Perfume『TOKYO GIRL』――変わり続ける新宿と鳥貴族の思い出|あのころを振り返る #23
「東京」と聞いた時、どんな風景を思い浮かべるだろうか。
渋谷のスクランブル交差点、上野動物園とパンダ、お台場とレインボーブリッジの夜景――。
都庁があり、世界有数の繁華街を抱える「新宿」を思い浮かべる人も多いのではないか。
僕もその一人だ。幼少期に家族と出かけた新宿。
大人になると、ピカデリーで映画を見たり、友人と鳥貴族に集まっては何気ない話に花を咲かせた。
僕にとってこの街は、誰かと繋がり、自分を確認するための場所だった。
タラレバ娘とTOKYO GIRL
Perfumeの『TOKYO GIRL』はドラマ「東京タラレバ娘」の主題歌として2017年にリリースされた。
『FLASH』に並び、2010年代後半のPerfumeの代表曲のひとつといえるだろう。
リリースから9年の月日が流れているなんて…時の流れは恐ろしい。
タイトルは『TOKYO GIRL』だが、東京に限らないそれぞれの場所で、何かに挑戦する全ての人への応援歌だと思っている。
一方、『東京タラレバ娘』は東村アキコ原作漫画のドラマ化で、吉高由里子、榮倉奈々、大島優子の30才の親友女子三人を中心としたストーリー。
「あの時あーだっタラ」「もっとこーしてレバ」タラレバ話ばかり繰り返していたアラサー三人娘が、幸せ求めて恋に仕事に悪戦苦闘、右往左往。心に刺さる痛快ラブコメディ!
https://www.netflix.com/jp/title/81410141?s=i&trkid=283039074&vlang=ja&trg=cp
タラレバと”女子会”で理想を語りながら、現実を生きるストーリーが人気を博し、僕も楽しみに見ていた。
劇中の3人は「2020年東京オリンピックを一人で見るなんて嫌だ」と話しており、どこか現実と地続きにも感じられたのも人気の理由だろう。
当時の僕も「将来、結婚する気はあるのか」「彼女は欲しくないのか」と聞かれた時は、「東京オリンピックまでには」と半分本気、半分冗談で答えていた。
結果として東京オリンピックは1年延期されたが、2010年代に20代を過ごした僕にとって「この期間をどう生きるか?」という問いかけのようでもあった。
僕と友人と新宿
僕にとっての新宿は幼少期までさかのぼる。
父が新宿で働いていたこともあり、新宿御苑でピクニックをしたりと馴染み深い場所であった。
父の職場に遊びに行った時のこと。
道すがらのカフェに寄り、子供向けのオレンジジュースをテイクアウトした。
そのカフェが当時はまだ珍しかった「スターバックス」だと知るのはもう少し大人になってからだ。
高校生になると、初めての献血もした。
夜行バスに乗る時には新宿西口を使っていたが、いつのまにか南口に「バスタ新宿」が出来た。
サザンテラスの「紀伊国屋」には、親に連れられ子供の時から足を運んでいたが、今ではニトリになっている。
同じ高校の仲が良い友人と三人でよく集まっていたのも新宿。
僕たちは東京のはずれにある高校に通っていたが、それぞれの生活拠点からアクセスが良く、新宿に集まるのが定番になっていた。
同じ吹奏楽部で、高2の時に同じクラスになった3人。
部活に、学校行事に、一緒に乗り越えてきた。
卒業後も定期的に会える友人に出会えたことは、何にもかえがたい。

新海誠監督作品「言の葉の庭」の舞台としても有名

人が多くても敷地が広い分、余裕がある
平和で平等な鳥貴族
3人が集まるのは決まって「鳥貴族」だった。
当時はまだ280円均一だった時代。
現在は390円にまで値上げしたことを思うと、何とも時代の流れを感じる。
新宿には何店舗もある鳥貴族だが、どの店舗も混んでいる。
タイミングによっては入店までかなり待つことも多い。
それでも「トリキ」に通いまくった僕たちは空いてる店舗と時間帯を熟知していた。
仕事を終え、先に新宿に到着した人から、空いていると予測したトリキへと向かう。
テーブル着席と同時に、ビールとオレンジジュース、光の速さで提供されるキャベツ盛りとチャンジャを注文。
僕はほとんどお酒が飲めないが、そんな人間にも鳥貴族は優しい。
飲まない分、食べる量が多くなるが、平和かつ平等に割り勘が出来る。

