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肩甲骨安定化へ向けたプッシュアップ導入方法



臨床のリアルと迷い

プッシュアップ(腕立て伏せ)となると、どちらかというと大胸筋や上腕三頭筋に効くイメージがあります。

そんな中、私は肘の屈曲には重点を置かず、肩甲骨の安定化の運動として取り入れることが多いです。

しかし、実際どのくらい狙った筋に聞いているのかは不明です。
腕や胸のトレーニングで終わらせず、肩甲骨の安定化を確実に獲得するためには、「運動の方法」と「支持面の特性」を組み合わせて行っていく必要があります。

知見の整理と道標

今回は、肩甲骨運動障害のない健康な成人を対象に、不安定な支持面でのプッシュアップが肩甲骨周囲筋に与える影響を検証した系統的レビューおよびメタアナリシス(38件の研究、被験者826名)を紹介します。

安定した床の上で行う場合と、バランスボールやスリングなどの不安定な面で行う場合とで、各筋肉の活動量(EMG)がどう変わるかを比較しています。

結果は以下のとおりです。

  • 前鋸筋を狙うなら

    • 不安定面 × プッシュアップ・プラス(PUP)
      有意に筋活動が増加。

    • 通常のプッシュアップや、膝つき・ベンチなどの変法では不安定面による増加効果はなし。

  • 僧帽筋中部を狙うなら

    • 不安定面 × プッシュアップ・プラス(PUP)
      有意に筋活動が増加。特に対象面を両手・両足の双方で不安定にする(二重の不安定性)と効果が高い。

  • 僧帽筋上部の過剰活動を抑えるなら

    • 安定面での運動、もしくはプッシュアップ・プラス(PUP)。

    • 通常のプッシュアップやニープッシュアップを不安定面で行うと、活動が有意に高まる。

  • 僧帽筋下部(LT)を狙うなら

    • 支持面の安定・不安定による有意差はなし。肘の屈伸を伴うフルレンジのプッシュアップ全体で動員される。

単に「支持面を不安定にする」だけでは、代償的な動作が増えそうです。

臨床への落とし込みと深掘り

肩こりに効く?

僧帽筋上部の過活動は、肩こり等の問題として取り上げられます。

今回の結果では、プッシュアップを不安定面で行うと僧帽筋上部の過剰な働きが認められました。

なぜ通常のプッシュアップを不安定な面でやると僧帽筋上部が過剰に働いてしまうのか。
それは、グラグラする揺れに対して、肩をすくめることで関節を固定しようとする代償が働くからです。
際立った機能不全がなくても、肩甲骨の安定性が不足している場合は、不安定な面での運動は後回しにた方が良さそうです。

また肘を伸ばしきった位置からさらに肩甲骨を外転させる「プラス相」を加えると、僧帽筋上部の過剰活動が抑制されます。

前鋸筋へのアプローチと詳細な分析

前鋸筋のデータをみると、メタアナリシスの中で「前鋸筋の活動が増えなかった」と報告した研究は電極を第5肋骨(中部線維)に貼っており、「活動が増えた」とした研究は第7肋骨(下部線維)に貼っています。
不安定な面での押し込み動作は、前鋸筋のなかでも特に「下部線維」を選択的に刺激できるということです。

前鋸筋下部繊維として思い浮かぶのは、外腹斜筋との機能的連結です。
前鋸筋のみでなく体幹の賦活も期待できそうです。

実際のステップ

  1. 「膝プラス(Knee-Plus)」から開始
    肘の屈伸を一切行わず、四つん這いで肩甲骨の内外転(プロトラクション)だけを安定した床で行います。僧帽筋上部の代償が入らないフォームを獲得します。

  2. 安定面での「プッシュアップ・プラス(PUP)」
    フルレンジの動きを入れても、最終域で肩甲骨の上方回旋・後傾をコントロールできるかを確認します。

  3. 不安定面での「PUP + 腹部収縮」
    バランスボールなどの器具を導入ます。また、腹圧を抜かないように心がけてもらいます。
    これまでの運動方法と支持面、そしてインナーの協調を組み合わせ、前鋸筋下部と僧帽筋中部を活性化していきます。

締め

プッシュアップ系の運動は、アプローチ次第で肩甲骨の安定化運動に変化します。
運動は適切なフォームの獲得から、狙った筋を活性化できるようにしましょう。

参考文献

Arghadeh, Ramin, et al. "Electromyography of scapular stabilizers in people without scapular dyskinesis during push-ups: a systematic review and meta-analysis." Frontiers in Physiology 14 (2023): 1296279. doi: 10.3389/fphys.2023.1296279.

肩甲骨運動障害のない人におけるプッシュアップ中の肩甲骨安定筋の筋電図:系統的レビューおよびメタアナラシス

ではでは。
#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション

ご覧いただきありがとうございました。

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