連載#04│薬物依存という病が持つ武器
司も然ることながら、
日増しに狂気じみていったわたし。
そして、繰り返すパワーゲーム。
司が家に戻れば、心の中は安堵の反面、
彼の行動への囚われで埋め尽くされ、
寝静まると、
なにかに取り憑かれているかのように、
わたしは目をギラギラさせながら、
彼の持ち物や家中を捜索しました。
もし子どもの口にでも入ったら、という
恐れと、言葉では言い表せないほどの
怒りに既に狂っていた。
家の中で繰り返される不法行為。
これ以上なにがなんでも絶対に許さない
といった思いが、逆に彼の行動に尚一層
囚われていきました。
彼の着ていたものの袖口。
ズボンの裏地や裾。
カーテンの裾にタオルかけのパイプ。
車のドアの内張りと、
その頃の薬を隠す周到ぶりは見事だった。
それに合わせ、わたしが一晩中 寝ずに
探す様は、司以上に狂っていったのでした。
見つけたときには凄まじい剣幕で
怒りをぶつけ、
勝手に捨てると、
今度は彼の方が異常な剣幕で怒りを
露わにし、
わたしは殴られ蹴られ、互いの狂気じみた
駆け引きが度々繰り返される日々。
家の外には隠しカメラが仕掛けられ、
いつも見張られているからと、日中も
カーテンを締め切り、
出かけると外から電話をしてきては、
「何台もの警察車両に追われている」
「刑事につきまとわれている」
司の口から出る言葉が異常さを
見せ始めた頃には、
寝てる時すら意識がないまま、
虫が体中を這ってるかのような醜態で、
一晩中暴れる始末。
その響く音を静めるために
司を取り押さえ、
汗だくで、朝まで寝ないで
過ごすことが多くなったわたしの異常さが
エスカレートし、
彼の服を鞄に詰め込んでは外へ
放り投げたり、
財布の中になぜあるのか解らない
お札の束を外に撒き散らしたり。
完全に自分を見失っていました。
その頃には、
彼に「出て行け」とわたしが
追い出しては、結局何時間も
捜しまわるといった、
どちらが当事者なのか分からないほど、
おかしくなっていた。
「もう耐えられない」と心は叫ぶのに、
それでも「耐えなければ」と思うこと
しかできず、
その状況が、どれだけ異常かなど、
全く見えていませんでした。
何かを冷静に考えることなどできず、
いつもあるたったひとつのことは、
どうやって彼に覚醒剤を止めさせるかだけ。
司をコントロールすることにのみ、
わたし自身が支配されていた。
今 想うと、
躍起になってそれを見つけることで、
幼少期から、
深層へと追いやっていた怒りを
露わにできる機会を、
わたしはずっと待っていたことが
わかります。
父親から受けた、支配やコントロール。
そして、罰。
それに対して、長い間抑圧してきた
自分の中の怒り。
その怒りを解放する矛先として、
薬物の問題を抱えた司は、格好の餌食だった。
なにをどうして良いのかなんて、
既に考えることすらできないほどに
疲弊していくだけでした。
明日が来るのかさえも、
そんな感覚すらも、
なくなるほどに、
心身が狂気に蝕まれていたわたしでした。
当時はこういった流れ事態が、
薬物依存症という病が持つ”武器”だとは
知りもしませんでした。
まるで、全能な神のように、
・相手を怒らせたり、冷静さを失わせる
・家族に不安を引き起こす
こういった振舞いは、
なにか問題が引き起こされ、
それによって家族が振り回されると、
本人の病気は更に進行するといった
悪循環に陥るばかりになる。
まさに、
いつも怒り、冷静さなんて
全く失っていき、
怒ったり敵意で応じると、
本人は薬物を使ったことを当然だと
思うようになる。
これからも、
「だから使う」という言い訳が、
成立してしまうのです。
わたしは、
何年も間違った対応を繰り返し、
その間違いを、わたし自身もまた、
正当化していました。
本人が自分で起こした問題を、
わたしは不安から、幾度となく
本人に代わって後始末をしてきました。
こうした間違ったやり方で、
いつもかばい、彼の薬物使用を
助長してきたのです。
そして、
いつしかこういったやりとりに
パターンが出来上がってしまい、
本人は、
薬物依存で起こる問題を自分で
引き受けなくてもいいように、
わたしがしてくれることを当てに
するようになっていました。
わたしもまた、
いつの間にかそうなってしまっていた
ことに気づいたのは、
自分の共依存が重症化して、
どうにもこうにもならなくなってからの
ことだったのです。
こうなると、
本人も、
感情的に巻き込まれているわたしも、
全く現実を直視することが
できていません。
そして、
わたしがすることと言えば、
どんどん敵意を募らせ、非難や説教ばかり。
それでも本人に代わって
後始末をし続けることは、
口では非難しながら、結局は本人の行為を
容認していただけでした。
次は
『わたしの中のサド(加虐性)とマゾ(被虐性)』
について書いていきます。
※本記事は、許可なく複製・複写・転載・流用することを固く禁じます。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援いただけるととても嬉しいです!いただいたチップは、クリエイターとしての学びに使わせてせていただきます。