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Perfume 『Dream Fighter』――普通という理想を求めて|あのころを振り返る #18

2025年12月31日をもってPerfumeはコールドスリープに入る。
数多くの名曲があるが、その中でも特に思い入れがあるのが『Dream Fighter』だ。

2008年の秋から、2009年の春にかけて。
高校一年生の悩める少年だった僕を支えてくれた。

MDコンポの前で宇宙初オンエアを聴いたあの日から、僕の「終わりのない旅」は続いている。




飛躍の2008年と宇宙初オンエア


『Dream Fighter』は自身初の武道館公演の直後にリリースされた楽曲で、その武道館公演のアンコールで初披露された。
のっちの力強く声を張る歌い出しと”からし色”の衣装が印象的で、当時のPerfumeでは”異質”と言えるほどだった。

Perfumeにとって飛躍の一年だった2008年。
前年に『ポリリズム』でブレイクした後、アルバム『GAME』とシングル『love the world』がそれぞれオリコン1位を獲得。
Mステ初出演、初の武道館公演。年末には紅白初出場も果たした。
目まぐるしい環境の変化と、夢を叶えていく最中でリリースされたのが『Dream Fighter』である。

Perfume、ファン、リスナーに対してもストレートなメッセージソングになっており、時代を超えて愛されている。


僕はこの曲の宇宙初オンエアを例外なく『SCHOOL OF LOCK!』で聴いていた。
当時のPerfumeでは珍しいのっちの力強い歌い出しや、ストレートな歌詞に驚いたのを覚えている。

ちなみに当日の放送を残すHPによると、その日のゲストは大沢たかおだった。
「SOLに大沢たかおがゲスト!?」
とドキドキしながら当日の放送を聴いていた記憶がある。
『Dream Fighter 』の宇宙初オンエアと同じ日だったなんて。今の今まで忘れていた。

*『SCHOOL OF LOCK!』と当時の青春については以下の記事からどうぞ



普通は理想に近い


僕はずっと”普通”になりたかった。
小学生の時から権力ありげな女子を中心に「普通じゃない」「変わっている」と言われてきたからだ。時に強く、責められるように。
子供ならではの素直さであり、女子同士で言えないことを僕にぶつけていたのだろうと今なら思う。

とはいえ、僕も子供だったので、刷り込まれるように「自分は変わっている」と思っていた。
そして”普通”になることを渇望するようになった。

「小学生は足が速いとモテる」
なんて言ったりもするが、僕は運動神経も悪ければ、顔も良くない。特別な特技も長所もない。
いつしか「普通でない=人より劣っている」と思うようになっていた。我ながら拗らせの才能に秀でている。

成長するにつれて、少しずつその考えもなくなったが「自分が普通ではなく足を引っ張る存在」という意識は高校生になっても拭えなかった。

ねぇ みんなが  言う「普通」ってさ
なん だかんだっで 実際はたぶん
真ん中じゃなく 理想にちかい
だけど 普通じゃ まだもの足りないの

Perfume『Dream Fighter』より


そんな精神性の時に『Dream Fighter』に出会った。
Perfumeは「みんなが言う普通は理想に近い」「だけど普通では物足りない」と歌う。

「普通って理想なのか…?」

それは「普通じゃないから、人より劣っている」と思っていた僕には衝撃だった。
ありのままの自分も「普通になりたい」という”理想”を求める自分のことも、初めて認めてもらったような気がした。


BS2で見た武道館公演とあ~ちゃんの笑顔


当時の僕は毎日部活に忙しかった。
生徒主体で部活運営をしていくのにも憧れ、中学校からはじめた吹奏楽を続けていた。

先生の関与があまりないのを良いことに、一学年上の先輩のひとりが”王国”を築いていた。(※その先輩をAとする)
自信もなく挙動不審だった僕は完全にA先輩のおもちゃだった。
令和のコンプライアンスでは決して許されない”かわいがり”の数々。
いまだに思い出すと嫌気がさす。

最初は嫌なことには反論していたが、それはそれで先輩は喜び、「生意気」という名目で”かわいがり”はエスカレートする。
僕にとってもそれが日常に変わるので、諦めた。

小学生の時からの権力ありげな女子からの”ご意見”、中学時代の部活のトラブル等々により耐性がついていたので、少しの事ではへこたれない精神力もついてしまっていた。良いのか悪いのか。


ある日の休み時間、クラスが同じ部活の友人と”かわいがり”について笑いながら話していた。
すると隣の席の陸上部の友人が「大丈夫?」と真顔で心配してくれた。なんて優しいんだ。イケメンすぎる。
「いつもだから大丈夫!」と笑って受け流したが、気にかけてくれることが僕は嬉しかった。

同時に自分の置かれてる状況にも気づいたが、現実を直視すると辛くなるので、味方がいる事実を励みに日常へと戻った。
その時の陸上部の彼には今でも感謝している。


憧れて入った部活だが、もちろん楽しくなかった。
演奏中も顔は強張り、指揮者の先輩から「顔が怖いよ…笑って!スマイル!」と表情の指導を受けるほどだった。

ちょうどその頃、Perfumeの武道館公演がNHK BS2で放送された。
『Dream Fighter』が初披露されたこのライブをレコーダーに録画し、それを繰り返し見ていた。
*「BS2」はかつてNHKが有していた衛星放送のチャンネル。地上波よりも自由でディープな文化・教養・エンタメ系の番組が充実し、ライブの放送も多かった。地デジ化に伴い2011年に終了した。


