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2nd アルバム 『Thus Have I Heard』 〜 ②ジャケットデザインについて


はじめに

去る2025年10月8日、私(布施音人)のピアノトリオの2ndアルバム『Thus Have I Heard』を自主レーベルOFMよりリリースしました。
日ごろ最も多く共演している、高橋陸(ベース)、中村海斗(ドラムス)とのトリオで5月にレコーディングしたもので、曲は全曲オリジナルです。

このアルバムに関して、アルバムのタイトルやジャケットデザイン、各曲の作曲過程など、いくつかの記事に分けて書いていこうと思います。
この記事(二回目)はジャケットをデザインした過程についてです。

アルバムタイトルについて書いた一回目の記事は↓

なお、アルバムの詳細情報や各種リンクは記事末尾に記載しておきます。
また、2025/11/25(火)に渋谷 JZ Brat にてリリースライブがありますのでそちらもよろしくお願いいたします。

ジャケットデザインについて

デザインを自分でやる理由

昨年の3月にリリースしたトリオの 1st アルバム 『Isolated』のときも、デザインは自分でやりました。

1st アルバム『Isolated』のジャケット

昔からPCで図形や文字を配置して画像を作るのが好きで、高校生の頃は文化祭の出し物のポスターを作ったりもしていました。その関係で、Adobe Illustrator の操作は少しは分かりましたし、Adobe に毎月高額のサブスクリプション料金を払っているので何かに活用したい気持ちもありました。

また、写真を撮ることも好きで、CDのジャケットに自分の写真を使いたいと前から思っていました。
元々は中高生の頃に鉄道写真を撮っていたのですが、列車を待っている間に撮る風景写真の方が楽しくなってしまって、最近は SIGMA の dp3 Quattro という少し癖のあるカメラで専ら風景を撮っています。

他にも、配色について興味があり色彩検定を受験したり、欧文フォントについての本を読みフォントごとの特徴や奥深さに興味を持ったりと、いろいろなことがあり、これらの経緯からCDを作るにあたってはデザインは自分でやりたいと考えていました。

ちなみに、一作目のジャケットの写真は、群馬県の最奥地、万座温泉の近くの国道292号線で撮った写真です。

Isolated のジャケットの元写真

↑このへん

また、フォントは P22 UndergroundNeue Kabel で組みました。
前者は Edward Johnston によってロンドン地下鉄の表示のために作られた有名なフォントです。今回は後世に作られた軽いウェイト(線が細い)のものを使いました。
後者はドイツの Rudolf Koch によって作られた Kabel というフォントの neue (新しい)版で、横線が斜めになった e や、輪っかを2つつなげたような形の g などがとても特徴的でかわいいです。

ジャケット裏面で P22 Underground を使用した部分
ジャケット裏面で Neue Kabel を使用した部分

写真の選定

今作も自分で撮った風景写真をメインにしたかったので、まずは写真の選定をしました。
今までに撮った膨大な写真を見返しながら、収録曲や仏教的なテーマと親和性のあるものは何かと考えたところ、彼岸花、それもM3「White Lycoris」の意味でもある白い彼岸花の写真がよいという結論になり、2024年秋に埼玉県日高市の巾着田で撮った彼岸花の写真からよさそうなものを選ぶことにしました。

巾着田で撮った彼岸花の写真のうちの一つ

上の写真を始めは選んでいたのですが、少しごちゃごちゃしていて白い彼岸花があまり主役に見えなかったので、次の写真にしました。

採用した写真

写真のトリミング・色調補正

写真を選んだあとも、切り抜きの仕方や色の補正を決定するのにだいぶ時間を要しました。なお、写真の縦横比は文字の配置など他の要素とも関係しますが、詳細は割愛します。

撮影日は雨上がりの曇りの日で、花糸についた水滴が大変綺麗に写っています。そのため、最初は水滴を強調しようと、以下のような範囲を切り抜いていました。

水滴を強調した切り抜き

これも綺麗なので大変迷いましたが、やはり何の花かがわかりにくいですし、引き延ばし過ぎているために印刷したときの解像度の面でも少し不安があったので、これは不採用としました。

また、色の面では、背景に茎の緑と花の赤が混在しており、少しごちゃごちゃした印象を受けます。白い彼岸花もよく見ると少し黄色く、そこももっと分かりやすく白にしたいという思いもありました。
かといって、モノクロにしてしまうとそれはそれで彼岸花であることがわかりにくくなってしまいます。

モノクロにした場合

結局、色相のうち赤い部分以外の彩度をほぼ0にし、赤い部分だけは鮮やかさが少し残るようにしました。
結果、心の中で色彩を補完しながらモノクロ写真を見ているような不思議な画像になったと思っています。

赤以外の彩度をほぼ0にしたもの

色の補正を決定したあともトリミングを悩んでいました。
よく見ると中心に水滴が来ているようなデザインも検討しましたが、最終的には花を中心に持ってくる現在のデザインに落ち着きました。

途中まで採用していた、実は水滴が中心にあるデザイン

フォントの選定

欧文フォントは大きくセリフ体サンセリフ体に分かれます。日本語でいう明朝体とゴシック体におおよそ対応すると思ってよいです。

一作目は幾何学的なサンセリフ体である P22 Underground や Neue Kabel を採用しましたが、今回の彼岸花の写真との組み合わせでは、これらのフォントや、Futura や Avant Garde Gothic などの同系のサンセリフ体はあまりしっくりきませんでした。

