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多部位の慢性疼痛が招く認知症リスク

参考文献

Zhao W, Gu Y, Xuan H, Guo X, Zhang B, He Z, Luo Q, Feng J, Cheng W. Elevated dementia risk, cognitive decline, and hippocampal atrophy in multisite chronic pain. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023;120(9):e2215192120. doi:10.1073/pnas.2215192120.

多部位の慢性疼痛における認知症リスクの上昇、認知機能の低下、および海馬萎縮


とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)

目的

多部位慢性疼痛(MCP)が、単一部位の慢性疼痛(SCP)や無痛(PF)と比較して、認知症リスク、認知機能の経時的変化、および脳構造(特に海馬)にどのような影響を及ぼすかを解明することを目的としています。

方法

UKバイオバンクのコホートデータを利用しています。
まず354,943人を対象に、共存する慢性疼痛部位の数と認知症リスクの関連をコックス比例ハザード回帰モデルで調査しました。
次に、19,116人の参加者を対象に、MCPが認知機能と脳構造の悪化を招くかどうかを一般化加法モデル等を用いて分析しました。

結果

MCPを持つ個人は、PF群およびSCP群と比較して、有意に高い認知症リスク、広範かつ急速な認知機能障害、および顕著な海馬萎縮と関連していることが示されました。
認知症リスクと海馬体積への悪影響は、痛みの部位数が増えるほど増悪しました。
5部位以上の慢性疼痛がある場合、海馬の萎縮の程度は無痛の60歳の人と比較して最大約8年分の加齢に相当することが判明しました。

結論

多部位の慢性疼痛は、海馬の萎縮と認知機能の低下を介して、認知症リスクを有意に高めることが示唆されました。
この構造的変化に対する明確なコンセンサスは得られていませんが、軸索形成に関与する遺伝的要因(DCC遺伝子)の関与も推測されています。


ポイントと感想

痛みの数と認知症リスク

この研究では、先行研究から慢性疼痛が認知症リスクと関連していることから、いくつの部位にあるかが認知症リスクにどの程度影響を与えるかを検討しています。
結果は、疼痛の部位が多いほどそのリスクを段階的に押し上げることとなりました。
単一部位の痛みでもリスクは1.15倍になりますが、5部位以上になると1.59倍まで跳ね上がります。

この1.59倍という数字は、心不全や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病などが認知症リスクに与える影響に匹敵するほどの重いリスクであるとされています。

痛みが広がっている状態は、重篤なリスクサインとして捉え直す必要がありそうです。

海馬の特異的な萎縮と脳の老化

今回判明したこととして、多部位の慢性疼痛は海馬の萎縮を加速させ、5部位以上の痛みがある場合は「約8年分」も脳が老けているという結果です。
この萎縮は脳全体で一様に起こるのではなく、海馬に特異的に現れるのが特徴です。

背景としてDCC遺伝子などの遺伝的関与や慢性的な炎症が推測されています。
多部位慢性疼痛患者さんへの早期介入は、単なる除痛以上に脳の構造を守るという重要な意義を持つと言えます。

ではでは。

#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション

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