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「自由に感じていい」と思える居場所を。浜田夏実さんが『アートをむすび会』に込めた想い|じぶすき対談

「自分でやってみたら?」の一言から始まったアート鑑賞会。

形になった瞬間、それは単なる企画ではなく、自分の世界観を反映した「表現そのもの」だと、浜田夏実さんは気づきました。

だからこそ、申し込みや反応がない時期には、自分自身を否定されたような苦しさもあったといいます。それでも彼女が目指したのは、「アートを自由に感じていいと思える居場所」を作ることでした。

美大出身のアートライター・浜田夏実さんが『アートをむすび会』に込めた想いと、その輪郭が見えてくるまでの過程を伺いました。

聞き手/おーつー(冨田裕子):noteメンバーシップ「行動と習慣を続けて自分を好きになる会(じぶすき)」を運営、発信活動をサポートする「伴走プラン(個別相談)」を提供している。


「自分で鑑賞会やってみたら?」と言われても、想像できなかった日

岡本太郎記念館に行ったとき

おーつー:よろしくお願いします!以前の夏実さんは、自分が前に出て何かをやるというより、後ろから支える側にいる印象が強かったです。

浜田夏実さん(以下、夏実):そうでしたね。当時はアートライターの仕事に必死で、自分でイベントを企画するなんてまったく考えていませんでした。

おーつー:私たちが参加していたライターコミュニティ「Webライターラボ」で、アート鑑賞企画「ラボアート部」を一緒にやったのが2025年1月でしたよね。反響もあって、「次は自分でやってみたら?」と提案したんです。

夏実:はい。「ラボアート部」自体は本当に楽しかったのですが、その時点では一人では想像がつかず、最初はやろうとは思っていませんでした。

その後、4月におーつーさんの読書会がきっかけで岡本太郎記念館に行ったとき、いろんなアイデアを出していただいたんです。「それ面白そう!」「これもいい!」と話している時間が本当に楽しくて。そのとき初めて「自分でやってみたい!」と思えました。

おーつー:その頃から、夏実さんの中に熱い想いがあるのは感じていました。

夏実:ありがとうございます。もともとおーつーさんの伴走プランに憧れがあって、「アートの企画について相談すればいいんだ!やっと伴走プランの仲間入りができる」という思いがあって、それでお願いすることにしました。

構想が見えた瞬間、「これは自分の表現なんだ」と思った

「アートをむすび会」のお披露目

おーつー:実際に形にしていく段階は、どんな感じでしたか。

夏実:最初から、「アートを通じて争いをなくしたい」という想いがありました。対話を通して作品を見ることで、参加者の方々のさまざまな考え方を知ることができる。そうすると、異なる価値観も少しずつ受け入れられるようになるのではと考えていました。

おーつー:3本立てのプログラムを考えていましたよね。

夏実:はい。1対1で美術館をめぐる「​​オーダーメイド美術館めぐり」、少人数で作品を見る「グループ鑑賞会」、オンラインで自由に語り合う「アートシェア会」です。自分らしいコンテンツにしたい、参加者の方々にも安心してもらえるものにしたいと思い、少しずつ準備していきました。

おーつー:最初から、しっかりとした土台と、貫く思いがある印象です。

夏実:ありがとうございます。メルマガの準備や、特典の『アートを楽しむハンドブック』制作も並行していたため、9月のリリースに間に合わせるのは大変でした。

そんななかで無事に『アートをむすび会』を立ち上げたあと、実は一気に落ち込んでしまって。私にとって『アートをむすび会』は、ただの企画ではなく、ひとつの「作品」だったからなんです。

おーつー:それってどういう意味?もう少し詳しく聞かせてください。

夏実:私は中学生の頃から美術を学んできて、自分でも絵を描いてきました。子どもの頃からずっとアートが好きでしたが、大学生になってから、「アートに興味はあるけれど、敷居が高い」と感じていらっしゃる方が多いと気がついたんです。

それから、「敷居の高さを感じている方に、アートを楽しくお伝えする方法はないか」と考えて、ワークショップを企画し、いろいろな方法を探ってきました。しかし、大学生の頃から社会人になるまで、10年近く模索したものの、「これだ!」と確信できる答えには辿り着けませんでした。

今回『アートをむすび会』を作ってみて、初めて「私の表現したかったことはこれだ!」と直感したんです。絵のように形のあるものだけではなく、この世界観や活動そのものが自分の表現なんだ、と。

おーつー:企画が「作品」になった瞬間ですね。

夏実:はい。『アートをむすび会』は、ようやく出会えたひとつの答えであり、これまでの集大成だと感じています。だからこそ、形が見えたことで逆に、「自分そのものが評価される」というしんどさも出てきました。

『アートをむすび会』を立ち上げたのに、反応がなく落ち込んだ

初めてのアート鑑賞会

おーつー:始めたばかりの頃は、とてもしんどそうでしたね。

夏実:そうなんです。リリースから数日で、ありがたいことに20名以上の方がメルマガに登録してくださり、Xでも『アートをむすび会』を紹介していただきました。

でも当時の私は、より多くの方に認めてもらいたいという思いがあったのかもしれません。今なら「始めて1か月で広く知ってもらえるはずがない」と思えますが、SNSの数字に一喜一憂しては落ち込んでいました。

おーつー:想いが強い分、世間とのギャップに敏感になりますよね。

夏実:正直、「始めなきゃよかった」と思うほどでした。『アートをむすび会』が自分の表現そのものだと感じていたからこそ、イベントの申し込みがないことを、自分自身が否定されたように真正面から受け止めてしまって。

