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芸能人向けコンプラ・ハラスメント・SNS研修をやってみた件

芸能界入りする年齢も子供から大人まで幅広く、一般の方と異なる生活環境や価値観を持ち、コンプラ・SNSへの対応も一般人とは異なる部分が多い。

タレント・芸能人向けのコンプラ・ハラスメント・SNS研修が無い?

 会社に入社すると新入社員向けのコンプライアンス・ハラスメント・SNS研修があり、一般社員や管理職向けにも同様の研修や、最近は社員の精神衛生や健康に関する研修も実施されています。
 私が過去に所属していたいずれの会社も同様で、特に商品やサービス、作品、施設、イベントなどでお客様やファンの皆様と直接接する仕事をしていましたので、社員や所属俳優のコンプライアンス・ハラスメント意識を高めたり、SNSでの炎上を回避しプロモーションツールとして有効活用するための研修には注力していました。
 私自身も毎年、研修を受けておりました。
 ある時、私が研修講師として社員や所属俳優にレクチャーする事になり、他の専門家は、どのような内容をレクチャーしているのか改めてリサーチしたのですが、公に「タレント・芸能人向けのコンプラ・ハラスメント・SNS研修」を専門としている講師や研修メニュー、セミナー会社がほとんど無い(2024年時点)という事実に気づきました。「ほとんど」としたのは、もしかしたらリサーチ不足で、実際にはあるかもしれませんので。
 そこで私は、コンプライアンスやハラスメント、SNSに関する専門家の著作で得た知識と、自身が受けてきた研修の内容、そして自身の業務経験をミックスしてテキストを作成し研修を実施しました。

会社員とは異なる、芸能人ならではの注意点やケーススタディが多数ある。

芸能人のニュースで炎上するケースが頻発

 既知の通り、芸能人がらみの炎上案件が頻発しています。恋愛、不倫、飲酒、未成年者との不純異性交遊、交通事故、経歴詐称、薬物、傷害事件、不法賭博、裏社会との関係など。
 他方、犯罪ではなく、モラルや一般常識から外れたというレベルの事でさえ、まるで犯罪者かのように糾弾され好感度が失墜し、TV・映画・舞台・CM等の出演機会を失い、最悪は活動休止や引退、損害賠償問題に発展し、ご本人及び所属事務所が多大な経済的損失をまねく事例も発生しています。

なぜ芸能人の炎上案件が増えているのか?

 なぜ芸能人の炎上案件が増えているのか?以下、私の独断と偏見による主な理由です。

  1. メディアの多様化:SNSをはじめとするメディアの多様化と、個人レベルでの情報発信が容易になった為、昭和~平成初期では業界関係者の間で留まっていた芸能人のスキャンダル(事実でない事、憶測も含め)が、一般人レベルまで漏れて極めて容易に情報拡散されるメディア環境に変わった事。

  2. プロ意識の低下:動画サイトのチャンネル登録数や、SNSのフォロワー数が多い人を視聴率や収益獲得を目的にキャスティングしたり、タレントとしてスカウトするルートが出来た事で、「芸能のプロ」、または「人に夢を売るプロ」としての教育や自覚が不十分のまま、メディア露出をする芸能人が増えた事。「よい思い出が出来ました!」と、数年活動して、簡単に引退してしまう芸能人も増えた。

  3. 付き人制の衰退:オーディション系の番組やイベント、スカウト制の増加で、衰退しつある「付き人制」。師匠から厳しく、私生活から芸能人としての心構え、習慣、芸を教えられる機会が減り、プロ意識の低下につながっている。

  4. 虚像を実像と錯覚:今の大衆は一般人以上に芸能人に対して強くコンプライアンス順守を要求する社会環境になった。それは芸能人の私生活にいたるまで「愛想のよさ」を要求してくる。なぜそうなったのか?理由は、芸能活動を増やすために好感度を高めるプロモーションを続けてきた結果、多くの大衆が「夢=虚像」を「実像」と錯覚してしまい、夢で描いた芸能人のイメージが、実際と違った時の格差をより大きく感じてしまう事に直結。SNSでのネガティブな書き込みにつながっている。