普段はクールな表情でパフォーマンスすることが多いが、『マカロニ』の間奏で満面の笑みを浮かべる「あ~ちゃん」に射抜かれた。
初武道館の舞台に緊張しているはずなのに、その時間を楽しみ、観客と共有している。
僕もそのライブを見ながら笑顔になったし、何より嬉しかった。

「楽しくないんだから笑えないよ」と思っていた自分が恥ずかしかった。笑わないことでA先輩に反抗していた気にもなっていたのだろうか。

あ~ちゃんの笑顔を見て、自分も演奏する時には顔と演奏には出さないよう意識するようになった。
ただの高校の部員ではあるが、ステージに対する意識をPerfumeが変えてくれたのだ。



あきらめない強さ


僕が加入していた吹奏楽部は3年生になるタイミングで引退し、運営も受け継がれる。
部長・副部長・指揮者は立候補制。立候補者が定数を上回った場合は話し合いで決める。

A先輩の暴走もあり部活が楽しくなかった僕は、「少しでも部活を良くしたい」と思い立ち、運営側に立候補することを心に決めた。
女子が多い現場には男子がいた方がスムーズ進むと、短い人生なりに感じている部分もあった。

僕を支えてくれた男子の先輩(Bとする)も「男が一人はいた方が良い」と話していたので、背中を押されていた。

1年生が音楽室に集められ、現役部長だけが立ち合いの下で新部長を決める…はずだった。
音楽室に入るとなぜか後ろの席にA先輩がおり「遅い」と怒っている。
なぜAがいる…?と思いながらも、「すみません」と謝る僕。

僕が立候補を決めたのも「部長以外は立ち会わない」と聞いたのも大きかった。
A先輩がその場にいたら何を言われるか分からないもの。

いっそのこと辞めようかとも思ったが、ここで諦めたら何も変わらない。
僕自身を変える為にも、意を決しておそるおそる手を挙げた。
立候補者は僕を含め3名。話し合いの末、僕は春から副部長になることになった。

安心したのも束の間、A先輩は「この部活は終わった」という言葉を残して音楽室を後にした。
時間を置いて呼び出され「どういう気なんだ」と散々絞られた。
先輩からしたら、おもちゃがクーデターを起こしたと思ったのかもしれない。

B先輩からは「本当に副部長になるの?僕が『男子がいた方が』って言ったからじゃないよね?」と呆れたような表情で釘を刺された。味方だと思ってたのに…。

多少の非難は想定内だったが、ここまで支持されないなんて…と想像以上にくらった。自信喪失とはまさに。

もしつらいこととかが あったとしてもそれは
キミがきっと ずっと あきらめない強さを持っているから
僕らも走り続けるんだ

Perfume『Dream Fighter』より


副部長就任が決まってからの1週間は練習にも身が入らず、よく覚えていない。
ただ、亡霊のように駐輪場に向かった放課後に『Dream Fighter』を聴いていたことは覚えている。


自分には「あきらめない強さがある」そう言い聞かせながら、必死に前を向こうとしていた。

A、B両先輩の声しか聞こえず、全員が自分に反対しているように思えたが、幸いにも反対する同期はいなかった。
そんな同期と新1年生のためにも、副部長として頑張る決意を固めた。


やっぱり普通は理想だった


副部長として過ごした1年を振り返ると、まだまだ未熟だった。
それでも、運営の立場になることで、他の部員の見本になれるよう頑張ったつもりだ。
女性の多い現場で揉まれた経験も確実に僕を成長させてくれた。


あれから17年が経ち、僕は極めて普通の人生を送っていると思う。
あのころ「普通」になりたいと願っていたが、入試や就活の場面で「個性」という名の”独自性”を求められるようになることを、あの時の僕はまだ知らない。
あれだけ「変わっている」と悩んでいたのに、僕は意外と「普通」だった。

Perfumeが歌っていたように、普通は案外「理想」に近いことにも大人になって気づいた。
普通の仕事、普通の学歴、普通の生活、普通の恋愛…普通とは一体何だろうか。
僕の思い描いていた普通はどれも理想だった。
理想を追い求めることを含めても、僕は普通なのかもしれない。

あの時の僕はまだ気づいていないが、普通でいることも大変だ。


終わりのない旅は続く


この17年間、Perfumeは第一線で活躍し続けている。

当時の僕は自分が30才を過ぎた時にも、Perfumeが第一線で活躍し続けているとは思っていなかった。
そんな未来が想像もできなかったという方が近いかもしれない。

それを思うと、普通になりたかった僕が就活や入試で「普通であること」に悩む日がくるなんて。想像がつかなくて当然だ。

僕もPerfumeと共にこの17年を過ごしてきた。
共に過ごした時間があるから、コールドスリープの間も僕はPerfumeと共にある。

現実に打ちのめされ倒れそうになっても
きっと 前を見て歩くDream Fighter

Perfume『Dream Fighter』より


普通じゃないと言われたことも、先輩からのかわいがりも、副部長に立候補した時も、現実に打ちのめされそうになっていた。
それでも前を向いて歩いてきたから、今の僕がある。

僕はこれからも、Perfumeがコールドスリープから醒めるその日まで「Dream Fighter」として旅を続ける。

これから倒れそうになった時もきっと歩き出せる。
そう信じている。


*東京ドーム公演についての記事はこちらから

*以下の記事を中心にあのころの名曲と青春について振り返っていますので、そちらもどうぞ。


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