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ものづくりは事業モデルで決まる!!!【パタンナーの生存戦略】 #38

─はじめに

2025年もあと少し…
普通に生きてたら体験しないだろってことを
来年もやっていきたい!!!

そんな願望を持ちつつ翻って考えてみると、、、
パタンナーとして働いていて中々出会わないもの(読まないもの)と言えば、

四季報と有価証券報告書
ぐらいじゃないですか???(暴論)
※有価証券報告書を以下、有報と略します。
(あっ、まだブラウザバックしないで〜🥺)


今回のnote記事は、前回の記事で登場した有価証券報告書がおもろいゾ!という話です。他者の立場や価値観を自分ごととして考えることで何か気づきがあれば嬉しいと思い、前回記事を書きました。良かった読んでみてネ。
👇前回の記事はコチラから!


うーん、有価証券報告書……

「そんな眠くなりそうなもの面白いん?」
という声が聞こえてきそうだけれども、ものづくりしている人に是非読んでもらいたい!!!
読むメリットとしては、この3つ。

①業界を知れること。
②事業モデルが分かること。
③ものづくりは事業モデルから決まること。

そして、③の事業モデルからものづくりの在り方が決まるという前提を踏まえると、作り手としての方向性がなんとなく見えてきそうでは?という所まで書いていければなと思います。


正直自分は、パタンナーとして就職することしか考えてこなかった人種なので就活の時に判断する材料として四季報を読むことなんてなかったし、有報なんてものは存在すら知らなかったです笑

しかし!最近上場したアパレルブランド【HUMAN MADE】の有報を見てみたら結構面白い事が書かれていたので、今回はその有報の面白ポイントとものづくりを一緒に考えるという内容の記事になります!

分かりやすく整理して書いてみるので是非読んでもらえると嬉しいです☺️

それでは行ってみましょう🔥



─有報(ゆうほう)とは?

有価証券報告書とは、上場している会社が自社のことを客観的にまとめた書類です。投資家や社会に対して説明する為の資料として年1回発行されます。

この会社は、何をしていてどれくらい儲かっていてどんなリスクを抱えているのかを客観的に見ることが出来る有益な1次情報とも言えます!

有報の中で1番ボリュームのある経理の状況は、専門用語がいっぱいあって今回は割愛します!
でも分かると面白そうなのでインスタント教養としてとりあえずこの本を買って読むことにしました!

ネタになりそうならnote記事にします!

貸借対照表(B/S)
損益計算書(P/L)
キャッシュフロー計算書(C/F)
とか聞いたことはあるけど…って感じですね笑

なので今回は、ブランドの事業モデルやものづくり構造に注視してHUMAN MADEの有報を見ていきます。

─HUMAN MADEとは?

このブランドはアパレル業界にいる方はご存知かも知れませんが、90年代の裏原カルチャーの中心人物であったNIGO氏(長尾智明さん)がA BATHING APE®(ベイプ)から離れた後に作ったブランドです。
※正式にはブランドから離れたのは2013年で、HUMAN MADEがスタートしたのは2010年から。

「過去と未来の融合」というコンセプトを掲げて、様々なアーティストとコラボしているブランドという特徴があります。

時代を超えて受け継がれてきたモノを現代へと昇華させ、未来へとつないでいく──

“The Future Is In The Past”
『未来は過去にある』


これが、2010年のブランド設立以来、すべての根底に流れるHUMAN MADEのコンセプト。

ひとつのアイテムからカルチャーも纏うように広がる、HUMAN MADEの世界観を、東京から世界へ発信するライフスタイルブランドです。

HPから参照

そして驚いたのが下記の数字。

プロパー消化率100%
営業利益率28.2%(2025年1月期)
広告費0(メディア露出する為の広告費)

HUMAN MADEの有報より

レッドオーシャンのアパレル業界でこの意味のわからない数値はいったいなんなんでしょう?

