松家仁之「火山のふもとで」

いつまでも読んでいたくなる文章

・建築家小説。設計事務所の夏季だけの軽井沢での仕事にいそしむ人々の物語。美しく抑制のきいた詩情あふれる文章。ていねいにきめ細かく描写され、シャレている。自分もそこに居るかのように、高原の夏の自然がみずみずしく伝わる。
・話は国立現代図書館の設計コンペへのチームワークを柱に建築論や人間関係が展開される。なかには、「所内恋愛禁止」破りのささやかな恋も。そして、意外な形で事務所は終わる。
・建築および現代建築史の勉強になる。設計コンペの対象が図書館なのも読書家にはうれしい。利用者と運営者の視点の違いと建築家の立場。書棚ひとつとっても様々な工夫。
・一種の教養小説。短期間ながら、新社会人の「ぼく」は仕事で先輩に学びつつ、また恋を通じ自分をみつめる。
・音楽が各所でさりげなく鳴らされるのもいい。作中で流される曲は、ベートーヴェン「交響曲第8番」、 ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」、モーツアルト「グランパルティータ」、「ヴァイオリンとヴィオラの協奏交響曲」、バッハ「プレリュード」、マーラー「交響曲第4番」、シューベルト「ピアノソナタ第21番」、ハイドン「オラトリオ:四季」。シューベルトは場面に合っていて心に染みるものがある。
(書籍データ:2012年、新潮社)


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