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たった1種類のマクラメの模様が、人生を変えることもある

 皆さまこんにちは、 owarimao です。1年以上にわたって、マクラメに凝ってます。先週はピンクのバッグを完成させて悦に入っておりました。

 さて……
 下の本は、わりと最近入手したものです。初版は昭和2年11月で、ここにあるのは第15版(昭和4年)です。

note 初登場
珍しく大阪の出版社から出ている

 タイトルからわかるとおり編物の入門書なのですが、面白いのは「附 絹糸マクラメの編方」というところです。ふつうの編物の本に、リリヤーンで作るマクラメの情報が「おまけ」みたいに追加してあるのです。

 この本が出た昭和2・3年ごろは、ちょうど日本でマクラメが一世を風靡ふうびしていました。だから多くの人が
 「いま大はやりしている『マクラメ』とかいうものも、ちょっとだけ体験してみたい」
と思ったとしても、ぜんぜん不思議じゃないわけです。
 ……やってみたい気持ちはあるけど、マクラメに特化した本をいきなり買いこむのは抵抗がある……そんな微妙なニーズに応える編集ですね。マクラメブームの裾野の広がりを感じさせます。
 そんなわけでこの本には、マクラメ作品は少ししか載っていません。でもその中に一つだけ、興味をひかれるデザインがありました。
 それは下の写真で右端に写っている、3色のリリヤーンを使った三つ編みみたいな模様です。

 なぜ興味をひかれたかというと、同じような模様を、下のような最近の本の中でも見かけたことがあったからです。

世界文化社、2018(紙の本も電子書籍も)

 著者の鎌田武志さん(1981〜)にとって、この三つ編み風の模様は、大きな意味を持つものでした。
 2005年から3年間、南米の各地を旅した鎌田さん。関心はつねに、織物や刺繍などの「ものづくり」に向いていたといいます。でもマクラメについては、名前さえ知らなかったそうです。

 ある時、ボリビアの首都ラパスで現地の女の子が「amistad=友好」の印にと、自分が着けていたミサンガをくれました。初めて手に取ったマクラメなのでじっくりと観察できました。それを見ながら他の紐で地道に結んではほどきを繰り返し、基本の結び方と構造を見つけ出すまでに約1ヶ月かかりました。(中略)ただただ1種類をつくり続け、ようやくカタチにできるようになってからは、外で見たものの構造がわかるようになっていました。本もネットもない状態で教わることもせず、ひたすら紐と向き合えたのは、マクラメがとても奥深いものだと直感的に感じていたのでしょう。

鎌田武志著『1日でつくれるマクラメアクセサリー』まえがき


 たった1種類の模様の作り方を、誰にも教わらず、1ヶ月もかけて、独力で解明する……
 
 何という粘り強さ! 何という情熱!

 私はこういう話が大好きです。わざわざお金を出して手芸の本を買う理由の一つもこれです。手仕事の原点ともいえる知的興奮を、追体験させてもらえるからなのです。
 このとき鎌田さんがプレゼントされたミサンガの現物が、下の写真で横になっているもの。輪になっているのは、それを真似て鎌田さんが自分で作られたものだそうです。

 このミサンガを応用した新しい作品も本に載っていますが、それは「起源オリヘン」と名づけられています。マクラメ作家としてのスタート地点になったデザイン、という意味ですね。
 私だったら作り方をまず過去の本の中に探そうとするでしょうが、鎌田さんはあえてそうしなかったようです。面白い模様がどうやって作られているのか「自分の力で解明したい」という気持ちが強かったのでしょう。このことも、手仕事に対する深い愛情を感じさせます。
 下の写真は、古いほうの本に載っている、作り方の図解です。

 上の図では、1色につきリリヤーンを3本ずつ、合計9本で作ることになっています。1つの模様が3目3段になります。
 鎌田さんのミサンガは4目4段。という違いはありますが、実質同じ模様です。
 およそ20年前、南米で一人の若者の人生を方向づけたマクラメは、実はすでにその80年前、日本で紹介されていました。そんなことを覚えている人は、もうほとんどいなくなっていたけれど。
 知識は、多ければ多いほど良いとも限りません。大切なものはほかにもある。そう思いませんか?

ふうん そうかね

「起源」と名づけられたミサンガの写真は、出版社から公開されているのでアマゾンで見ることができます↓


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