鳥貴族は昨年で40周年を迎えた
店内に流れる有線が2000年代J-POPなのも良い。
雑踏の中で聴こえる懐かしい曲に会話を弾ませた。
I WiSHの『明日への扉』を思わず口ずさんだり、文殊の知恵で曲名を思い出したのがCHEMISTRYの『Point of No Return』だったり。
そんな懐メロをBGMに串から焼き鳥を分け、炊けるまでの時間を逆算し釜めしを注文する。
2串の焼き鳥を3人でシェアするために串から外す。
その役目は僕に任されていた。
太陽が射しこむ街で目を覚ます
情報を搔き分ける熱帯魚
平凡を許してくれない水槽で
どんな風に気持ち良く泳げたら
https://www.uta-net.com/song/223647/
それぞれが社会人になり、目の前の仕事に一生懸命だった20代前半。
環境が変わっても、学生時代と変わらずに他愛のない話で盛り上がり、笑う時間が楽しかった。
「平凡を許してくれない」街で、僕たちが「泳ぐ」ためには大切な時間だった。
タラレバ娘の放送当時、僕たちも例外なくドラマを見ていた。
タラレバに出てくる居酒屋「呑んべえ」に憧れて、トリキを抜け出し「思い出横丁」へと足を運んだこともあった。
トリキの優しいアルコールに慣れていた僕はすぐに酔っぱらってしまった記憶がある。これが新宿の洗礼か。
タラレバの3人とPerfumeに自分たちをどこか重ねていた。
性別の組み合わせは違えど、互いを尊重し、思いやる関係性は同じ。
年齢を重ねた時もそうありたいと思う、憧れの存在でもあった。
夢見るTOKYO GIRL
そんな友人の一人が東京を離れ、家族で他県に移住することになった。
昨年、秋に集まった時の突然の報告に「ええええ」と声をあげて驚いた。
トリキで飲んでいた時は、まさかそんな未来が来るなんて思ってもいなかった。
先日、お別れ会も兼ねて集まった。
新大久保で韓国料理を食べ、新宿方面に南下する。
平日の昼間だというのに若者で溢れる新大久保だが、中心エリアから少し離れると驚くほど静かだ。
そんなことを思うのも束の間、すぐに高層ビルが見えてくる。
人の流れや、ラーメン屋の多さが、ここが新宿だと教えてくれる。
「車の運転が心配」「暖房はどうなのか」「ユニクロは近くにあるのか」とタリーズコーヒーで会話に花を咲かせ、「寂しくなる」と言いつつも「遊びに行くのが楽しみ」ということに落ち着いた。
僕たちは会話の途中、口々に「人生一度きり」と話していた。
あまりにも言うものだから、その度に3人で笑っていた。
人生は一度きり。僕は移住を決断した友人家族を心から尊敬する。
帰りの電車に揺られながら、どんな30代を過ごしていきたいかと自分に問い、後悔のない選択をしていきたいと考えていた。
また新宿で逢いましょう
カメラロールをさかのぼっていると、新宿のタワーレコードで展示されていたPerfumeの衣装の写真があった。
Perfumeのドキュメンタリー映画を見たのも、できたばかりのTOHOシネマズ新宿だったことも思い出した。
『TOKYO GIRL』よりも前から、新宿でPerfumeと出会っていたことが分かり、何だか嬉しい。


今月、改修工事を挟んでリニューアルオープン予定
小田急百貨店が解体され、トリキに通っていたあの頃の新宿駅の風景とは変わってしまった。
南口のサザンタワー、東口のルミネエストが見通せるが不思議だ。
遠くが見渡せる新鮮さに密かに胸を弾ませつつも、かつての風景が変わったことへの寂しさも否めない。
とはいえ、振り返ってみると記憶の奥底にある新宿は今のとは違った風景だった。
昔ながらの映画館があったり、移動が不便だったり。
近年では、東西連絡通路が出来たのも画期的だった。

今は更に工事が進み違った風景になっている
僕たちもそれぞれが変わった。
僕以外の二人は結婚し、子供も生まれ、家族の形も新しくなった。
近況報告に花を咲かせるのも、夜のトリキから昼のタリーズが定番になりつつある。
それでも「高校時代からの仲良しグループ」として、家族ぐるみで変わらず仲良くしてもらっている。
彩りのサラウンド 奏でるわ
ここにいるあなたへ
https://www.uta-net.com/song/223647/
それぞれの生活する場所が違っても、Perfumeが人差し指で頭を指す振付で「ここにいるあなたへ」と踊るように、僕たちの関係は変わらないはずだ。
次に集まる時、新しいビルは完成しているだろうか。
完成するのは2030年らしい。
「2020年までに~」と話していたタラレバが懐かしい。
それまでには、また集まりたい。
そして、建設途中の新たなビルを見ようじゃないか。
その時まで、元気で。またいつか。

写真は2015年頃のもの