その裏側(事業モデル)を覗いてみましょう!
今回は有報の28ページまでをピックアップしていきます。無料で読める本として有報を活用して、様々な業界を知ることはおすすめです!✨

事業の内容に入る前に、パタンナー島村がものづくりで重要だと考える概念を3つ提示して、それらの例をHUMAN MADEの中から見つけていく試みをしていきます。

《ものづくりを考える時の3つの概念》

●認識伝達モデル
→他者に何かを認識してもらう時に伝わりやすい記号(言語の発話や意味やイメージ・色彩やシルエットなども含む)に設計されているかをデザインすること。
【マルジェラの4つタグが良い例。伝わりやすさと(分からない人には分かりにくい)伝わりにくさを共存させながら、上手く価値体系を作っているのが凄いです】

●スケールモデル構築
→認識した後にどのような拡がり方を持って多くの人に伝播していくのかを考えること。

●ハイパーリアルな世界観
→哲学者のジャンボードリヤールが提唱した概念「ハイパーリアル」というのは、安直に言えば、イメージが現実を構成すること。つまり、本物らしく感じられる演出されたものを現実として消費するような世界観をつくること。
(ディズニーランドやホテルなどがよく例に上がります)


─事業の内容

まずは、沿革を見ていきます。沿革とは、移り変わりであり、何を信じたのか、その先に残ったものを沿革と表現できます。

ブランドのスタート自体は2010年秋冬からスタートしていますが、会社としてオツモ株式会社としてスタートさせたのは2016年。音楽カルチャーと強い結びつきがあり、店舗を着実に増やしながら資本の拡大をしていったことが沿革から読み取れます。今は、グローバル企業としての認知度とHUMAN MADEブランドのさらなる価値向上を目指し、2024年5月に「オツモ株式会社」から「HUMAN MADE株式会社」へ社名変更しています。

(ブランドと企業の名称を統一することで、分かりやすくなる利点がある一方で、単一セグメントでない会社が企業名をブランド名に据えるといやらしさが出そうですよね。笑)

HUMAN MADE株式会社は、人間の閃きと、人間の手が生み出すカルチャーの芽をマンガ、アニメ、ゲームに続く日本を代表するクリエイティブ産業に育てる会社という説明がされていました。MVVが12Pにあったのでかいつまんで見ていきます。

MISSION:人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。

MISSION STATEMENT:「創造」こそ、人間の根源的な価値である。私たちはそう信じている。

効率や正解を超越した先に、かつてないアイデアは潜んでいる。

閃きと人の手が生み出すクリエイションで、人類未踏の発見と体験を生み出し、新たなカルチャーが生まれる起爆剤となる。

それが、HUMAN MADE Inc.世界中のストリートに息づく感性と過去へのリスペクトを融合させながら、ココロ弾ける瞬間を、世界へ届けていく。

HUMAN MADEのMVVから

価値という言葉にこだわってものづくりをしているような気がします。そしてHUMAN MADEは、テレビ、雑誌、インターネット等の広告枠を購入して商品広告を行うような一般的な手法は採用していません、との事。つまり、広告費0という事なのですがこれは一体なんなんでしょうか?

下記のように書いてありました。

クリエイター、アーティスト、ミュージシャンや全世界に向けてグローバルに事業を展開する企業とのコラボレーション等を通じて商品情報を発信しています。

クリエイターやアーティスト等はその分野において既に固有のファンから支持を受けている著名人が多く、グローバル企業とのコラボレーションも全世界における当社ブランドの知名度向上に寄与します。

これらの著名人及び企業は、自らの価値向上にもつながるプロモーションにも積極的に取り組んでくれるほか、グローバル企業側においてもブランドの価値向上や認知度向上につながる広告宣伝として積極的に実施する傾向にあります。

「HUMAN MADE」のコアファンとなっている国内外のミュージシャンや俳優等のセレブリティは自身のSNS、InstagramやTikTok等さまざまな機会を通じて自発的な情報発信を行ってくれており、当社にとっての宣伝効果は高く「HUMAN MADE」ブランドの価値向上や認知度向上につながっています。

これらを通じて、当社としては多額のマーケティングコストをかけることなく、ブランド価値向上や顧客認知の増大につながっています。

なお、当社が使用する広告費の中身は、主にSNSで使用する動画制作費用や、ルックブックの撮影費用、プロモーションとして配布する商品原価費用等が大半を占めます。

以下は、当社のアドバイザー兼株主であるPharrell Williams氏(注)による着用及び情報発信の一例です。

有報より

ふむふむ。ブランド名の通り、人間の創造したIP(知的財産)を様々なコラボレーションによって価値を高めてカルチャーを作り出す、みたいな事業なんですね!事業モデルのイメージを見てみると、製造委託(OEM)によってものづくりがされています。企画を社内で行い、パターン設計や縫製などの生産は外注しているということになります。展開している服の種類やSKU数も比較的に少ないように思えます。お客さんとしては覚えやすいですよね。

事業モデルのイメージ図

他の企業と違うのはやはりSNS戦略でしょう!
アパレル特有の特権階級(下記の図ではオピニオンリーダーと呼称しています)なる人々と共に理想のイメージを作り上げてブランドの価値を向上させているような図式になっています。
いつの時代もファッションアイコンと言われるような人々の真似をしたくなるのが人間です。
(時代は急速に変わってるなんて言うけど、マリーアントワネットから何も変わってない)

オピニオンリーダー層→世界中の潜在的な顧客という流れは、SNSがあるからこそできるスケールモデル構築ですね!

