1からの水理学(11)噴流


1.衝突の話
質量(図1のように動く歩道の入り口でしりもちをついたひとの体重)M[kg]が、静止状態から、速度v[m/s]で動く歩道に乗り込むまで、少しの時間⊿t[s]がかかるとすれば、力F[N]と⊿tの積(力積)について次の式が成り立つそうです。
M ×(0 -v)=-F⊿t (1)
図2のように、タンク(バケツ)の側面に空いた小さい穴(オリフィス)から、速度v[m/s]で流れ出る水も、タンク内の水に引かれるようにして(タンク内の水を力F[N]で押すようにして)、水が飛び出してきます。
図2では水平に飛んでいる水が図1での動く歩道に相当します。C点にしりもちをついたおばあさんがいて台車をおしりで押し、D点につんのめったおじいさんがいて手で壁を押しています。すなわち、「しりもちの作用」で台車が動いているのです!「しりもちの作用」で飛行機は飛び、ロケットは上がり、船は進みます。
さて、Fは推力ですが、図3では黒い矢印で描かれています。
今、質量M[kg]は、⊿t秒にタンクから飛び出してくる水の質量ですので、M÷⊿t = ρ Q [kg/s] になります。ここで、ρは水の密度(1000kg/㎥)です。
すなわち、(1)式は流量Q[㎥/s]を使って(2)式のようになります。
ρ Q × v=F (2)
今、水の話ですので、質量Mよりも流量Qを用いた式がなじみますね。
もし、水流の横断面積をa[m²]と書けるなら、(2)式は
ρ a × v²=F (C点、D点) (3)
とも書けます。(1)~(3)式の話を運動量保存則と言うらしいです。
このFは図3で言えば、C点でタンク内の水を押している黒い矢印の力ですが、D点で壁を押している緑色の矢印で示されている力と同じ大きさです。これらは方向の異なる対照的な力ですが、途中にあるのは水であって固体ではないので、作用・反作用という表現は避けましょう。「D点で水が壁をけとばしているから台車が前に進むわけじゃない」ということでしょうね。

2.タンク内の話
さて、台車上のバケツについて、水面から深さH[m]の場所の圧力水頭Hp[m]は深さH[m]に等しくなります。
水圧P[Pa]=ρgH[J/㎡] (4)
ですので、穴が閉じて、A点で水の静止しているところ(深さH[m])では、全水圧P[N]=ρgH×A[N] (5)
になります。ここで、圧力 P [Pa] が面積 A [m²] に働く力を、全水圧[N]と呼びました。この全水圧は図3では青い矢印です。
A点に穴を空けた後でも、そのタンクの内側で水が静止状態に近いところでは、この全水圧は、
P[N]=ρgH×A[N] (穴のあるA点(内側)、静止に近い個所)(6内)
であって、そのすぐ外側で水が流れ出したところでは、
全水圧P[N]=0 (穴のあるA点(外側)、水の動き出した個所) (6外)
です。ここで、図3中の青い矢印の先では紙1枚を隔てて、タンクの内側と外側という違いで、水圧が(6内),(6外)式のように激変するという考えです。
なお、B点に穴はありませんので、面積Aについて、次式が成り立ちます。
全水圧P[N]=ρgH×A[N] (B点)(7)
この力は図3中の赤い矢印になります。

さて、ここからが本題です。
図3では、方向は逆ですが、青い矢印の水圧と推力Fとの大きさが等しいことが仮定されます。
ρgH×A= ρ a × v² (8)
この式の説明はけっこうやっかいです。
もし、ベルヌーイの定理を適用できるなら、
0.5ρV²×A = ρv²×a (∵V²=2gH)(9)
であって、格段に説明がめんどうな話題にぶち当たります。なぜなら、流速Vとvの違いとか、Aとaの違いを軽く見ると、(9)式で右辺は左辺の2倍に見えるからです。
そこで、平行流であるかないかの違い(Vとvの違い)や、ベナコントラクタの有無など(aがAの6,7割であること)に話が進むと思うのですが、私はなかなか単純明快なピタっとスッキリ感のある話に着地させることができません。そもそも、流れが激変するA点近くでベルヌーイの定理を適用すること自体、ひやひやものです。ですので、筆者の力至らずということで、私の話は、(9)式の手前までにさせてください。
なお、穴のあるA点(内側)にある赤い矢印((5)式)は、タンク内でA点の反対側にあるB点が受けている水圧ρgH×A(青い矢印(6内)式)に等しく、(これは意外でしたが)穴が開く前だけでなく、開いた後でもタンク内では全水圧のバランスはとれていたとの理解になりました。穴が開いたらA点での圧力はゼロになるとの考えで、推力Fの正体はB点の赤い矢印、と思っていたけど、そうではなく、C点の黒い矢印でした。
毎回のことですが、記述内容には自分なりに注意を払っていますが、マチガイがありえます。(実は考察の内容を公開後に修正しました)。さらに11章以降には、教科書的な話であっても、内容に時代の変遷がある部分を含みます。読者の皆さんの中で、何か違和感を感じる方がおられたら、ぜひ、コメントをお願いします。
