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慢性疼痛と認知機能障害〜顎関節症患者から紐解く〜

参考文献

Ruiz-Marrara J, et al. Cognitive Domain Impairments in Chronic Painful Temporomandibular Disorders: Associations With Pain Intensity, Hypervigilance and Catastrophising: A Cross-Sectional Analysis. J Oral Rehabil. 2026;53(1):76-88. doi:10.1111/joor.70064.

慢性的痛みを伴う顎関節症における認知領域の障害:痛み強度、過覚醒、および破局的思考との関連:横断的分析


とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)

目的

慢性的痛みを伴う顎関節症(TMD)患者において、痛みの強度、過覚醒、および破局的思考が特定の認知領域(記憶、注意、実行機能など)にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的としています。

方法

18歳から55歳の成人80名(慢性的痛みを伴うTMD患者41名、対照群39名)を対象とした横断的研究です。
TMDの診断はDC/TMDに基づき行われました。
認知機能の評価にはMoCA(モントリオール認知アセスメント)を用い、痛み関連因子としてVAS(痛み強度)、PVAQ(痛み過覚醒意識質問票)、PCS(疼痛破局的思考尺度)を評価しました。

結果

TMD患者群は対照群と比較して、MoCAの合計スコアが有意に低く(TMD群25.1点 vs 対照群28.4点)、特に視空間・実行機能、注意、記憶の領域で顕著な低下が認められました。
重回帰分析の結果、強い痛み強度は視空間・実行機能の低下と関連し、破局的思考は注意力の低下と強く結びついていました。
また、過覚醒は記憶パフォーマンスと有意な負の相関を示しました。

結論

慢性的痛みを伴うTMDは、特定の認知領域(視空間・実行機能、注意、記憶)の障害と関連していることが示されました。
特に疼痛の強度と破局的思考が認知機能低下の重要な予測因子であり、これらの心理的・身体的要因が認知リソースを枯渇させている可能性が示唆されました。


ポイントと感想

認知機能低下は領域特異的に起こる

今回の結果から、慢性疼痛による認知機能の低下は、脳全体の機能不全ではなく、特定の領域に限定して起こっていることが明らかになりました。
視空間・実行機能、注意、記憶の3つの要素において有意な低下が確認されています。
これらは、背外側前頭前皮質や海馬などが司る、非常に重要な領域ですね。

痛みは強度だけでない。破局的思考が注意力を削ぎ落とす。

痛みの強さそのものが実行機能の欠陥に関連する一方で、破局的思考が注意力の低下と関連していることが示されました。
痛みを過剰にネガティブに捉える心理状態が、脳内のワーキングメモリを占領し、目の前の課題に対する注意の配分を妨げている可能性を意味しています。

また、過覚醒が記憶力の低下と関連していました。
常に痛みに過剰な注意を向けている状態には、あまりいいことがなさそうですね。
患者さんの痛みの捉え方、注意の向け方などを調整するアプローチは、介入に組み込む必要性がありそうです。

ではでは。

#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション

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