  5. 企業のように一斉研修は困難:芸能人のライフスタイルは、一般的な会社員とは大きく異なる。深夜や早朝からの仕事も、徹夜も決して珍しくない。当然、土日、祝日など関係ない。また、芸能人個々のスケジュールも異なる。ゆえに一般企業のように時間を場所を定めて、社員一斉に研修する事は困難。かといって、個々に行うのでは時間と労力とお金がかかりすぎる。講師のスケジュールに、タレントのスケジュールを合わせるのもリアリティが無い。では、動画による研修はどうか?手法としてはありだが、メジャー芸能人になればなるほど、余暇時間がない。食事や睡眠時間を削ってまでどこまで動画で受講し理解してくれるのか、甚だ疑問ではある。結果、研修でのレクチャーが実行しにくい。

芸能人相手に企業研修的なスタイルは非現実的。前日や半日前単位で対応可能な講師の手配や、リモートや1回の研修単価を安くした個別のレクチャーメニューが現実的だと思われる。

一般企業と異なる研修メニュー

 一般企業で行われるコンプライアンス研修と、芸能人向けの内容ではどんな違いがあるのでしょうか?私の作成したテキストから、代表的なものをご紹介します。

  1. 専属契約、エージェント契約の確認:後のトラブルにならないように、改めてタレントと所属プロダクションが締結している契約書を確認する。スキャンダルが発生した場合の、責任の所在、損害賠償について再確認する。

  2. スキャンダルの事例紹介と質疑応答:スキャンダルの内容が、会社員とは異なる。事例をもとに炎上した原因や、どのように行動すべきだったかを検証する。

  3. コンプライアンスの再定義:単なる法令順守だけではない。芸能人は一般人以上に、モラルや道徳も注意しなければならない。不祥事を起こすと、自分に関わった人々のすべての努力、時間、お金が水の泡となる。作品、映像、番組、CMなど。当然、多くのファンの夢も壊す。自分が引退するだけでは済まない事が多い。

  4. ハラスメント:一般社会ではだれもがハラスメントと認識されているような行動・言動でも、芸能界では通常運転または業界慣習として見過ごされている事が多い。これを、撮影現場や舞台稽古風景などをケーススタディとしてシミレーションし理解を深める。特に多いと目されるのが、セクハラ、パワハラ。

  5. SNS:所属プロダクションのSNS利用ルールの復習。現場やロケ先での写真撮影、動画撮影、コメント記入の際に注意すべきことの復習。今後、デジタルネイティブが芸能人にも増える事で、不用意にSNSにアップされることが懸念される。一般社会でも勝手に他人を撮影してアップする事はNGだが、芸能界ではより強固に厳守しなければならないルールが存在する。画像の隅々まで、公開してはならない人、モノ、情景が映り込んでいないか、最新の注意が必要。

ロケはセットを組まずに実施できる点でコストダウンにもつながるが、映り込んではNGなものも多いので基本は録画・編集済みのものを放送する。今どきの撮影環境を考えると、生放送はリスクが高いと納得できる。

タレント・芸能人向けの研修をやってみた感想

 まずはとにかく、学生や一般的な会社員との立場の違いを、それこそ恐怖心を植え付けるくらいに認識させるのが最重要だと思いました。
 つぎに、芸能人のスキャンダルというのは、「自分に関わった人々の全ての努力、時間、お金が水の泡となる」事を実感させる事です。これは、プロダクションや制作スタッフだけではなく、家族やスポンサーも巻き込みます。会社員とは、影響の及ぶ範囲が大違いです。
 当然、過去にさかのぼった現在までの作品、映像、番組、舞台、商品、サービス、CMなどは全てお蔵入りになる可能性がありますし、多くのファンの夢も壊します。
 そして自分が引退するだけでは済まない事が多く、多額の損害賠償を背負う事がある事を十分に認識させる必要があります。
 強く認識させるために有効な手法は、とにかく過去事例をなるべく詳細に話す事です。特に、どんなスキャンダルで、お蔵入りになった具体的なコンテンツや、損害賠償額、その後の芸能人がどのような末路をたどったかも、具体的に伝える事でインパクトが増すのは間違いありません。
 本音の部分で「私にはコンプラ、SNSは関係ない。」「ハラスメントも、これが業界だから今まで通りで大丈夫。」という誤認識を持たれている方が、まだまだ多い印象です。

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オーバースペック コンサルティング
代表:倉林宏幸

メール:info.overspec@gmail.com




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