ACL再建術後のノルディックハムストリングエクササイズ
参考文献
Chen, JiaWei, Tian Yu Wu, and Ying Guo. Nordic hamstring exercises in functional knee rehabilitation after anterior cruciate ligament reconstruction: a prospective, randomised, controlled study. Scientific Reports 13.1 (2023): 19039. doi: 10.1038/s41598-023-45817-6.
前十字靭帯再建術後の機能的な膝リハビリテーションにおけるノルディックハムストリングエクササイズ:前向きランダム化比較試験
とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)
目的
ACL再建術後の患者を対象に、ノルディックハムストリングエクササイズ(NHE)が筋力、膝関節の安定性、および全体的な膝機能に与える影響を明らかにすることを目的としています。
方法
自家ハムストリング腱を用いたACL再建術を受けた男性患者60名を、NHEを実施する試験群(30名)と、従来のリハビリテーションのみを行う対照群(30名)にランダムに割り当てました。
試験群は術後3週目からNHEを開始しました。
評価指標として、術前、術後12週、24週において大腿周囲径、Biodexシステムを用いた等速性筋力、およびLysholm膝スコアを測定しました。
結果
術後24週時点で、試験群のハムストリング筋力は健側の85%まで回復したのに対し、対照群は75%に留まり、試験群で有意に高い回復を示しました。
また、大腿周囲径の左右差の改善やLysholm膝スコアにおいても、試験群が対照群を上回る結果となりました。
関節の安定性テスト(Lachmanテスト等)については、両群間で有意な差は見られませんでした。
結論
ACL再建術後のリハビリにNHEを導入することは、ハムストリングスの筋力回復を効率的かつ安全に促進し、痛みの軽減や全体的な膝機能の向上に寄与します。
この遠心性トレーニングは、関節の動的安定性を高める上で極めて有効な手段であると結論付けられました。
ポイントと感想
エキセントリック収縮がもたらす筋力回復の優位性
術後24週という短期間でNHE群が健側比85%までハムストリング筋力を回復させています。
通常のリハビリ群が75%に留まったことを考えると、エキセントリック収縮を主としたNHEの負荷が、筋肥大や神経筋制御の向上に寄与したことが考えられます。
また、主動作筋であるハムストリングスだけでなく、拮抗筋である大腿四頭筋の遠心性筋力も向上していました。
これは筋肉間の同時収縮による相互作用と考えられており、膝関節全体の機能的ユニットとしての強化が期待できることを示唆しています。
膝関節の動的安定性
スポーツ復帰後の再受傷リスクを減らすには「動的安定性」が不可欠です。
NHEはハムストリングスの遠心性筋力を高めることで、脛骨の前方移動を制動する抑制機構を強化します。
さらに、エキセントリックな刺激は固有受容覚のフィードバックを強化するため、バランス能力の向上にも繋がります。
術後3週という比較的早期から段階的にNHEを導入することは、移植腱を保護しつつ、競技復帰に向けた強固な基盤を作るための重要な戦略であると感じました。
リスク管理
NHEは強度は高いエクササイズです。
導入時期や負荷量の調整が鍵となりますね。
この研究では術後3週目から開始されていますが、これはセラピストによる適切な固定と、患者の痛みや腫れの管理が前提となっています。
負荷設定の基準は翌日に軽い疲労感が残る程度です。
患者さんに指導する際にも非常に具体的で使いやすい指標ですね。
単に筋力を戻すだけでなく、大腿周囲径の改善に見られるような浮腫の軽減や血流促進効果も期待できるため、機能回復の停滞を感じている症例に対して、NHEは強力な選択肢の一つになると言えるでしょう。
ではでは。
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