセリフの言い方、芝居。役者によって解釈や仕掛け方が異なり、視聴者はそれも楽しみに出来るだろう。一粒で二度おいしい、それが裏黒バック。



next: 長編はいかがでしょう。コメディなら「最終章を先に描け!」、ダークスリラーなら「限界タクシー~首落村奇譚」、タイムスリップ的ラブストーリーなら「千年咲く花」
その他色々あります。
https://note.com/oooka_/n/ne831524c1f5f


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