見出し画像

連載#06│ガサと逮捕と”狂”依存と空虚

一人になるとしても、生むことを
決心した次男が無事に生まれてくれて

生後2ヶ月を過ぎる頃から、時折ケラケラと
声を出しては満面の笑み。

長男は哺乳瓶を持ってくれたりして
お兄ちゃんぶりを発揮しながら、わたしの
傍らで次男をあやしては可愛がってくれました。


生後57日目から長男と共に保育園に預け
わたしは仕事に出始めました。

その頃には、既に司は無収入で
借入が膨らんだ借金返済に、わたしは
血眼になっていた。


なぜなら、膨れ上がっているその借金は
全てわたしの名義だったからです。


仕事が遅くなる日は、子ども達の迎えを
司に頼み、現実逃避のように仕事に集中する
ものの

子ども達の迎えさえ忘れられては、園から
度々連絡がくる始末でした。


なにもかもを一人でこなさないと
いけない疲労から、苛々がよく爆発しました。

何もしない司のせい…
全部 薬のせいだと、変わらず彼を責めては
尻ぬぐいに追われ

司の薬物使用を支え続けていた…


次男が生まれて4ヶ月目辺りからほとんど
家には帰ってこなくなり

彼を取り巻く交友関係は、その頃には薬を
使用する人ばかりになっていたよう…


ある日の真夜中、家に帰ってきた司は
「捕まるかもしれない」と言いました。


何度も聞いた台詞。
またか、としか思わないわたし。


薬が身体に入った状態が明らかな彼に、
なにをどう言ったところで伝わらないのは
百も承知しながら

薬の切れ目で今にも寝そうになるのを
無理矢理起こしては、収まりのつかない
込み上げる怒りをぶつけ

いつ帰るかもわからない、
たまにしか会えない彼を、ここで逃がす
訳にはいかないぐらいの勢いで
責め立てるだけのお決まりのパターン。


そんなわたしを見かねて、結局また
出て行った司を、その日は追いかけて
後をつけました。


初めて知る、うちから車でわずか15分ほどの
その場所。


子ども達を寝かせたまま飛び出たことが
気になって、場所だけ突き止め家に戻り
ました。


一旦家に帰って朝が来るのを待ち、子ども達を
保育園に送った足で、そのまままたそこへ行き
怒りに身体を震わせながら、インターホンを
押すと、中から出てきたのは20歳前後の女の子。