『Isolated』と同じ P22 Underground と Neue Kabel で組んでみた例

サンセリフ体はセリフ体よりも歴史が浅いこともあり、その親しみやすさや読みやすさが、逆に彼岸花の写真の深刻な印象との間にギャップを感じさせるのではないかと思います。

そこで、今回はセリフ体、それも伝統や格式を感じさせるようなセリフ体を選ぶことにしました。候補は Caslon や Bodoni、Garamond、Baskerville あたりでしたが、色々試した結果、Garamond に統一することにしました。
ジャケットの表面も裏面も、全て Garamond で組んでいます。

ジャケット裏面の Garamond Premier Pro Medium の部分

また、欧文の習慣で本の題名をイタリック体(斜体)にするのになぞらえて、アルバムのタイトルはイタリック体にしました。

タイトルはイタリック体

Garamond のイタリック、美しいですね。よく見ると「Th」は合字になっています。

レタースペーシング(カーニング)

今回ジャケットの中で文字を組むにあたって、何か新たな知識を入れたいと思い、以下の本でレタースペーシングについて少し勉強しました。

本当は、デザイナーの師匠をもち、ダメ出しを食らいながら大量のレタースペーシングをこなさないと身につかないのだと思いますが、それでもこの本のおかげでだいぶ納得のいく文字間調整ができるようになりました。
(街中の広告で文字間が変だと落ち着かない体になってしまいました笑)

基本的には、Illustrator の文字のカーニングで「メトリクス」を選択したうえで、連続する3文字を抜き出し、1文字目と2文字目の間、2文字目と3文字目の間が等間隔に見えるように調整していく、という作業をしました(※文字間が最も詰まっているように見える箇所から作業します)。

曲名も全て文字間調整しました

裏面の写真

裏面にも何か仏教的なテーマにふさわしい写真を入れたいと思っていたところ、妙高高原のいもり池で撮った、湖面に浮かぶ蓮が道のようになっている次の写真を見つけました。

妙高高原・いもり池で撮った写真

表面の彼岸花の写真では赤以外の彩度を0にしたので、裏面では逆に青〜紫以外の彩度を0にする補正を行い、次のようにしました。

青〜紫以外の彩度をほぼ0に補正

表面〜背〜裏面のデザイン

以上の材料をもとに色々試行錯誤して、表面〜背〜裏面のデザインは以下のようになりました。

表面〜背〜裏面のデザイン

文字のサイズ・位置は最後まで調整していました。キリがなかったです。

内側や帯のデザインについては割愛します。
ぜひ実物を買って見ていただきたいです。

さて、前作のジャケットは多くの方にご好評をいただいたのですが、いくつか改善したい点もありました。

前作の反省①内容がわからない

一貫してシンプルなデザインを目指してはいるのですが、前作は商品紹介なども一切ありませんでした。数は少ないながら、ディスクユニオン等に卸している以上、少しは内容を説明する文があった方がよいと思い、今回は帯に説明文を入れることにしました。

前作の反省②値段がわからない

前作では、価格の設定に最後まで悩んでいたこともあって、価格は表示していませんでした。その結果、値段がわからないという声を複数いただきましたし、タワレコの店頭でも特に値札など貼られずに並んでいたようです。これも今回帯に記載することにしました。

前作の反省③プラケースが割れやすい

CDのジャケットの形には、プラケース(ジュエルケース)、紙ケース、デジパックの3種類があります。このうちプラケースが最も安かったため前作はそうしたのですが、運搬中になんども割れてしまい、悲しい思いをしました。そのため、今回は奮発してデジパックにすることにしました(紙ケースもよかったのですが、棚に入れた時に厚みがある方が好みだったので今回は除外しました)。

前作の反省④レーベルのロゴがない

前作を出すにあたってレーベル名を決める必要があったのですが、悩んだ結果、Otohito Fuse Music の頭文字をとって OFM とし、以下のようなロゴも作っていました。

レーベル「OFM」のロゴ

せっかくつくったこのロゴを、前回はジャケットの表面に入れるか迷って入れなかったのですが(裏には入れた)、今回はせっかくなので表の下の方にうすく入れることにしました。

前作の反省⑤ライナーノーツがない

前作は極力英語だけで組もうとしていたこともあって、ライナーノーツを入れませんでした。ですが、結局買ってくれる方のほとんどは日本の方だし、CDの聴き方には音だけを聴くものもあればライナーノーツと一緒に楽しむものもあり、より多くの選択肢を用意するのもよいかなと考え、今作では日本語の文章が入ったブックレットを付けることにしました。
ブックレットについてはまた別の機会に記事にしたいと思います。

次回からは曲の中身について書いていこうと思います。

アルバムの詳細情報

Otohito Fuse Trio 『Thus Have I Heard』

アルバムジャケット

Track List:
1. Tsutomete
2. Northbound Journey
3. White Lycoris
4. Sado
5. B.A.S.D.
6. Nyoze
7. We Can Hardly See
8. Ascending Shadow of the Mountain

Personnel:
・布施 音人 Otohito Fuse (p)
・高橋 陸 Riku Takahashi (b)
・中村 海斗 Kaito Nakamura (d)

Recorded, Mixed, and Mastered by 吉川 昭仁 Akihito Yoshikawa
Recorded at Studio Dede
OFM-002 STEREO
Made in Japan

トレイラー:

リリースイベント:
11/25(火) at 渋谷 JZ Brat
19:30 start
予約はコチラ

11/25 リリースライブ フライヤー

購入リンク:
タワーレコード
ディスクユニオン
Bandcamp(購入でmp3ダウンロード・試聴も可能です)

ストリーミング:
Apple Music:

Spotify:


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