一生懸命に用意してきたコンテンツだったため、みなさんから反応をいただけるかどうか、とても怖かったんだと思います。

おーつー:でも私は、夏実さん自身が楽しみながら続けていけば、水が染み込むように少しずつ広がっていくと信じていました。その時期を、どうやって抜けていったのでしょう。

夏実:立ち上げて1か月ほど経った頃、周りのみなさんがすでに『アートをむすび会』を知ってくれていたと分かったんです。「え、見てくれていたの?」と驚きましたし、自分が思う以上に活動は届いているのかもしれないと実感しました。そこから、ひとつひとつ丁寧に続けていこうと思えるようになりました。

知識での武装を手放し、自分らしさを取り戻す

じぶすきの伴走後に撮影

おーつー:始める前に、怖かったことが二つあったと伺いました。

夏実:​​はい。ひとつは、アート関係者にどう見られるかという怖さ。もうひとつは、「楽しむことにお金をいただいていいのか」という不安でした。

おーつー:その不安が、「知識をちゃんと伝えなきゃ」という気持ちにつながったんですね。

夏実:そうなんです。価値を届けたほうがいいのかなと思って、知識で武装しようとしていました。でも専門家の方には及ばないし、自分のやる意味があるのかと、また苦しくなる……。おーつーさんの伴走がなければ、やめていたかもしれませんし、まったく違う形になっていたと思います。

おーつー:私は、夏実さんが主催するからこそ意味があると感じていました。その怖さは、どう変わっていきましたか。

夏実:おーつーさんが「夏実さんだからできるんだよ」と、繰り返し言ってくれたおかげですよ。不安が出てきて知識の力に頼りそうになるたびに、きゅっきゅっと軌道修正してもらいました。

おーつー:少しずつ、もとの夏実さんらしさに戻していくような感覚でしたね。

夏実:本当にそうです。「このままでいいんだ」と思えるようになって、少しずつ自分の本音に従えるようになりました。この境地には、一人ではなかなか辿り着けなかったと思います。

アートを通じて、「自由に感じていい」と思える場を作りたかった

2026年3月のアート鑑賞会は山種美術館

おーつー:夏実さんは新しい何かを得たというより、もともと大切にしていた感覚に立ち戻った印象があります。

夏実:本当にそうですね。「アートを押しつけたくない」という想いは最初からありました。アートは、人それぞれ自由に感じるものです。なのに、知識で測られたり、「こう感じるのが正しい」と言われたりすると、「いいと思えない自分はダメなのかな」と感じて、心が閉じてしまいます。

おーつー:感じられるための「余白」が必要なんですね。

夏実:はい。だから私のイベントでは、自然と感情が湧いてくるのを待てる場所にしたかったんです。 おーつーさんとの対話を通じて再確認したのは、私が目指したいのは知識の提供よりも、参加者の方とアートを分かち合うことなんだ、という点でした。

おーつー:直近のグループ鑑賞会でも、夏実さんがとても自然体で楽しまれていたのが印象的でした。

夏実:ありがとうございます。安心できる場で、「この絵が好き」と言ってもいいし、ただ見ているだけでもいい。おーつーさんが日本画について熱く語る姿を見て、「ここまで自分の好きを全開にしていいんだ」と私も感化されました。
「自由に感じていい」と思える、そんなホッとできる居場所を、私はずっと作りたかったんだと思います。

しんどさを抱えたまま、本音の方へ進めるようになった

イラストレーターとしての活動も始まりました!

おーつー:1対1での美術館めぐりから始まって、グループ鑑賞会やアートシェア会など、少しずつ形になってきましたね。

夏実:ありがとうございます。一人で抱えていると、どうしても「できなかったこと」ばかり気になってしまいます。自分の心を置き去りにすると、途中まで進んでも、気持ちがブレーキをかけて動けなくなる。形にしたいのに出せず、葛藤から自己嫌悪に陥ったこともありました。
でも、おーつーさんと話すと頭が整理されて、そのとき一番大切なことが見えてくるんです。

おーつー:自分のことは、自分だけでは見えにくいものですよね。

夏実:本当にそうです。実は、ずっと下手だと思い込んでいたイラストも、おーつーさんに勧められて描いてみたら、「かわいい」と言ってもらえたんです。そこで、自分の強みを再発見できました。イラストが加わったことで『アートをむすび会』がより親しみやすく、オリジナリティのあるものになったと感じています。

おーつー:不安などのネガティブな感情を「悪いもの」と切り捨てず、「それも今の自分なんだ」と受け止めていく。そんな泥臭い向き合いがあったからこそ、今の形につながっているんですね。

夏実:そうですね。迷いやコンプレックスに蓋をせず、「これが今の自分なんだ」と思えるようになったことが大きかったです。感情のアップダウンまで一緒に見守ってもらえたことが、結果的に「本当にやりたいこと」へ近づく力になりました。
(おしまい)


【プロフィール】

浜田夏実(はまだ・なつみ)
東京都在住。武蔵野美術大学出身のアートライター・イラストレーター。行政の文化事業を担当する組織で、バックオフィス業務を経験。独立後は、演劇フェスティバルの事務局スタッフやアーティストのサポートを務め、現在はアート・取材ライター、イラストレーターとして活動している。ことばと絵の両方から自分らしい表現を模索している。

2025年9月より、だれもがアートを気軽に楽しめるプログラム『アートをむすび会』をスタート。メルマガでイベント案内やアートのコラムを発信し、対話を大切にした「オーダーメイド美術館めぐり」や「グループ鑑賞会」、「アートシェア会」などを主催している。

2026年からは、ゲスト講師を招いたオンライン講座や、親子向けの対面講座や鑑賞会も開催。アートを通じて、さまざまな考え方にふれ、異なる価値観を受け入れる体験を提供し、争いのない世界を目指して活動している。

執筆/石川えりさ

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