運動連鎖を構築するミックスアプローチ
臨床のリアルと迷い
日々のリハビリテーションにおいて、どこかの筋力が戻ることが最終目的になることはあまりありません。
それらの機能面が戻り、最終的に全身の運動として獲得することです。
簡単にいうと、下肢の筋力を戻して歩行を獲得するような感じです。
実際に部分としての筋肉や関節の機能は良くなったのに、それが全体の動きとして統合されないこともあります。
このつながりを臨床でどう解釈していくか。
今回は運動連鎖に着目したトレーニングとその効果について調べました。
知見の整理と道標
2024年に発表された36件の研究を分析した系統的レビューは、筋力増強運動がヒトの運動連鎖に及ぼす影響を表面筋電図のデータから検証しています。
全体的な傾向
全体的な傾向としてCKC運動は、OKC運動よりも運動連鎖内のより多くの筋群を同時に活性化させることが分かりました。
しかし、単一のCKCまたはOKC運動だけで、すべての最適な運動連鎖を網羅して活性化できるわけではありません。
上肢・下肢の連鎖(Oliverらの研究)
片脚バランスを伴う「飛行機運動(Airplane)」では、骨盤帯の大腿二頭筋や中殿筋が肩甲骨周囲筋とともに中等度に活性化されました。
ランジ動作においては、肩甲骨の安定筋である僧帽筋や前鋸筋、広背筋が活性化することが確認されています。
下肢の接地から体幹、肩甲骨への連鎖が影響しています。
上肢・体幹の連鎖(Domaらの研究)
懸垂は、ラットプルダウンと比較して、上腕二頭筋や広背筋だけでなく、姿勢を安定させるための脊柱起立筋が有意に活性化しました。
支持基底面が不安定な状況ほど、コアマッスルが運動連鎖として強く動員されます。
下肢・体幹の連鎖(Kanedaらの研究)
深水ランニングでは、大殿筋や中殿筋、脊柱起立筋が高い活性化を示す一方で、長内転筋や腹直筋の活動は低く抑えられました。
水中の浮遊感と抵抗を克服するプロセスで股関節可動域が広がり、転倒リスクなく下肢と体幹の連鎖を呼び起こす手段として有効です。
体幹の運動連鎖(Stevensらの研究)
座位での軸回旋運動において、低負荷の段階で、多裂筋や外腹斜筋などの多くの筋肉が一定の活動レベルに達しました。
内腹斜筋・外腹斜筋・広背筋などが胸腰筋膜による連結から、多裂筋などがその層に対して圧を高める相互作用を持つためです。
臨床への落とし込みと深掘り
まず、単一のエクササイズだけでは、不十分です。
CKC運動とOKC運動を組み合わせた「ミックスアプローチ」が不可欠です。
完璧な運動は存在しません。
特に、今回印象的なのは、筋膜も意識した運動を行うことの重要性です。
例えば、 体幹の低負荷回旋だけで多裂筋や外腹斜筋にスイッチが入るのは、これらが胸腰筋膜を介して機能的に連結しているからとされます。
筋・筋膜性の腰痛では、この連鎖上のどこかに機能障害が生じ、全体の活性化パターンが乱れている可能性があります。
このような症例には、つながりを利用したアプローチを行う必要がありそうですね。
締め
部分から全体へ。
単関節で引き出した筋力を、ミックスアプローチで、動きに繋げていきましょう。
参考文献
Adeel, Muhammad, et al. Effects of Strengthening Exercises on Human Kinetic Chains Based on a Systematic Review. Journal of Functional Morphology and Kinesiology 9.1 (2024): 22. doi: 10.3390/jfmk9010022.
系統的レビューに基づく運動連鎖がヒトの運動キネティックチェーンに及ぼす効果
ではでは。
#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション
ご覧いただきありがとうございました。
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