HUMAN MADEの価値の作り方

ブランド自体もオピニオンリーダー的な在り方・イメージを創出しているからこそwin-winな関係性になりますよね。#PRのような見え透いた主従関係ではなく、リアルな関係性がより強化な高い価値・イメージを確かなものにしているのです。

そうしてリアルがイメージの余白を拡張して、現実を越え出て作られたイメージをデザインしている、というのが設計としてありそうです。

まさにこれは、ハイパーリアルな世界観が作られたブランドである証左であると言えます。商品に意味付けがされることで2次流通の価格が上がり、それがブランド価値をさらに押し上げる。残酷なまでに数字で見えてしまう現代だからこそ、多くの人が価値を信じていることが何よりも大事なのです。(裏原ブームを席巻したNIGO氏の人的資本が強すぎぃ!)

下記の図にある、クラフトマンシップに満ちた妥協のないモノ作り(例)というのはこの商品自体は、OEMなのでやろうと思えばどこのメーカーでも作ることは出来るが、商品に意味付けをさせる設計と価値の作り方(ハイパーリアルな世界観)はHUMAN MADEが得意とする所でしょう。

ハイパーリアルな世界観だからこそ
このサイクルが成立する


そうした価値の作り方を行うことで、値引きを一切しない販売が可能になっているとの事。でもそのような価値を維持するというのは、アパレル業界にいれば難しすぎるだろっ!という感想は真っ先に思い浮かびますよね。。

HUMAN MADEはどのように高い消化率を維持しているのでしょう?有報には、商品区分けを3つに分けているとありました。

①シーズン
→シーズン毎に展開されるユニークな新商品を中心としたアイテム
②定番
→指名買いの多いHUMAN MADEの代表的なアイテム
③エッセンシャル
→Tシャツやインナーなどベーシックかつ低単価なアイテム

これだけ?と思うかもしれませんが、めちゃくちゃ分かりやすい。コモディティ化された服を作り続けるブランドは、横軸で新鮮さを出しているイメージがありますが、それだと余計に分かりにくくなってしまう。つまり認識伝達モデルを作りにくい。(服自体のデザインだけではなく構造にも言える)

そして、需要を背景とした生産数量の増加によって売上を引き上げる際に品番数(商品の種類)は大幅に増加させず、 1品番あたりの数量増加を計画する、とありました。つまり、売上の増加は利益率の増加にそのまま繋がります。

当たり前の話ではありますが、品番数を増やすのは、デザインやパターンがその分増えるという事。細かく言うと、1品番を世の中に生み出すのに、サンプルのデザイン、仕様・附属決め、工賃決め、量産のグレーディング、工場でのパターンシーマ(カジュアル工場などで使われる効率よく縫製できる為のプラパーツ。各サイズ分用意する必要がある。)などなど…他にもECサイトに掲載する撮影や商品説明の手間を考えると利益率を上げることと反比例の関係になります。



品番数を増やすというのは、社内にデザイナーやパタンナーがいる会社にありがちなように思えてきます。ラブレスの5000品番の話を聞いた時は驚きました。Burberryが無くなった中で何としても従業員を守る為でもあったのかも知れません。


パタンナーではありますが、はっきり言うと品番数(商品の実体)は増やさないでハイパーリアルな世界観を作る為に、イメージの余白の精緻化とスケールモデル構築を可能にする施策を増やすことに注力した方が圧倒的に良いです。

権威の内部化と生産の外部化という流れは、アパレル業界で今後当たり前になっていくのではと考えるだけで恐ろしいですね!

