【第42話】私は毎日病院へ通った
保証人になった後、私は東京へ戻らなかった。
彼はまだ入院中だった。
しかも頼れる家族はいない。
私は彼のマンションの鍵を預かった。
そして病院とマンションを行き来する日々が始まった。
毎朝、病院へ向かう。
必要な物を届ける。
洗濯物を持ち帰る。
足りない物があれば買いに行く。
気がつけば、私は家族のようなことをしていた。
まだ結婚しているわけではない。
恋人とも言い切れない関係だった。
それなのに私は毎日病院へ通っていた。
後から考えると不思議なことである。
ただ、その時は目の前の彼を支えることしか考えていなかった。
幸い私は会社を経営していた。
現場は信頼できる社員たちに任せることができた。
だからこそ沖縄に滞在しながら看病することができたのである。
もし普通の会社員だったなら、同じことはできなかっただろう。
一か月近く続いた看病の日々。
彼は少しずつ元気を取り戻していった。
歩ける距離も伸びた。
表情にも明るさが戻ってきた。
その姿を見るたびに私は安心した。
そして気づかないうちに、私自身も彼の存在を特別なものとして感じ始めていた。
人は一緒に困難を乗り越えると距離が縮まる。
その言葉を私は後になって実感することになる。
あの一か月は、私たちの関係が大きく変わり始めた時間だったのである。
