見出し画像

第210話 働かないアリとキリギリス外伝 キリやんの書斎

壱号
「キリやん、来たぜ〜」
弐号
「お邪魔しまーす。今日はお客さん、いないんですか?」
キリやん
「よくきたね!今日も、もう仕事終わり?」(苦笑)
壱号
「あたぼうよ。こう暑くっちゃあな。蚊も飛んでねぇよ。人間の「不要不急の外出は控えましょう』なんて役場の放送聞こえてたぜ」
キリやん
「このクソ暑いのに働いてるのはキミたち蟻さんくらいだよね。
ボクもお客さんいないのを幸い、休んでいたのさ」
弐号
「ほら兄貴、言ったとおりでしょ。
休んでるとこ悪いし河岸をかえましょうよ」

キリやん
「大丈夫だよ。今、新作の構想を練っていたところだったんだ。
よかったら聞いてくれる?」

壱号
「はい、喜んでー 
今度はなによ?ベルサイユの蒲公英の続編がいいなあ。死んだ主人公が実は死んでなかった、というの結構あるじゃね。
俺ら、こう見えてもメスだからBLとかヤオイは食いつきいいんだぜ。」
キリやん
「んー そういうご都合主義はちょっとね。
やるんなら外伝にするわ。
初めてのチャレンジだけど今回は社会派ミステリね。
主人公は貧しい蟋蟀の学生。自分のことをエリートだと思っていて、何をしても許される、ほかの虫は自分に奉仕すべき存在だと思っている」

壱号
「けっ いけすかねぇ野朗だぜ」
弐号
「御意」
キリやん
「ある日遂に金貸しの老婆を襲い、頭から食って金を奪ってしまう。
こっからがメインの部分になるんだけど、殺虫課の敏腕刑事とのやり取りね。
ねちこい刑事の追及を主人公がその優秀な頭脳で如何に切り抜けていくか、が見どころになるんだ」

壱号
「うーん、そりゃあ少し無理がねぇですかい。
俺らの世界って焼肉定食だからほかの連中食っちまうなんて日常茶飯事ですからねぇ」
キリやん
「それだけじゃ潤いがないので、勿論メス虫のヒロインも登場させる。
貧しさから家族のために苦界に堕ちた年下の娼婦との交流を描くのね」
弐号
「キリやんさん、それマズイですよ。
R指定はおろか、コンプラ違反でお蔵入りになっちゃう。
昔はともかく現在はそっちの方、すげぇ厳しいですよ」
壱号
「でぇじょぷじゃないのか?なんせ、大河で吉原やる時代だからな。
わくわく」

キリやん
「ふっ 残念だけど濡れ場はないよ。
頭でっかちの学生だからね。童貞だしね。
草姑娘 (そうくぅにゃん)あ、これヒロインの名前ね。
彼女も自分の境界を恥じて、2人はプラトニックな関係で終始するんだ。
ホントは××なんだけどね」

壱号
「え〜
キリやんさあ、物は相談だけどよ、濡れ場んとこコッソリつくって俺だけに教えてちょ」
キリやん(無視)
「最後は草姑娘の徹底した自己犠牲に感化され、自己肥大した超人思想の誤りに気がついた主人公は自首する。
島流しになった主人公とともにヒロインが船に乗るところでおしまい。
エンタメとしてはちょっと重いかなぁ。」

壱号
「うーん」
弐号
「う〜ん」


*暗くて長くて小難しいことばかり書いた19世紀のロシアの小説家が同じような話を書いたらしいが、偶然の一致である。

いいなと思ったら応援しよう!