品番数絞ってもそもそもの需要よりも多く作らないと安く作れないんだから、余っちゃうじゃん!というような意見が上がりそうです。

HUMAN MADEは、商品の企画・デザイン段階から素材等品質や風合い等に拘った商品を作り、お客様の満足度の高い商品を限定的に供給し、販売と同時に完売する(プレミア化)ことが基本的な流れになっているそう。

常に需要全体に対して少な目に供給を行うことで、商品価値・価格の維持、適正な在庫量、保管コストの削減につながり、財務面でも在庫回転率や売上総利益率が高い要因の一つとなっているという、お手本と言えるようなモデルになっていました。

(シュプリームおじさんの「無い、もういい?」が聞こえてきそうだ!)
☝️これは、ミーム化したらスケールモデル構築だけど、ハイパーリアルな世界観の崩壊に繋がる笑

ちなみに価格の決め方は、このように書いてありました。

プライス価格決定力は事業の収益力に与える影響が非常に大きい要素と認識しています。まず、商品価格の決定にあたっては妥協のない商品を提供したいとの考えから、かかったコストに対して必要な利益等を勘案して価格を決定する考え方を基本としています。

このような価格決定を行った場合、同じカテゴリの他社商品の市場価格との差が問題となりますが、価格差を上回る価値をお客様に提供し、お客様の信頼にこたえる方針です。

有報より

価格差を上回る価値というのは、商品の意味付けをさせてイメージが現実を構成したハイパーリアルな虚像を上手く作り上げることで可能にしています。

実際のアイテムカテゴリーと価格帯は以下のようにまとめられていました。服自体のパターンの設計は難しくなく、他のブランドでもやっているような定番的なアイテムが多い。これは、工場の方でもクオリティコントロールがしやすいメリットもあります。

値段もちょうど良いですね!この値段でHUMAN MADEの服(ブランドイメージ)を買えるなら、試してみようと思えるような絶妙なライン。
メルカリに出品しても値下がりしないのは、みんなが価値があるものであると信じてるから。
演出されたものを現実として消費するような世界観をHUMAN MADEは作っているからです。

アイテムのカテゴリーと価格帯
コラボの一例
店舗一覧

実店舗は、4タイプで分類しており、ブランド価値を毀損することのないように展開しています、とありました。

客観的な数値と言葉で定義しています

ECサイトは大手のECプラットフォームに頼ることなく(権威の内部化)自社で運用して利益率上げているとのこと。

プラットフォーマーへの出店はせず、自社ECのみを運営する方針です。グローバル展開しているSaaS型ECサービスを活用し、自社ECとして運用することで、低コストで世界の大多数の国に対して販売が可能となっています。

有報より

─パタンナーの生存戦略

HUMAN MADEというひとつのブランドに焦点を当てて考えただけなのですが、権威の内部化と生産の外部化は利益率を上げる上では切っても切り離せないことなのかなと考えてしまいます。

そうなってくると、パタンナーというギリ生産側にいる人間はちょっぴり悲しくなってくる訳なのですが、ここで別の方向性が見えてきます。

それは、生産側も権威を作れるようにする。
つまり、権威性を持った生産の内部化です。

パタンナーとしてだけではなく、作り手一般で考えた時にもう少し生産側が力(ハイパーリアルな世界観を実現する為の力)を持てば可能性が開けそうだという事。

例えば、いままで多品番を生み出す為に効率化してきた分業制を廃止する。
そもそも建築家は、デザインと設計を行うのに対してアパレルはそうじゃないですよね。(自分はこれが不思議でならなかった)多品番をこなす為の業種分けは一度見直される時がいつか来ます。

店舗立地や広告に依存せず、商品価値を顧客にダイレクトに届ける事業モデル(HUMAN MADEの基本形。SPAみたいな名前が付いたら浸透しそう。)を作ることがが起点となり、少人数で利益を上げる人事制度・チームを再構築してみる。

そうなった時にはディレクターとデザイナーとパタンナー全て出来る能力を身につければ良い。これを自分は、洋服作りからカルチャーを作る人=カルチベイター(名前ダサくてすみません)と仮で読んでいます。

そんなことを、この有報を読みながら考えてみました。他の上場しているアパレル企業の有報や知らない業界の有報を色々と読んでみます!
なんてったってタダですからね!✨


おわり。

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【MYOG進捗状況】
2025年12月⇒進捗率44%(4/10)
【note進捗状況】
2025年12月⇒進捗率38%(38/100)
これらの進捗は2027年4月までに達成する目標です🔥エイエイオー!
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ここまで読んで下さりありがとうございます。
noteの他にInstagramもやっています。こちらではアウトドアについて体系的に学ぶことができ、アウトドアの遊びがより楽しくなれるような発信をしていくので興味がある方は是非覗いてみてください😊

P.S. このnoteは基本的に自分が哲学本を読んだり、ものづくりをしていく中で面白いと思った内容を4000文字〜10000文字くらいの文章量にまとめています!
そして全て無料で公開しています!
ものづくりをしている方にとって何か学びになれば幸いです。シェアハピ!!!

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