司を出してほしいと頼むと、その子は
「今 寝てる」としか言わず、呼んでくれ
ませんでした。

彼女の言葉に更に血が上り、踏み込みたくなる
衝動の中、奥から聞き慣れない男性の声。

「誰だ」と、チラッと姿を見せたその男性は
その女の子のお父さんのようで

わたしはその男性に名前を名乗り、ここに
司がいると伝えても、なぜか居ないと
言い張られた。

仕方なくその場を去り、司が出てくるのを
車の中で待ちました。


それでも、いつまで経っても
出てこなかった。


既に子ども達の迎えの時間が近づき
渋々その場を離れるしかありませんでした。


ーーーーー


いつ出てきても逃すことがないように
一日中 何も食べずに目を光らせて車で
待機したわたし。

そんな自分の馬鹿げた行動を、おかしいと
疑うことなど、これっぽちもないほど
囚われていました。


子ども達を連れて家に帰り、アパートの
2階にある我が家へと

長男の手を引き、次男を抱きかかえた
手に荷物を持ち、怒りと虚しさと共に
息を切らせながら階段を上がったあの日…


鍵を開け、部屋に入った瞬間
電話の音が鳴り響き……


受話器をとった矢先から、何かに興奮して
たたみかけるような司の声。


「ちょっと待てや!」
「離せ!」
「もう少し待ってくれ!」


司を、ほんの1時間前まで待ち伏せた場所。


わたしがそこを去るのを待ってたかのように
彼はその場で逮捕されました。


吠えるように彼は

「警察来たから… 」  
「頼むから待ってて」
「頼む…」

何度も何度も確認するように
「待ってて」と繰り返す彼。


わたしの「わかった」という返事を待って
安心したように司は電話を切りました。


とうとうそんな日がきた、という思いと
山ほど聞きたいことがあるのになにひとつ
聞けないやるせなさ…

ぶつけたい怒り…

そして、この世の終わりのように
感じる喪失と空虚。

ただ愕然として、お腹も空かず、寝れなくなり
何もする気がしなくなりました。


押しつぶされるような胸の痛み。
いてもたってもいれない全身のザワつき。


そんな時間を、これからどうやり過ごせば
いいのか、全てを失ってしまったかのように
その日から時間の感覚が止まりました。


明け方、少しウトウトしていると
玄関のチャイムで飛び起きたわたし。

司が帰ってきたんだと思い、足早に
玄関を開けると、辺りはようやく白みがかる
ほどの、夜も明けきらない時間で、そこに
立っていたのは、刑事と捜索員5人でした。


司が逮捕されたことで家宅捜索だと
玄関先で礼状を読み上げられ

ゴミの中や鍋の中まで捜索されるその様を
呆然と眺めながら
「警察よりよほどわたしのガサの方が
うまいわ」と、変な優越感に似たものを
感じていました。


そして 「腕見せて」と言われ、はじめて
そこで、わたしも疑われる、という現実に
一瞬驚いたのでした。


警察の人達が言う "普通" は、夫婦共に
やってる人がほとんどらしく

そんな "普通" と 一緒にしないでほしいと
両腕をまくりながら

疑われたことに呆れかえって気分が悪かった。


それでも相手が誰であれ、司のことについて
話せてるときだけが心が落ち着くほど、酷い
囚われようでした。


長い間それほどに囚われていた対象を
失ったことで、なにをしていいのかさえ
わからないでいたわたしは

彼の話ができることで彼を近くに感じ
その感覚を安心に錯覚するほどでした。

それほどまでに、司の行動や言動に
翻弄され、同化していた。


ーーーーー


司が逮捕されて、1週間ほど経った頃から
厳しくなり始めた寒さ。

2歳半の長男と、生後6ヶ月の次男に風邪を
引かさないようにと、素っ裸のまま部屋中を
行ったりきたりしながらお風呂に入れる自分に

幾度となく込み上げる惨めさと、情けなさと、
やるせなさに、溢れそうになる涙を堪える
ことが精一杯な毎日になっていきました。

働く気力が失せ、子ども達を保育園に預けてる
時間だけ、司への執着心のままに居れることが
唯一の慰めの手段となり

毎日警察署の前を車で行ったり来たりしながら
会えなくても、近くに居る安心を感じることが
日課になり

彼が逮捕された日から止まったままの
時間を、ただただ生き長らえるだけの
空虚な毎日でした。


この年はよく雪が散らつきました。

日毎に寒さが増し、冷たい北風が
空っぽになった心を吹き抜けるだけの
そんな自分に

尚、酔いしれているほどの、まさに
重症な”狂”依存状態でした。


わたしの共依存が、どれほど重症
だったのかがおわかりだと思います。

自分が全く見えてなく、司に自分の力を
預けてしまい、、コントロールを失って
しまっていました。

薬物に溺れている彼に怒りを感じながらも
彼を手放すことを怖れ、逮捕されたことで
すべてを消耗し尽くしたように感じ

飢えるが如く
「この人がいないとやっていけない」とさえ
信じて疑わないほど、強烈な依存の構成要素を
持ち合わせていたわたしでした。


共依存は、こういった自分の”状態”にまず
”気づく”ということが最重要。

そして、認めることからが
回復のスタートとなるのです。

=====

次は

『微かな変化と葛藤、迷いの結末』について書いていきます。


※本記事は、許可なく複製・複写・転載・流用することを固く禁じます。






いいなと思ったら応援しよう!

おさゆ【ピアサポーター】 よろしければ応援いただけるととても嬉しいです!いただいたチップは、クリエイターとしての学びに使わせてせていただきます。